覚醒剤の密輸(裁判員裁判)

目次

1.はじめに
2.覚醒剤を密輸したとき、どんな罪になるのか
条文
法定刑
3.覚醒剤取締法違反事件の逮捕・勾留の状況
4.覚醒剤密輸の故意
問題の所在
故意の認定の方法―①概括的故意
故意の認定の方法―②間接証拠の積み上げ型
5.量刑の傾向
6.おわりに

 

 

はじめに

弁護士 田中 翔

いわゆる覚醒剤の「密輸事件」は、覚醒剤取締法違反事件全体に対して占める割合は比較的少ないものの、営利目的で行ったケースが9割以上(93.1%)という、大変特徴的な事件です。

 

中でも、覚醒剤の輸出入を行って利益を得る目的(「営利目的」)で覚醒剤を輸出入した場合は、営利目的を持たないで覚醒剤を輸入したとき(自己使用のためだけに覚せい剤を輸入した場合など)と比較して、刑罰がかなり重く規定されています。

また、自己使用のために覚醒剤を所持していた事件(覚醒剤の単純所持)や、友人が使用できるように覚せい剤を譲渡した事件(覚醒剤の単純譲渡)等と異なり、通常の刑事裁判ではなく裁判員裁判によって審理が行われ、判決を下されることになります。

 

ここでは、以下のように、営利目的をもって覚醒剤を密輸入した事件について、解説いたします。

〔例〕

  • 高額の報酬と引き換えに依頼を受け、二重底にしたスーツケースに覚醒剤を隠しもって日本に入国しようとしたが、入国時に税関職員に摘発された
  • 「海外から小包を郵送するので受け取り転送してほしい」という依頼を報酬につられて引き受け小包を受け取ったが、その小包の中身が覚醒剤だった

 

 

覚醒剤を密輸したとき、どんな罪になるのか

条文

覚醒剤を密輸入する行為は、覚醒剤取締法に違反しているだけではなく、関税法にも違反します。

 

〔覚醒剤取締法〕

第41条(刑罰)

第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し…た者…は、一年以上の有期懲役に処する。

第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。

第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

 

同法第41条では、第1項で覚醒剤の輸出入・製造について刑罰を定めていますが、これは営利目的がない輸出入の場合です(例:自分で利用するために海外サイトを通じて輸入したケース)。

第2項で処罰を規定しているのが営利目的の輸出入であり、本稿で解説するケースは、覚醒剤取締法第41条第2項違反ということになります。

 

そして、関税法では、第69条の11において「輸入してはならない貨物」の取扱いを規定し、第1項では「輸入してはならない貨物」を具体的に列挙しています。覚醒剤は第1項第1号の中で挙げられており、輸入を禁止されています。

さらに、同法第109条では、このような「輸入してはならない貨物」を輸入した場合の罰則を規定しています。

 

〔関税法〕

第109条

第1項 第69条の11第1項第1号から第6号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 

◇つまり、覚醒剤を密輸入した場合には…

  • 覚醒剤を営利目的で輸入したことで、覚醒剤取締法第41条第2項違反
  • 輸入禁止貨物である覚醒剤を輸入したことで、関税法第69条の11第1項1号及び第109条第1項違反

の二つの罪が成立し、これらは併合罪になります。

 

法定刑

他の覚醒剤取締法違反事件との刑の比較

覚醒剤取締法違反には様々な態様があります。

刑事事件として件数が多いのは、覚醒剤の自己使用、単純所持、営利目的所持・譲渡、密輸ですが、特に本稿で扱う密輸のケース(覚醒剤営利目的輸出入)には、厳しい処罰となっています。

 

罪名 法定刑
覚醒剤使用、覚醒剤所持、覚醒剤譲渡 10年以下の有期懲役
営利目的使用、覚醒剤営利目的所持、覚醒剤営利目的譲渡 1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金
覚醒剤製造 1年以上の有期懲役
覚醒剤営利目的製造 無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金
覚醒剤輸出入 1年以上の有期懲役
覚醒剤営利目的輸出入 無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金

 

