執筆者

弁護士法人ルミナス 

弁護士 佐々木 さくら が執筆しました。

目次

1.刑の一部執行猶予とは
2.刑法における刑の一部執行猶予
3.「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律」における刑の一部執行猶予
4.弁護人としてできること

 

 

刑の一部執行猶予とは

刑の一部執行猶予とは、懲役又は禁固の刑を言い渡す場合に、その刑の一部の執行を猶予することができるという刑罰の一制度です。

例えば、裁判所が、懲役2年、うち6月について2年間執行猶予という判決を言い渡し、それが確定した場合、1年6月の期間は、刑務所で服役することとなります。

残りの6月については、2年間の執行猶予期間が付されることとなります。この6月の期間については、社会内処遇であり、執行猶予が取り消されることがなければ、服役することはありません。

 

 

刑法における刑の一部執行猶予

対象者

①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者

③前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

が、対象者となります。

刑法が刑の一部執行猶予を付することを想定している対象は、実刑前科のない者、執行猶予中の者などです。

 

これらの対象者が、3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける場合に、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときに、1年以上1年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができるとされています(刑法第27条の2第1項)。

 

保護観察が付されるか

一部執行猶予の期間中に保護観察に付するかどうかは、裁判所の裁量にゆだねられています(刑法第27条の3第1項)。

 

 

「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律」における刑の一部執行猶予

対象者

薬物使用等の罪を犯した者であれば、累犯者の場合であっても対象となります。

刑執行終了後1年以内に実刑前科(刑の一部執行猶予を含む)がある場合には、全部執行猶予も、刑法上の一部執行猶予も付することができません。しかし、薬物使用等の罪を犯した者については、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律の要件を満たせば、一部執行猶予に付することが可能となります。

 

薬物使用等の罪を犯した者に一部執行猶予を付することができるのは、3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける場合で、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第一項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときです(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律第3条)。

 

保護観察が付されるか

執行猶予の期間中、保護観察に付されることとなります。(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律第4条)。

刑法第27条の2による一部執行猶予の場合とは異なり、必ず保護観察に付されることとなります。

 

 

弁護人としてできること

弁護人としては、一部執行猶予判決を獲得目標として掲げる場合、公判において、「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」、「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第一項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に該当することの主張、立証に力を入れることとなります。特に、薬物使用等の罪を犯した者について一部執行猶予の獲得を目指す場合には、保護観察になじむことも主張、立証していく必要があります。

もっとも、一部執行猶予も、一部は実刑であるため、獲得目標として一部執行猶予を掲げるべきかについては事案や依頼者の希望により、慎重に選択をしていくこととなります。

特に、全部執行猶予の獲得が法律上可能である場合には、第一には、全部執行猶予の獲得を目標とすることが望ましいと私は考えます。