記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 横浜事務所
弁護士 南里 俊毅

上智大学法科大学院入学後、司法試験予備試験・司法試験合格。最高裁判所司法研修所修了後に、弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。神奈川県弁護士会刑事センター運営委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局等を務める。逮捕・勾留からの早期釈放、示談交渉、冤罪弁護、公判弁護活動、裁判員裁判等、あらゆる刑事事件・少年事件に積極的に取り組んでいる。

目次

1.闇バイトの危険性
2.巧妙な手口
3. 粗暴化するバイト内容
4. 闇バイトに関わってしまったら

 

 

闇バイトの危険性

昨今、ニュースなどで見聞きすることが増え、社会的にも注目が集まってきている「仕事」があります。闇バイトなどと呼ばれているものです。

 

SNSを通じて募集されることが多く、一般的なバイトに比べて、高額な日当や時給が提示されていることが多いです。必ずしも闇バイトという単語で募集されているわけではなく、高収入バイトや裏バイトなどの単語で募集されていることもあります。このような闇バイトは、とても魅力的なバイトに感じられることもかもしれません。

しかし、この闇バイトを経由して犯罪行為を行ってしまったというご依頼が後を絶ちません。典型的なケースでは、SNS上の闇バイト募集を通じて、テレグラムやシグナルといったメッセージアプリに誘導され、メッセージアプリ上で指示を受け、犯罪行為に加担させられてしまいます。

 

犯罪の内容としては、オレオレ詐欺、預貯金詐欺、還付金詐欺など、いわゆる特殊詐欺(特殊詐欺については、こちらもご参照ください)と呼ばれるものが典型的です。

特殊詐欺は、行為の内容によって適用される犯罪の名前は異なりますが、詐欺罪、窃盗罪、電子計算機使用詐欺罪等の犯罪に問われてしまいます。

 

 

巧妙な手口

この闇バイトでは、多くの人々が関わり、役割を分担しています。典型的な末端の人々は、キャッシュカード等を受け取る「受け子」、ATM等から預金を引き出す「出し子」という役割を指示されますが、これらの者を集める「リクルーター」や、被害者の方に電話をかける「架け子」など、多くの人々が役割を分担しています。これらには複数のグループが関与していると言われることもあります。

さらに、闇バイトから誘導されるメッセージアプリ(テレグラムやシグナルなど)は、一定時間が経過するとメッセージが消え、消えてしまったメッセージの復元も容易ではないという特徴があります。

このように、証拠を残さないことで捜査や立証を困難にするだけでなく、多くの人々が役割を分担することで、個々人の犯罪意識を希薄化させることにもなります。

 

実際に用いられている手口は巧妙化しており、昔は息子や甥などの親族を装い、高齢者からお金を騙し取っていましたが、最近は金融庁や銀行の職員、時には警察官を装い、キャッシュカードをすり替えてキャッシュカードからお金を引き出したり、感染症の影響で直接接触できないなどと伝え、高齢者自身にATMを操作させたりするようなものなど、手段は多様化してきています。

 

 

粗暴化するバイト内容

ケースによっては、闇バイトを始める際に、免許証等の写真を送ってしまい、途中で個人が罪の意識からやめたくなってもやめられないという事もあります。何度も闇バイトを繰り返していくうちに、特殊詐欺だけでなく、住居に侵入して金品を奪うといった、窃盗や強盗を指示されることもあります。

やめれば家族に危害を加えると脅され、自暴自棄になって指示に従ってしまった方もいます。

また、特殊詐欺ではなく、いきなり窃盗や強盗を指示され、その際に被害者の方を傷つけてしまい、強盗致傷罪等に発展してしまったケースも見受けられます。

 

 

闇バイトに関わってしまったら

SNSを通じて容易に闇バイトに関わることができてしまうことから、現在では大学生や高校生まで、闇バイトに関わってしまい、受け子や出し子などにされてしまうケースが増えています。

警察庁が発表している資料によれば、令和3年の特殊詐欺による被害額は282億円であり、既遂1件当たりの被害額は202万円とされています(https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokushusagi_toukei2021.pdf)。

このように、特殊詐欺による被害は未だかなり大規模なものであり、1件当たりの被害額もかなり高額であることが多いです。特殊詐欺に対する社会の目は厳しく、仮に本人が大学生や高校生であったとしても、10日又は20日間勾留されてしまうことが多いです。

そして、過去に前科等がなかった場合であっても、被害額等によっては実刑となり、いきなり刑務所へ行ってしまうという判決が下されることも少なくありません。

 

闇バイトに関わってしまった方の中には、お金の欲しさから安易に関わってしまい、なかなかご家族に相談できない方も多くいらっしゃいます。ご家族は、お子さんが逮捕されて初めて、お子さんが闇バイトに関わってしまっていたことを知るというケースも多く存在します。

当事務所がご依頼を受けるケースも、お子さんが特殊詐欺の受け子や出し子の容疑で逮捕されてしまったというご両親からの相談がきっかけであることが多いです。ご相談を受けたら、直ちに弁護士がお子さんの接見に向かい、弁護活動に着手します。

当事務所では、ご本人との接見等を通じて闇バイトに関わってしまった原因を話し合い、ご家族と相談しながら再犯防止に向けた活動や被害者の方の心情に沿って弁償等の活動を進めてまいります。

お子さんが闇バイトに関わってしまった場合には、是非一度ご相談ください。

 

 

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弁護士 南里俊毅