記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス 代表
弁護士 中原 潤一

弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。

目次

1.そもそも接見とは
2.接見等禁止とは
3.接見等禁止がつけられてしまうのはどんな場合か
4.接見等禁止がつけられる時期
始期
終期
5.接見等禁止を解除するにはどうすればいいか
6.接見等禁止は人質司法の手段の一つ

 

 

そもそも接見とは

接見とは、刑事手続によって勾留されている被疑者・被告人と面会することをいいます。弁護人と被疑者・被告人が立会人なく接見する権利(接見交通権)は、刑訴法39条1項に規定されており、憲法34条の弁護人選任権に由来する重要な権利であるとして、手厚い保護がなされています。代用監獄に被疑者・被告人がいる場合、弁護人は立会人なく365日24時間会う権利が認められています。この権利が不当に侵害された場合、国家賠償法上違法であるとして、損害賠償が認められることがあります。

今回のテーマである接見等禁止は、弁護人との接見ではなく、弁護人以外の人(家族等)との面会を禁止することです。

 

 

接見等禁止とは

勾留されている被告人が、その家族らと接見をする権利についても法律に規定されています(刑事訴訟法80条)。しかし、この権利は憲法に由来する権利ではなく、法律によって制限されることがあります。接見等禁止とは、裁判所が、検察官の請求又は職権で、勾留されている被告人と弁護人以外の者との接見を禁止し、または、被告人との間で授受する書類その他の物を検閲し、その授受を禁止し、もしくはそれらの差押えをすることをいいます(刑事訴訟法81条)。この条文は、被疑者段階にも準用されています。接見(=面会)だけではなく、書類の授受も禁止ができるので、接見「等」禁止と言われています。

 

 

接見等禁止がつけられてしまうのはどんな場合か

裁判所が接見禁止をつける場合は、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」です(刑事訴訟法81条)。これは、勾留中につけられるものであることに注意を要します。つまり、そもそも勾留も逃亡を疑うに足りる相当な理由や罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由が要件になっています。すなわち、勾留しているだけでは逃亡や罪証を隠滅することを防ぎきれないといえるような場合に接見等禁止処分がつけられます。

このように、法律の建前では、勾留によってもなお逃亡や罪障を隠滅することが防ぎきれないという例外的な場合にのみ接見等禁止処分がつけられることになっています。しかし、現実には、共犯事件や否認事件、組織的な犯罪が疑われているような場合に、安易に接見等禁止処分がなされているケースが散見されます。

 

 

接見等禁止がつけられる時期

始期

接見等禁止は、勾留請求とともに請求がなされることが大多数です。

ですので、認められるとすれば、勾留と同時に接見等禁止が開始されることがほとんどです。

 

 

終期

これは、ケースバイケースです。

起訴された際に接見等禁止が取れるケース、第一回公判で接見等禁止が取れるケース、重要証人の尋問が終わって接見等禁止が取れるケース、被告人質問が終わって接見等禁止が取れるケース等が考えられます。接見等禁止処分が付く際に、裁判所が必ず終期を設けますので確認が必要です。

 

 

 

 

接見等禁止を解除するにはどうすればいいか

接見等禁止がなされた場合、弁護人としては①接見禁止の(一部)解除の申立て、②準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)、初公判後であれば③抗告(刑事訴訟法420条1項2項)をすることになります。

現状では、共犯事件や否認事件、組織的な犯罪が疑われているような場合に、親族が犯罪に関与しているか否かを確認しないまま、安易に全面的に接見等禁止処分が付されているケースが多いです。ですので、接見等禁止処分が付される前に弁護人に選任されたら、あらかじめ一定の親族については接見等禁止処分をつけないように裁判所に働きかけるケースなどがありますし、その活動ができなかったとしても、ご家族が犯罪に関係ないことが明らかな場合には、準抗告や一部解除の申立てで接見等が認められることになるケースが多いです。

 

 

接見等禁止は人質司法の手段の一つ

接見等禁止は、大切な家族や友人との面会や手紙のやり取りを禁止します。弁護人としか会えなくするのです。

接見等禁止をつけられた被疑者・被告人は、孤立を深めます。そのこと自体に耐えられなくなります。

これが無実の人だったらどうでしょうか。孤独に耐えられずに、してもいない罪を認めてしまうことがあります。

これが人質司法です。被疑者・被告人から、家族や友人という心のよりどころを奪い取り、罪を認めさせようとするのです。

このような野蛮な制度が、この国には存在するのです。

このような制度は、無くなるべきだと考えています。

接見等禁止処分がつけられてしまった方、大切な人と会えなくなってしまった方、当事務所にご連絡ください。一緒に戦いましょう。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 中原潤一