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弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所 所長
弁護士 神林 美樹

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、都内の法律事務所・東証一部上場企業での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員部会委員等を務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決4件獲得。また、障害を有する方の弁護活動に力を入れており、日弁連責任能力PT副座長、司法精神医学会委員等を務めている。

「保釈が許可されたら、いつ釈放されますか?」というご質問をよくお受けします。そこで、以下では、保釈が許可されてから釈放されるまでの流れについて、解説します。

 

 

保釈許可決定の連絡

保釈請求をした場合、裁判所は、保釈を許す決定(保釈許可決定)、又は、保釈請求を却下する決定(保釈却下決定)のいずれかの判断をします。
その判断結果については、裁判所から保釈請求をした弁護士に対して、電話で連絡がきます。
保釈許可決定の場合、この電話の際に、裁判所に納付する「保釈保証金の金額」についても連絡があります。

 

 

保釈保証金の金額

保釈保証金は、ご本人の公判への出頭を確保するために納付が求められるものであり、事案の内容や、ご本人の資力等によって、その金額は大きく異なります。刑事訴訟法93条2項は、保釈保証金の金額について、「犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない」と定めています。比較的軽微な事案であり、ご本人やご家族が経済的に豊かではない場合であっても、通常、200万円以上(少なくとも150万円以上)と高額な金額となっています。保釈保証金が準備できない場合には、日本保釈支援協会等に立替を依頼する、保釈保証金の納付に代えて保釈保証書を提出する(刑事訴訟法93条3項)といった方法もありますが、以下では、保釈保証金を納付する場合を例に、釈放されるまでの流れを解説します。

 

 

保釈保証金の納付

保釈許可決定が出ても、それだけで、すぐに釈放されるわけではありません。
釈放されるのは、保釈保証金を納付し、検察官が釈放指揮を行った後となります。

 

裁判所からの保釈許可の電話を受けたら、弁護士は、ご家族に連絡し、保釈許可決定が出たこと、及び、保釈保証金の金額をお伝えします。そのうえで、ご家族からお預かりした保釈保証金を裁判所に納付します。

 

 

保釈保証金納付のための事前準備

保釈許可決定が出てから保釈保証金を預かり、納付しようとすると、納付までに時間がかかってしまいます。保釈保証金は高額であるので、銀行から出金したり、弁護士の預り金口座(預かったお金を管理する口座)に送金したり、弁護士がその入金を確認したりする手続には一定の時間を要するからです。そこで、あらかじめ、そのケースで想定される、おおよその金額を弁護士が預かり、保釈許可決定が出たらすぐに納付できるように準備しておくと、スムーズに納付を行うことができます。

保釈保証金の金額は、上述のように、ケースによって区々ですが、保釈請求後に行う裁判官との面接の際、裁判官が保釈を許可する方向で検討している場合には、通常、面接の席上で、保釈保証金の金額に関する提示・交渉が行われます。そこで示された金額等も参考にして、スムーズな納付を実現するための事前準備を行うことが望ましいといえます。

 

 

釈放のタイミング

保釈保証金を納付後、検察官は、ご本人のいる勾留場所(拘置所など)の担当者に対して、釈放を指揮します。この釈放指揮を受けてから、勾留場所において、釈放手続が行われます。

 

ご本人が釈放されるのは、通常、保釈保証金を納付してから1~3時間後となることが多いです。ご家族がお迎えに行かれる場合には、上記の釈放予定時間から逆算して、納付時間を調整します。たとえば、ご家族の勾留場所への到着時間が午後3時頃になる場合には、午後2時頃の納付を目指して、対応します。

 

納付が完了したら、すみやかに、ご家族にその旨ご連絡しますので、納付の1時間後くらいに到着することを目指して勾留場所に向かい、待機していただくことになります。

たとえば、勾留場所が東京拘置所の場合ですと、東京拘置所の入り口を入ったところにある、1階のロビー(ソファーのある場所)で待機していただきます。午後5時を過ぎてしまうと、ロビーから退去しなければならないため、それ以降は、東京拘置所の出入口付近で、お待ちいただくことになります。ご本人は、ご自身の手荷物(差し入れをした物を含む)をすべて持っていらっしゃいますので、荷物を運ぶことができるようにご準備いただければと思います。

 

 

検察官の不服申立て

保釈許可決定が出た場合でも、かならず、釈放されるとは限らないことに注意が必要です。
無罪を争う否認事件や、共犯者のいる事件、実刑判決の可能性が考えられる事件などでは、検察官は、証拠隠滅や逃亡のおそれがある等と主張し、保釈許可決定に対して、不服申立て(準抗告・抗告)をすることが多くあります。

 

そこで、保釈許可決定が出た場合には、弁護士は、担当検察官に対して、保釈決定に対する不服申立て(準抗告・抗告)をするか否かを確認します。

そして、検察官が不服申立て(準抗告・抗告)をした場合には、その判断を担当する裁判官と面接を行う、反論書面を提出するなど、検察官の不服申立てには理由がないことを伝えるべく、迅速に対応することが重要です。検察官による不服申立ては、通常、保釈許可決定の当日中になされ、これに対する判断は、当日の夜か、遅くとも翌日までに行われます。

 

検察官の不服申立てが棄却された場合には、ご本人は釈放されます。
(制度上、最高裁判所に対する特別抗告(刑事訴訟法433条1項)をすることができますが、検察官が保釈許可決定に対する準抗告・抗告が棄却された場合に、特別抗告をする可能性は実務上きわめて低いといえます。)

 

 

ご家族の皆さまへ

保釈を実現するためには、身元引受け、保釈保証金の準備、釈放された場合のお迎えなど、ご家族の協力が不可欠です。その過程で、わからないことや、ご不安が生じることもあると思います。わからないこと、ご不安なことがあったら、お気軽にご相談ください。当事務所では、ご本人、ご家族の皆さまのご不安に寄り添いながら、全力で弁護いたします。

 

 

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弁護士 神林 美樹