執筆者

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所 

弁護士 中原 潤一 が執筆しました。

目次

1. 接見等禁止決定とは
2. 接見等禁止決定の悲惨な現状
3. 適切な運用の方向性を示していた京都地決昭和43年6月14日
4. 残念ながら現在ではこのような運用はなされていない

 

 

接見等禁止決定とは

刑事訴訟法81条は、勾留されている被疑者被告人について、弁護人以外の者との接見を禁止することを認めています。具体的な条文は次の通りです。

 

第八十一条 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

 

この「39条1項に規定する者」というのが弁護人です。そして、弁護人以外の者との接見や書類等の授受等を禁止することを「接見等禁止決定」といいます。

 

 

接見等禁止決定の悲惨な現状

この接見等禁止決定の現状の運用は、悲惨だと言わざるを得ません。

本来、罪証隠滅行為や逃亡行為を防止するために勾留がなされます。ですので、その勾留に加えて、さらに誰とも会えなくするという措置は、そもそもその必要性に疑問があると言わざるを得ません。仮に必要性が肯定されるとしても、それはかなり極限的な場合に限られるはずです。勾留をしてもなお残る罪証隠滅や逃亡(逃亡などほとんどあり得ないはずですが)の現実的具体的可能性を検察官が明らかにして初めて、その罪証隠滅と逃亡を助長し得る人物に限って接見等禁止が肯定されるべきです。

しかし、現状の運用はそうはなっていません。検察官は、否認している被疑者にはとりあえず接見等禁止決定もするように裁判官にお願いします。そして、それを受けた裁判官は、全面的に接見等禁止を認めます。弁護人以外の者との接見を一切禁止するのです(それが家族や小学生以下の子どもであってもです)。

本来であれば、勾留したうえで罪証隠滅行為も逃亡行為も防げないというのは到底考えられませんので、検察官がその現実的具体的可能性を明らかにした人物だけに接見等禁止を認めるべきです。しかし、現在では、抽象的可能性すら認められない人物も含めて一律に接見等禁止が認められ、弁護人が逐一その解除を求めていくという運用になってしまっています。

このような運用は、本来法律が想定しているようなものなのでしょうか。

 

 

適切な運用の方向性を示していた京都地決昭和43年6月14日

我々が接見等禁止決定を争う場合によく引用する裁判例として、京都地決昭和43年6月14日があります。この決定は、以下のように判示しています。

 

おもうに、被告人が逃亡し、または罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判所(裁判官)は、被告人と弁護人(または弁護人となろうとする者)以外の者との接見を禁じ、または、これと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、もしくはこれを差し押えることができることは、刑事訴訟法第八一条に規定するところである。

そこで、果して被告人に右のような理由が認められ、接見禁止等をなすことが相当であるか否かを、一件記録に基づいて順次検討する。

(一)一件記録に照すと、現に勾留されている被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由があると認めることはできない。

(二)つぎに、本件の罪質、犯行の動機、態様、被告人その他関係人の被害者に対する脅迫的言動の内容、被告人の性格、前科等諸般の状況を総合して考察すると、被告人には罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるものと認めることができる。そして、右の罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があることは、一般に勾留の理由の一要件に数えられているのであるから、もしも同法第八一条にいわゆる罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由を、勾留の場合のそれと同一に解するときは、その理由によって勾留された被告人は常に接見禁止等をされるおそれを生じ、同法第八〇条等によって法令の範囲内で弁護人ら以外の者との接見などをなしうることが原則とされている法意にもとり不合理といわなければならない。したがって、同法第八一条にいわめる罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとは、被告人が拘禁されていても、なお罪証を隠滅すると疑うに足りる相当強度の具体的事由が存する場合でなければならないと解すべきである。

これを本件についてみるに、被告人は暴力団と称せられている篠原組になんらかのつながりをもつことが窺われるのであるが、本件犯行後未だ勾留されていない頃、右組の構成員と推測される数名の者とともに被害者である柴田富藏に対し、「このことは取り下げろ」などと申し向けて罪証隠滅工作をはかり、もしくは不当な威圧を加え畏怖させるような行為に出たことが推認される。しかし被告人らがかつて、そのような行為に出たことの一事をもって、現に勾留されている被告人らに右と同様な行為による罪証隠滅工作をする疑いがあると即断することはできないし、その他諸般の証拠をかれこれ比照し、右の罪証隠滅工作の事実を併せ考えてみても、被告人について弁護人ら以外の者との接見を禁止する等の措置を講じなければ、罪証を隠滅すると疑うに足りる強度の理由が存するものと認めることはできない。

(三)なお、被告人に余罪があって、これに関する罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が存することをもって、本件の接見禁止等の理由となしえないことはいうまでもないところである。三、以上の理由により、被告人につき、刑事訴訟法第三九条第一項に規定する者以外の者との接見、書類その他の物(糧食及び衣類その他の日用品を除く)の授受をいずれも禁止した原判決は相当でないので、同法第四三二条、第四二六条第二項を適用してこれを取り消すこととし、主文のとおり決定する。

 

勾留をしてもなお接見等禁止までする必要があるかをとても慎重に検討しています。特に、かつて被害者に取下げを求めていることを認定しておきながら、その事実があるからと言って直ちに罪証隠滅をする疑いがあると即断できないとした判断は、法の趣旨にのっとった慎重で穏当なものだと思います。

 

 

残念ながら現在ではこのような運用はなされていない

現在の運用では、問答無用で全面的な接見禁止が付くでしょう。ここに記載されている「篠原組」の者に限定すらすることなく、家族さえも会わせないというのが現状の運用です。この事件が否認していたのか認めていたのかはわかりませんが、現在では否認をしていれば、このような罪証隠滅行為を全くしていなくても、全面的な接見等禁止処分が公判まで続くことになります。否認する方は、家族にも会えず、孤独な戦いを強いられます。

この運用が法律の趣旨に即しているとは全く思いません。

当事務所では、本来の運用を取り戻すべく、接見等禁止決定にも全力で闘います。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所 弁護士 中原潤一