逮捕について

コラム

2019.06.09

逮捕とは

逮捕とは、被疑者の身体を強制的に拘束して、警察署等の所定の留置施設に連行し、留め置くことをいいます。逮捕の目的は、被疑者の逃亡や、罪証隠滅を防止することにあり、取調べや、再犯の防止などを目的として逮捕することは許されません。また、逮捕はそれ自体で罰を与えることを目的とした制度でもありません。あくまで逃亡や罪証隠滅の防止が目的ですので、逮捕されなかったからと言って無罪放免になったわけでもありません。逮捕されなかったという事実は、被疑者が逃亡や罪証隠滅をするおそれがないと判断されたという意味しか持ちません。

 

 

逮捕の種類

逮捕の種類は、大きく分けて、以下のとおり3つあります。

 

通常逮捕

通常逮捕(刑事訴訟法199条1項)とは、裁判官があらかじめ発する逮捕状に基づき、行われる逮捕手続です。逮捕の際には、逮捕状を示され、逮捕の理由を告げられます。罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、逮捕の必要性があるとされた場合に限り、行うことができます。

逮捕の必要性について、刑事訴訟規則143条の3では、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞(おそれ)がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」は、逮捕状請求を却下しなければならないと規定されています。これはつまり、被疑者の逃亡の防止または罪証隠滅の防止の目的のために逮捕が必要であること、そして、逮捕によって得られる捜査上の利益と逮捕によって生じる被疑者の権利侵害の程度との均衡がとれていることを逮捕の必要性として求めているといえます。

 

現行犯逮捕・準現行犯逮捕

現行犯逮捕(刑事訴訟法212条1項)とは、現に犯罪を行っている人、または犯罪を行い終わったばかりの人を、逮捕状なしに逮捕する手続きです。

また、

①犯人と追呼されている(刑事訴訟法212条2項1号)

②犯罪に使用した凶器などを持っている(同2号)

③身体や服に犯罪を行った跡がみられる(同3号)

④声をかけられて逃げている(同4号)

のいずれかに該当し、犯罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる人を、逮捕状なしに逮捕する手続きを、準現行犯逮捕(刑事訴訟法212条2項)といいます。

これらの手続きは、犯罪が起きたこととその人が犯人であることが客観的に明らかであり、誤って逮捕するおそれが低いため、逮捕状なしに行うことが例外的に許されているとされてます。

 

緊急逮捕

緊急逮捕(刑事訴訟法210条1項)とは、犯罪及び犯人であることの嫌疑が高く、事前に逮捕状発布を請求している余裕がないときに、逮捕した後すぐに逮捕状発布の請求を行うことを条件として行う逮捕手続です。緊急逮捕を行うことのできる対象犯罪は、殺人罪(刑法199条)や強盗罪(刑法236条)などの重大犯罪に限定されています。逮捕の際には、犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があることと、急速を要し裁判官の逮捕状を求めることができない緊急の必要があることを、逮捕の理由として告げられます。緊急逮捕をした後は、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをしなければならず、逮捕状が発せられなければ直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

 

 

逮捕ができる人

通常逮捕と緊急逮捕は検察官、検察事務官、そして警察官がすることができます(刑事訴訟法199条1項、210条1項)。

一方で現行犯逮捕は「何人でも」できるとされており(刑事訴訟法213条)、一般市民でもすることが可能です。しかし、一般市民が現行犯逮捕をした場合は、直ちに犯人を検察官または警察官に引き渡さなければなりません(刑事訴訟法214条)。

 

 

逮捕後の手続き

逮捕後の手続きは、警察に逮捕された場合と、検察に逮捕された場合とで、異なる部分があります。

ほとんどのケースでは、警察に逮捕されます。

検察に逮捕されるケースは、特捜部の事件等が考えられます。

 

警察に逮捕された場合

逮捕されるとまず、犯罪事実の要旨と弁護人を選任することができることを告げられます(憲法34条)。そのうえで、被疑者には弁解する機会が与えられ、弁解録取書という書面を作成されます(刑事訴訟法203条1項)。警察は、弁解の内容なども踏まえ、被疑者を留め置く必要があるかどうかを判断します。留め置く必要があるとする場合は、身体拘束されたときから48時間以内に検察官に送致する手続きをとる必要があり(刑事訴訟法203条1項)、不要とする場合は直ちに釈放しなければならないとされています(刑事訴訟法同条5項)。しかし、実務上は、逮捕後送検までのこの段階で釈放されることはほとんどありません。