法定刑の影響―裁判員裁判

ここで示したように、覚醒剤営利目的輸入について、覚醒剤取締法は「無期懲役若しくは三年以上の懲役」を定めています。

そして、裁判員法では、裁判員裁判になる事件を➀死刑または無期懲役にあたり得る事件➁法定合議事件(※註1)のうち故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件 と定めています。

したがって、営利目的で覚醒剤を密輸入した事件は、無期懲役が法定刑に定められているので、裁判員裁判になります(※註2)。

 

※註1:法定合議事件…裁判所法により裁判員の合議体で取り扱うと定められている事件のこと。

※註2:裁判員裁判の対象事件であっても、裁判員候補者等の生命身体財産に危害が加えられるおそれがあり、裁判員の確保が困難なときには、裁判員裁判に依らず通常の刑事裁判を行うことができます(裁判官3名による合議制)。

 

 

覚醒剤取締法違反事件の逮捕・勾留の状況

2023年検察統計年報(最新版)によると、覚醒剤取締法違反事件の逮捕・勾留の状況は、以下のとおりです。

 

逮捕の状況

検挙された件数 9458件
逮捕された件数 6637件
逮捕されていない件数 2821件
逮捕率(※1) 約70%

(※1)小数点第一位を四捨五入しています。

 

勾留の状況

逮捕された件数 6637件
検察官が勾留請求せず、釈放した件数 17件
裁判官が勾留した件数 6586件
裁判官が勾留しないで、釈放した件数 11件
その他 23件
勾留率(※2・3) 約99%

(※2)裁判官が勾留した件数/逮捕された件数

(※3)小数点第一位を四捨五入しています。

 

 

 

 

覚醒剤密輸の故意

問題の所在

覚醒剤取締法は、過失により行われた所持・使用・譲渡・製造・輸出入を処罰する規定を置いていません(未遂犯には処罰規定があります)。

したがって、故意がなく覚醒剤の密輸を行った場合には、違法性が阻却され、当該行為に犯罪は成立しないことになります。

 

そこで、密輸事件の場合、「輸入した(あるいは輸出した)物が覚醒剤だとは知らなかった」として故意がない旨の主張がされることが多いです。

 

密輸事件はたいていの場合、日本入国時に手荷物や衣服・身体に隠匿していたのを、税関で摘発されて発覚します。日本法上、覚醒剤は持込み自体が禁止されている薬物なので、当然、外部から分かりにくい場所(例:スーツケースの二重底や体内)に隠して持ち込まれるか、一見して持込に問題ない物品(例:日用品)に偽装して梱包し、持ち込まれます。そして、入国し持込んだ本人は、日本国外で依頼人から「これは覚醒剤だ」と具体的には告げられずに、「運んでほしい」という依頼を受けて持込むのです。

 

上記以外にも、「海外から貴方の自宅(日本)に小包を送るので、受け取った後指定の場所に転送してほしい」と依頼され、報酬と引き換えに承諾したが、この小包が覚醒剤だったというケースも少なくありません。こういった依頼のとき、発送した依頼主はわざわざ「覚醒剤を送付しますよ」と言うことは考えられません。

 

覚醒剤の密輸を疑われた方は、「確かに荷物持ち込んだ(or受け取った)ことは認めるが、これが覚醒剤であるとは知らなかった」と主張することが考えられます。

 

実際の裁判でも、荷物の中身が覚醒剤だとは思わなかったという主張がされることは多いです。

 

故意の認定の方法―①概括的故意

最高裁平成2年決定(最二小決平成2年2月9日判タ722号234頁:「チョコレート缶事件」)は、覚醒剤輸入罪の故意について、「覚醒剤を含む身体に有害で違法な薬物類である可能性」という概括的故意で足りる旨判示したと解されています。

 

本事件は、米国出身の被告人が台北市内のナイトクラブでドラマーをしていたところ、その常連客から「ある物」を日本に運ぶよう頼まれ、覚醒剤約3000gを成田空港から密輸し、ホテル内でその一部を所持したとして起訴されたというものです。被告人は「日本に持ち込みが禁止されている違法薬物であるとは認識していたが、これが覚醒剤であるとは知らなかった」として故意が成立しないと主張しました。

