執筆者

弁護士法人ルミナス法律事務所東京事務所 
弁護士 大橋 いく乃 が執筆しました。

目次

1.はじめに
2. アルコール依存・ギャンブル依存症を背景とする事件
3. 想定される弁護活動
4.最後に

 

 

はじめに

事件を起こしてしまった方の中には、何らかの精神障害を持っている方がいらっしゃいます。そしてその精神障害が、程度の差こそありますが、起こしてしまった事件に影響を与えていることはよくあることです。精神障害による影響といっても様々で、統合失調症による幻覚妄想に支配されて事件に至るようなケースや、発達障害の衝動性が相まって行動に至ってしまうようなケースもあります。仮に精神障害が原因の一端にあるのであれば、患っている同障害について、医療的な手当てや福祉的な手当てをすることで、再犯可能性を低減させ、刑事手続きにおける判断権者(公判段階では裁判官、捜査段階では検察官)にそういった状況を踏まえた判断をさせる必要があります。

 

 

アルコール依存・ギャンブル依存症を背景とする事件

今回は、アルコール依存やギャンブル依存を背景にする刑事事件について考えてみたいと思います。

飲酒すること、パチンコや競馬など公に認められたギャンブルをすることは、何ら違法ではありません。したがって、アルコール依存やギャンブル依存が直接影響して刑事事件に至ることは基本的にありません。

しかし、各依存症がきっかけとなった事件というのは存在します。

たとえば、飲酒すると衝動的に暴力的になってしまうような方が、過度な飲酒をしてはならないと分かりながら、飲むことをやめられず、暴行事件を起こしてしまうような場合。もしくは、ギャンブルがどうしてもやめられず、お金が必要となり、窃盗や詐欺に加担してしまうような場合などがそれにあたります。

これらの事件は、精神障害の直接の影響で起きた事件ではないため、単なる暴行事件、単なる窃盗・詐欺事件と扱われることが非常に多いです。しかし、ただ暴力を振るったことや、物を盗んだりお金を詐取したことを反省したりするだけでは、真の問題解決にならないかもしれません。「1度目の事件で、事件自体については深く反省をした。被害者の方にも心から謝罪をした。それにも関わらず、近い時期にまた同じような事件を起こしてしまった。」とご本人やご家族がご相談にくることはよくあります。

 

 

想定される弁護活動

基本となる弁護活動は変わりません。

被害者の方がいる犯罪であれば、謝罪と被害弁償を申し入れ、示談交渉をします。

そのうえで、なぜ行為に至ってしまったのか、同種行為を繰り返さないためには何が必要か、振り返りを行います。この振り返りの中で、仮に生活に支障があるのに飲酒がやめられないことや、ギャンブルがやめられないことがひとつの原因になっているのであれば、その点について、手当する必要が出て来ます。

 

アルコール依存症やギャンブル依存症を疑われる方に対しては、まずは医療的な支援が欠かせません。いまのご本人が治療すべき状況なのか、という点について、専門医の判断を仰ぎます。治療を要するのであれば、病状に合わせ、医師の指導に従って、回復に向けて入通院を開始します。

アルコール依存やギャンブル依存といった依存症の問題は、回復のために長い道のりが想定されます。回復し続けるために自助グループ(同じ問題をかかえる当事者の方が集まり、お互いに理解し、励まし合うグループ)への参加も推奨されています。

 

加えて、依存症の影響で、社会生活に困難を来し、それが事件の遠因になっているような場合もあります。たとえば、ギャンブル依存で金銭管理が困難となっているようなケースです。このような場合には、金銭管理等社会生活上支障が出ている部分について、ご家族による具体的な支援方法や、福祉的な支援を検討します。

 

示談交渉の結果や、このような事件に対する振り返りと再犯防止のための取り組みを、具体的に、裁判官や検察官に伝え、治療や支援継続の必要性を主張立証していくこととなります。

 

 

最後に

はじめて刑事手続きとなり、ご本人ももう十分反省した、ご家族ももうさすがに大丈夫だろうと思い、背景にある原因に気づかないままでいることで、再度類似の事件が起きてしまったというケースがあります。背景には、依存症という病気が隠れているかもしれません。1回目は罰金や執行猶予付き判決でも、重ねることで、より重い処分が科される結果となります。当事務所では、1度目の手続きから、適切な振り返りを行い、適切な支援を検討し、最良の処分を目指します。

事件の背景に、依存症の問題が隠れていそうな場合には、是非一度ご相談ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所東京事務所 弁護士 大橋いく乃