記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 横浜事務所
弁護士 南里 俊毅

上智大学法科大学院入学後、司法試験予備試験・司法試験合格。最高裁判所司法研修所修了後に、弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。神奈川県弁護士会刑事センター運営委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局等を務める。逮捕・勾留からの早期釈放、示談交渉、冤罪弁護、公判弁護活動、裁判員裁判等、あらゆる刑事事件・少年事件に積極的に取り組んでいる。

 

 

最近、静岡地方裁判所が扱った覚醒剤取締法違反事件で、違法捜査を理由に無罪判決がなされていたことがニュースになりました。

刑事裁判では、刑事訴訟法には明文の規定はありませんが、違法に収集された証拠は証拠能力が否定される(=刑事裁判において証拠として使うことができない)ことがあるというルールがあります。これを違法収集証拠排除法則と言います。

違法収集証拠排除法則については、以前に弊所のコラムで解説をしておりますので、そちらもご覧ください(【違法不当な職務質問などによって証拠が発見されたとき】https://luminous-law.com/news/13093/)。

 

最高裁は、過去の判例において、違法収集証拠排除法則が適用され証拠能力が否定される場合として、⑴令状主義の精神を没却するような重大な違法があること(違法の重大性)及び⑵その証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないこと(排除相当性)が認められる場合を挙げています。

今回の事件では、警察官が虚偽の内容の捜査報告書を裁判所に提出して令状を請求したことなどから、重大な違法があるとされたようです。

そして、裁判所は、上記の捜査の違法性が重大であり、その捜査によって得られた証拠を許容することが将来の違法捜査抑制の観点から相当でない(言い換えれば、この証拠を許容することによって将来同様の違法捜査を誘発する恐れがある)と判断したと考えられます。その結果、これによって得られた証拠の証拠能力を否定し、無罪判決を言い渡したようです。

 

たしかに事件の真相を究明し、罪を犯した人に刑罰を科すことも社会において重要な機能です。しかし、そのためであればどのような捜査も許されるとするのは捜査機関の持つ強力な権限が濫用され違法捜査が繰り返されかねません。とくに上記の事件のように、裁判所の司法審査を欺くような捜査は司法の適正手続を正面から阻害するものです。違法な捜査については、弁護人が十分に証拠開示を求めたり、ご本人から事情を聴取したりして、見逃されることがないようにする必要があります。違法な捜査を看過することが無いよう、綿密な弁護活動が求められます。

 

 

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弁護士 南里俊毅