乳幼児揺さぶられっ子症候群について

コラム

2017.08.02

乳幼児揺さぶられっ子症候群(SBS)とは

最近,乳幼児を暴行した疑いで若いお父さんやお母さんが逮捕されるケースが相次いでいます。

そのようなケースで,最近多いのが,赤ちゃんに目立った外傷がないものの,

・硬膜下血腫

・網膜出血

・脳浮腫

という三徴候が見られたために逮捕されるケースです。

このような三徴候は,低位落下によっては生じず,暴力的な揺さぶりが原因であると考えるのが,揺さぶられっ子症候群(SBS)といわれる問題です。

お父さんやお母さんが暴力的に赤ちゃんを揺さぶったために,赤ちゃんにこのような傷害が発生したのだと,そしてそれは虐待であるという考え方です。

公刊物やネットでも「揺さぶられっ子症候群=虐待」と位置付けているものもあります。

それを公言する,お医者さんすらいます。

揺さぶられっ子症候群とみられるケースで逮捕された報道を見ると,容疑者とされたお父さんやお母さんが「そんなことしていない(=暴力的に揺さぶっていない)」と供述しているケースがよく見受けられます。

しかし,硬膜下血腫,網膜出血,脳浮腫という三徴候がある場合に,他に死亡や傷害の原因が発見できない場合には,暴力的に揺さぶられたことによって硬膜下血腫,網膜出血,脳浮腫が発生したのだという推定を働かせて,「そんなことしていない(=暴力的に揺さぶっていない)」と供述しているのに裁判で有罪になってしまうケースが存在します。

最悪の場合には,傷害致死罪で有罪となり,長期間刑務所に行かなければならないことになってしまいます。

 

本当に,そんな推定で有罪としていいのでしょうか。

いえ,諸外国では,すでに揺さぶられっ子症候群という仮説は,誤った仮説であると認識されているのです。

 

揺さぶられっ子症候群は,冤罪を生む危険性がある

アメリカの神経外科医の研究では,揺さぶりによってかかる力では乳幼児に致命傷を与えることができないのではないか,さらには揺さぶりのみでは三徴候は生じないのではないかという疑問が提起されました。揺さぶりのみではなく,頭部に対する衝撃が必要と考えられたのです。

そして,アメリカでは,揺さぶられっ子症候群という仮説に基づいて2001年以降に捜査が開始されたり起訴されたりした刑事事件のうち,213件で起訴取り下げや取り消し,無罪判決の言い渡し,有罪判決の破棄があったとされています。

イギリスでは,2005年に,三徴候しかなく,他に虐待を示す証拠がない場合には,被告人が揺さぶりで死傷結果を生じさせたことには合理的な疑いが残り,有罪判決を言い渡すことができないという判決が言い渡されています。

また,スウェーデンでも,2014年の最高裁判決で,「三徴候の存在が暴力的な揺さぶりの強い証拠となるという主張は,すでに1960年代後半に見られた。しかしそれを支える医学的根拠は脆弱であった。それにもかかわらず,この主張は一般的に受け入れられ,証拠のないまま数十年にわたって医学的な真実とされるに至った。多くの硬膜下血腫が暴力行為によるものではなく,他の機序によって生じたものであることが現在明らかにされている。暴力的な揺さぶりによって神経線維が破壊され脳が腫脹し始めることは証明されていない。暴力的な揺さぶりがあった場合に首の傷害がなぜ起こらないのかも疑問である。」として,三徴候では暴力的な揺さぶり行為を推定することはできないとしています(以上,日弁連における秋田真志弁護士の報告を参照させて頂きました)。

 

揺さぶられっ子症候群は,冤罪を生む危険性があるのです。

 

日本の現状

以上のように,諸外国では,三徴候は暴力的な揺さぶりでは発生しない,むしろ低位落下が三徴候を生じさせるものだと考えられています。

しかしながら,日本では,まだ諸外国に追い付いていないのが現状です。

揺さぶられっ子症候群によるものと思われる逮捕の報道が,後を絶ちません。

これまで述べてきたように,三徴候からは暴力的な揺さぶりを推定することはできません。

容疑者とされたお父さんやお母さんが「そんなことしていない(=暴力的に揺さぶっていない)」と供述しているケースは,それが真実であるケースが多いのではないかと思います。

当事務所では,以上に述べたような見解のもとに,揺さぶられっ子症候群という仮説のもとに冤罪で逮捕されてしまった方々を弁護いたします。

揺さぶられっ子症候群という迷信を打破するために,一緒に闘いましょう。