本決定は、以下の通り判示しています。

 

「原判決の認定によれば、被告人は、本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはないから、これと同旨と解される原判決の判断は、正当である。」

 

また、担当調査官の解説によれば、➀「覚醒剤かもしれないし、それ以外の違法薬物かもしれない」と被告人が考えていた場合、➁「なんとなく身体に有害な違法薬物だ(やばい薬かもしれない)」と被告人が考えていた場合、どちらであっても、未必の故意が認められるというのが、本決定の趣旨です。

つまり、覚醒剤を密輸した時、その故意については、「これは覚醒剤である」という正確な確信までは不要で、「危ないクスリかもしれない」「覚醒剤かもしれないし大麻かもしれない」というような認識でも、故意は十分に成立するのです。

この最決平成2年2月9日の「概括的故意」による枠組みは、証拠を収集し得られた間接事実から「被告人は何らかの違法薬物であると認識していた」ということが認定できる場合に用いられます。

 

故意の認定の方法―②間接証拠の積み上げ型

次に問題になるのは、「違法な物品を運搬している故意は証拠から認定できそうだとしても、『なにかヤバイ薬だ』という違法薬物の認識までは証拠から認められなかった場合」です。

この場合、前述の概括的故意によって密輸の故意を認定することは出来ません。

 

当然のことですが、被告人が「覚醒剤とは知らなかった」と述べて故意を否定した場合、検察官は覚醒剤輸入罪の故意が認められるという立証を合理的な疑いを超えて行わなければなりません。

そこで、検察官は、概括的故意によらず、故意という主観的要素を立証する必要があります。間接証拠を積み重ねることで裁判所に故意を推認させることになるのです。

そして、裁判所は、間接証拠の積み重ねと論理則・経験則から、「被告人には故意があったのだろう(若しくは故意があったとはいえない)」という推認をし、判決を下します。

 

これまでの裁判例から、「証拠の積み上げ型」による故意を推認する際の具体的な判断枠組みは、概ね以下のようなものであるとされています。

 

①海外からの不自然なスーツケース等の運搬や受け渡しの依頼

②渡航費・宿泊費などの費用負担

③多額の報酬

④薬物量・隠匿態様の巧妙さによる密輸組織関与の明白性

⇒➀~➃に対して一般常識・経験則を適用し、原則として故意を推認する

(:事実上の推定)

⑤ただし、特段の事情がある場合(上記①~④の推認を破るような事情がある場合)、故意が否定される

※①~③は間接事実

 

ここで、分かりづらいのは、「経験則」が何であるかということです。

特に代表的なものが、(a)委託の不自然さに関する経験則と(b)所持品に関する経験則です。

以下順を追ってみてみましょう。

 

◇経験則(a)―委託の不自然さに関する経験則

覚醒剤の密輸事案において、依頼された荷物をただ運搬するだけのことに対して高額の報酬が提示されていたり、見ず知らずの他人に渡航費用を負担してもらうかたちで依頼が持ち掛けられたり、単なる荷物の運搬にしては何かしら不自然な点が多く現れます。

そして、高額の報酬をかけてまで行われるような不自然な依頼ということから、一般的な人であれば「この依頼された荷物が何かしらの違法薬物かもしれない」と考えるだろうという推認が働くことになります。

前述の「チョコレート缶事件」のように、お土産の菓子を日本国内の知人に渡してほしいと依頼された際に、依頼者と被告人とは知人関係にすらなかった…という事例で考えてみましょう。

見ず知らずの他人から、しかも渡航費・日本での宿泊費等は負担しないで良いし、運搬それ自体にも高額の報酬を支払うと言われた場合には、かなり不自然な依頼だなと考えるのが普通でしょう。

しかし、これが付き合いのある友人から親族宛の荷物として依頼されたのであれば、そういったお土産の持ち帰りを承諾するのが特別おかしなこととは言えないでしょう。

運搬ではなく、「日本にある君の住所に送るから、いつものように家族あてに転送してほしい」と頼まれ特に報酬も示されなかった場合でも、依頼の不自然さの程度はそこまで高くはないと考えられます。