送致されてきた被疑者を受け取った検察官は、改めて被疑者に弁解する機会を与えます。そのうえで、被疑者を留め置く必要があるとする場合は、被疑者を受け取ったときから24時間以内、かつ被疑者が身体拘束されたときから72時間以内に、裁判官に勾留請求をするか、または公訴を提起する必要があります(刑事訴訟法205条1項~3項)。他方、留め置きは不要とする場合、勾留請求又は公訴の提起をしない場合には、直ちに釈放しなければなりません(刑事訴訟法同条1項・4項)。

 

検察に逮捕された場合

検察事務官から被疑者を受け取った検察官は、被疑者に対して、犯罪事実の要旨と弁護人を選任することができることを告げ(憲法34条)、弁解の機会を与えます(刑事訴訟法204条1項)。検察官は、弁解の内容なども踏まえ、被疑者を留め置く必要があるかどうかを判断します。留め置く必要があるとする場合は、身体拘束されたときから48時間以内に裁判官に勾留請求をするか、または公訴を提起する必要があります。留め置きを不要とする場合、勾留請求又は公訴の提起をしない場合は直ちに釈放しなければなりません(刑事訴訟法204条1項・4項)。

 

 

釈放のタイミング

逮捕前

前述の通り、法律上、警察による逮捕後に弁解をする機会があり、その弁解によって警察は留置の必要が無ければ釈放することにはなっていますが、実務上そこで釈放されることはほとんどありません。逮捕されてしまった場合、釈放される最初のタイミングは、検察官に送致されたところです。そうすると、少なくとも警察署に一泊しなければならなくなります。

したがって、逮捕をされないことが非常に重要になります。犯罪の嫌疑がかけられたら、自分には逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないことを警察官に伝えなければなりません。具体的には、自分の住所を告げたり、身元引受人がいることを告げたり、身元引受人に連絡をして迎えに来てもらったりする必要があるでしょう。疑われている犯罪が比較的軽微な場合には、それによって逮捕されずに家に帰してもらうことも十分にあり得ます。

 

検察官に送致された後

検察官に送致された後、検察官は本人を釈放するか、勾留請求をするかを判断します。

法律上、公訴の提起をすることも規定されていますが、実務上はほとんどありません(証拠がすでに十分で、疑われている犯罪が軽微であるため、略式請求にするという事は稀にあります)。

したがって、ここで釈放されるかどうかが一つのカギにもなり得ます。検察官に対して、本人を留置したまま捜査をする必要がないこと、本人は釈放されても捜査に協力することなどを伝えて、勾留請求をしないように働きかけることが必要になります。

そのため、逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護人を選任し、このタイミングで釈放されることを目指して弁護人に活動してもらうべきでしょう。

 

検察官が勾留請求をした後

検察官が勾留請求をしたからと言って、自動的に勾留されてしまうわけではありません。

検察官は、裁判官に勾留請求をします。

裁判官は、検察官からの勾留請求を受けて、被疑者を勾留するのか、それとも釈放するのかを判断します。

したがって、ここで裁判官に働きかけて、勾留しておく必要がないことを説明し、釈放してもらうことも十分に可能です。検察官が勾留請求をしてしまったとしても、裁判官によって釈放されることもあります。ここでの釈放に向けた弁護活動をすることも、当初の弁護活動として極めて重要な意味を持ちます。

 

裁判官が勾留決定をした後

裁判官が勾留決定をしたとしても、その勾留決定に不服を申し立てることができます(勾留決定に対する準抗告といいます )。

勾留決定をする裁判官は一人で判断しますが、準抗告は三人の裁判官が判断します。

その三人の裁判官に対し、勾留決定は誤っているため、取り消したうえで、検察官の勾留請求を却下するべきだと言う説得をすることになります。この説得活動は、弁護人をつけなければ極めて難しいものと考えられます。

 

 

逮捕は罰ではない

以上見てきた通り、逮捕は罰ではありません。したことの罰を与えるために逮捕するのではありません。

逃亡や罪証隠滅のおそれが認められる場合に、それを防止するために逮捕をするのです。

また、逮捕の時点では、犯罪を犯したと疑われているにすぎません。

本当にその人にその疑われている罪が成立するのか、有罪なのかはまだわからないのです。

その捜査をするために、逮捕をする必要がある場合には逮捕をすることになります。

その捜査に逮捕が必要ないのであれば、逮捕はしません。

逮捕には、そのような意味しかないことを理解しておくことが重要です。

 

 

このページは、弁護士法人ルミナス法律事務所 代表弁護士 中原潤一(埼玉弁護士会所属)が執筆しました。

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