記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所
弁護士 大橋 いく乃

早稲田大学大学院法務研究科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、弁護士法人ルミナス法律事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局、治療的司法研究会事務局等を務める。無罪判決、再度の執行猶予判決等を獲得。精神障害を有する方の刑事弁護に注力しており、医療・福祉の専門家と連携した弁護活動に積極的に取り組んでいる。

目次

1.大麻取締法違反とは
2. 大麻取締法の改正、「使用罪」の創設
3.少年・若年者の大麻取締法違反による検挙人員の増加
4.ぜひ一度ご相談ください

 

 

大麻取締法違反とは

大麻取締法では、大麻の所持、譲渡、譲受、栽培、輸出・輸入が規制されています。

大麻は、テトラヒドロカンナビノール(以下「THC」といいます)が精神作用を有し、喫煙により、感受性の向上といった知覚機能への影響、一時的な短期記憶・学習機能、運動機能への影響を及ぼします。

かつては、大麻草・乾燥大麻が主流でしたが、近年では大麻リキッドを含む大麻樹脂の流通量が増えており、その所持での立件も増えています。

 

 

大麻取締法の改正、「使用罪」の創設

現時点で、大麻については使用罪はありません。(参照:現行法で規制されている大麻の所持とは)

もっとも、近時騒がれているように、政府は今国会で大麻取締法改正案の提出を検討しています。その改正の内容に、使用罪を創設することも盛り込まれています。大麻取締法の改正、特に使用罪創設が議論されるようになったきっかけは、大麻が若年者を中心に薬物乱用への「ゲートウェイドラッグ」となり、社会問題化していることがあるとされています。この使用罪創設については、大麻は覚醒剤等といった薬物と比較して健康被害が大きくない一方で、使用罪創設により逮捕や刑事罰によるトラウマを与え、さらなる社会的孤立を招くことになること等反対意見も大きく、議論が鋭く対立しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年・若年者の大麻取締法違反による検挙人員の増加

本コラムでは改正の是非には立ち入りませんが、大麻取締法違反事件の被疑者・被告人の方には若年の方が多いことはたしかなようです。令和3年犯罪白書によれば、令和2年時点で、20~29歳の検挙人員は2540名、そして20歳未満の検挙人員も887名と増加し続けています。

 

(参照:令和3年版犯罪白書 第4編/第2章/第1節/2)

 

実際に、大学生や高校生のお子さんが、ある日突然大麻取締法違反の嫌疑をかけられて逮捕されてしまった、というようなご相談を受けることも多いです。

ご本人にお会いしてみると、高校生くらいから自分自身大麻を使っていた、少なくとも周りの友人の中には使っている子がいた、などという話を聞くことも多く、20歳未満の少年にとっても、大麻が身近なものになっているということはいえるのかもしれません。

現時点では、まだ「使用」は罰されていませんので、職務質問時などに実際に乾燥大麻やリキッド等を所持していた、などという事実がなければ、大麻の所持として立件される可能性は高くはないかもしれません。もっともそのようなケースでも、18歳未満の場合、実際に大麻使用の事実があり、尿検査によりTHC成分が検出されれば、保護者の正当な監督に服さない「ぐ犯(虞犯:ぐはん)」(ぐ犯少年については、詳しくはこちらをご覧ください)として家庭裁判所に送致される可能性は十分あります。そして、仮に「使用罪」が創設されてしまえば、少年・若年者の検挙件数は激増してしまうかもしれないという危機感をもっています。

 

 

ぜひ一度ご相談ください

当事務所では、大麻取締法違反事案も含め、少年事件を多く取り扱っています。

少年の中には、「大麻は覚醒剤とは違う」「覚醒剤と比べて、立件されたとしても処分はとても軽いものになる」という誤った認識を持っている方もいます。たしかに、成人の刑事事件の場合、単純所持・初犯の場合には画一的な判断がされやすい傾向にはあります。しかし、少年事件の場合、大麻を含む薬物に手を出してしまっているという事実自体をもって、少年の生活環境が非常に悪いものだと評価されてしまい、環境調整が出来なければ、重い処分となってしまうケースも散見されます。少年事件では、犯罪事実の軽重だけでなく、要保護性の視点が大きな考慮要素となるためです(少年審判でどのような要素が考慮されるかという点についてのより詳しい解説は、こちらの少年事件のページをご覧ください)。

当事務所では、親御さんと相談しながら、適切に環境調整をし、可能な限り早期の社会復帰を目指して活動していきます。

お子さんが

  • 大麻取締法違反事件で逮捕されてしまった
  • 職務質問を受け一度返されたが、今後どうなるのか不安

といった場合には、是非一度ご相談ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所

弁護士 大橋いく乃