依頼されたことそれ自体が一概に不自然だからと故意が推認されるわけではなく、個別の事情(依頼者との関係・報酬・依頼された荷物の態様等)によって推認力は個々に異なり、そこから故意を推認できるかどうか、慎重に判断する必要があります。

 

◇経験則(b)―所持品に関する経験則

通常、私たちは所持している物や手荷物に入れている物が何であるかについて大体は把握しているものです。

そして、「ふつう、それが何であるかを全く認識していない物を所持することはない」という感覚から導かれるのが、「携帯したり荷物に入れていた品物が何であるか所持者は知っているはずだ」という、所持品に関する経験則です。

しかし、「手荷物に入れていた」「携帯していた」といった占有・携帯の事実それだけで、すぐさま覚醒剤の知情性を推認することは適切ではありません。

覚醒剤は隠匿して持ち込まれますが、占有・携帯の事実に加え、「被告人が隠匿に関与したか、そのような隠匿状況を認識していたか」と言った事情をも考慮したうえで、「隠匿し所持品として持ち込んだ」事実の推認力の強さを判断する必要があります。

 

たとえば、以下のような事例を考えてみましょう。

〔例1〕

依頼人から「このスーツケースを使って渡航してほしい」と言われ、そのスーツケースを受け取った。開いて自分の旅行用の荷物を詰めてみたところ、外からの見た目の割には中に入れられる量が少ないし、スーツケース単体で重さを量ると妙に重い。結局、スーツケースは二重底になっており、そこに覚醒剤が隠してあった。

〔例2〕

依頼人から「お土産のチョコレート缶だ」と言われ、数個受け取ってスーツケースに入れた。チョコレート缶にしてはどれもかなり重量がある。結局、チョコレート缶にはチョコレートだけではなく、底面に覚醒剤が隠し入れてあった。

故意を推認させるプラス事情としては、どちらの事例も、「依頼人から告げられた内容や外形と整合しない事情があり、それは被告人自身の五官の作用をもって感じられたはずではないか」ということです。チョコレート缶の割に重いのであれば他のものが入っているのではないかと思うはずだし、見た目の割にケースに入らないのであればケース内側の構造が妙だと思うはずだ…こういった考え方をすることができるでしょう。

一方で、マイナスの事情としては、例1の場合分かりやすいですが、「二重底のような隠匿態様は、被告人自ら工作して行った物ではなく依頼者側が用意したものにすぎない」ということです。

二重底を作ったのは被告人自身でなく、そういった隠し場所を認識できる機会もなかったのであれば、推認力は先ほどより弱まることになるでしょう。

そのスーツケースは単に用意されただけで、自分の旅行用の荷物も大した量がなかったからスーツケースの内容量が外形の割に少ないことに気が付かなかったから、構造を妙だと感じたり隠し場所を知っているはずもなかった…このような考え方もできるのです。

 

裁判員裁判を踏まえた弁護活動が必要

以上で見てきたように、密輸事件最大の論点となる「覚醒剤密輸の故意」は、個々の事例に応じ、それぞれの事実とその推認力を整理して、適切に弁護することが必要になります。

 

ここで、覚醒剤密輸事件が裁判員裁判の対象事件であることが、重要なポイントです。

通常の覚醒剤関係の事件とは異なり、国民から選ばれた裁判員が裁判所の一員となり、上記のような推認をし、判断をすることになります。

特に、間接証拠の積み上げ型の立証は、一つ一つの間接事実の推認力が及ぶ範囲・強弱をどのように考えるかという問題に直面するため、裁判員にとって理解しづらい類型です。

また、検察官は細かな事実も含め手広く立証しようとし、弁護人もこれに反論する結果、双方の主張立証が広範にわたり複雑化し、裁判員にとって事件の主要点がわかりづらくなってしまう傾向にあります。薬物事犯であり、多くが組織犯罪の一環でもあるので、裁判員にとってなじみのない犯罪類型ということになり、認定にあたって懸念が生じ得るでしょう。

そうであるとすると、弁護人は、事件に関する専門的知見をもって、事件の要点を押さえた的確かつ適切な主張立証を行うことが重要です。

検察の主張に対して、裁判員にも「その事情によって被告人に違法薬物かもしれないという認識があったとは言えないのではないか」と思わせるためには、薬物事犯への専門的理解と裁判員裁判のノウハウを活かした効果的な弁護活動が求められます。

 

また、覚醒剤の密輸事件では、逮捕直後のご本人の供述がどのようなものだったのかも重要になります。

できるだけ早く弁護人がつくことで、不利な供述が残ってしまうリスクを減らすことも重要といえます。

 

 

量刑の傾向

覚醒剤取締法違反で有罪となった場合、同法の罰則には罰金刑の規定が存在しないので、実刑判決となるか、執行猶予付き判決となるかのどちらかです。

そして、覚醒剤密輸事件の場合には、6~10年程度の懲役刑が科されることが多いとされています。実際のところ、令和2年版犯罪白書によれば、地方裁判所における科刑状況は以下のようになっています。

 

 

(『令和2年版 犯罪白書』法務省法務総合研究所より)

 

覚醒剤の輸出入であっても営利目的のない場合は8割以上が全部執行猶予となっており、しかも、実刑であるとしても1年以上3年以下の懲役(拘禁)刑となっています。

しかし、営利目的のある場合は、それとは対照的で、有罪の場合9割以上が実刑判決となっています。刑期についてみると、5年以上10年以下の懲役刑が8割方を占めているので、やはり6~10年前後の懲役刑が選択されることが多いと言えます。

 

とはいえ、覚醒剤密輸事件は他の罪名と比較して無罪となる事例が多いことも統計から分かります。

実は、第一審で裁判員裁判となった事件全体と比較すると、覚醒剤取締法違反による裁判員裁判事件(その多くが覚醒剤密輸事件であると考えられます)は、比較的高い割合で無罪判決が出されているのです。

令和5年度司法統計年報~令和元年司法統計年報を参照すると、第一審で裁判員裁判になった総人員数は、4355人です。そのうち、覚醒剤取締法違反で起訴された人員数は488人で、約11.2%です。

また、第一審で裁判員裁判になった総人員のうち無罪となった人員数は58人になり、そのうち覚醒剤取締法違反で起訴された者は17人であり、無罪総人員の29.3%を占めます。

 

 

つまり、覚醒剤取締法違反の裁判員裁判事件は、他の罪種と比較して無罪判決の割合が高くなっていると言えます。

そのうえ、他の罪種と比較して控訴率も高くなっています。

これは、前節で述べた「覚醒剤密輸の故意」が関係しています。覚醒剤密輸事件では大抵被告人が故意を否定し争うので、裁判所が故意は認められないとして無罪となるケース(※註3)も少なくなく、また、故意の認定を不服として控訴を申立てることも十分に考えられるからです。

 

※註3…覚醒剤取締法違反では無罪となりますが、関税法違反事件については有罪となる可能性があります。

 

裁判員裁判になる第一審だけではなく、控訴審についても、弊所では日々研鑽を積んでおります。

控訴や上告を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。

 

 

おわりに

覚醒剤密輸事件は、一般的に想定されるような薬物事件(覚醒剤所持や譲渡)とは少し異なり、組織犯罪の性質を有している事例です。

また、前述したように「覚醒剤密輸の故意」が一番の争点となり、裁判では、このような主観的要素を認定するために膨大な客観的な事実が間接証拠として提示されることになります。

「覚醒剤とは知らなかった」とひとくちに言っても、「これは金だと思っていた」「これは食品だと思っていた」等々、それぞれの事例によって、ご本人が認識していた事実は異なります。そして、そのようなご本人の認識が現れる証拠の一つに供述調書があります。不起訴を目指したうえで公判活動も視野に入れた適切な弁護活動を捜査段階の早いうちから行っておくことが大切です。

 

覚醒剤の営利目的輸入・輸出(密輸)事件でご家族が逮捕されてしまった、起訴されてしまった、控訴をしたいと考えておられる方は、ぜひ弊所へご相談ください。

 

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