記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス 代表
弁護士 中原 潤一

弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。

目次

1.裁判員制度
2.裁判員裁判の対象事件
3.裁判員の資格について
欠格事由(裁判員法14条)
就職禁止事由(裁判員法15条)
不適格事由(裁判員法17条、18条)
辞退事由(裁判員法16条)
4.裁判員選任の流れと裁判員の任務
5.裁判員保護のための制度
6.裁判員裁判の解決実績

 

 

裁判員制度

裁判員制度とは、「国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する」制度をいいます(裁判員法1条)。「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する」ことを目的として、2004年に導入され、2009年に実施が始まりました。

最高裁平成23年11月16日判決では、裁判員裁判は憲法違反にはならないと判示したうえ、裁判員制度は、「司法の国民的基盤の強化」と目的とするものであり、「国民の視点や感覚と法曹の専門性とが常に交流することによって、相互の理解を深め、それぞれの長所が生かされるような刑事裁判の実現を目指すもの」であると指摘しています。

 

 

裁判員裁判の対象事件

裁判員裁判の対象となる事件は、地方裁判所で審理される、①死刑又は無期の懲役若しくは禁固に当たる罪に係る事件②裁判所法26条2項2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものであると規定されています(裁判員法2条1項)。たとえば、殺人罪、強盗致傷罪、強制性交等致傷罪などが該当します。

すべての刑事事件を裁判員裁判とするのは国民に過度な負担を賭けてしまうことから、特に重大な事件に限り、裁判員裁判の対象としているのです。

 

 

裁判員の資格について

裁判員は、衆議院の選挙権を有する者から選任されます(裁判員法13条)。裁判員になることができない場合としては、大きく分けて①欠格事由、②就職禁止事由、③不適格事由の3つの場合があります。

 

 

欠格事由(裁判員法14条)

裁判員には、国家公務員法38条(国家公務員欠格事由)に該当する者、義務教育を終了しない者、禁固以上の刑に処せられた者、心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者は裁判員になることができません。これを欠格事由といいます。

 

 

就職禁止事由(裁判員法15条)

国会議員、法曹関係者、警察関係者など、一定の職業に就いている者もしくはこれらの職業に過去に就いていた者も裁判員になることができません。

 

 

不適格事由(裁判員法17条、18条)

自分が裁判員に選ばれた具体的事件との関係で、被告人や被害者と一定の関係を持つ者や、事件に一定の職務に関与した者など、裁判所が「不公正な裁判をするおそれがあると認めた者」はその事件の限りで、裁判員となることはできません。

 

 

辞退事由(裁判員法16条)

上記の事由以外に、重い病気であったり、介護や仕事でどうしても参加できないような場合など、一定の要件に該当する場合には、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができます。

 

 

裁判員選任の流れと裁判員の任務

裁判員の選任の手続きはおおむね以下の通りです。

 

①市町村の選挙管理委員会が、毎年、裁判員候補者をくじで選び、名簿を地方裁判所に送る(裁判員法20~22条)

②裁判所はそれを基に裁判員候補者名簿を作成し、候補者に通知する(同法23~25条)

③事件について第1回公判期日が決まると、くじで裁判員候補者を一定数選び、裁判員等選任期日に呼び出す(同法26~29条)

④裁判官、裁判所書記官の列席及び検察官・弁護人の出席の下、不選任の請求・決定などがなされる

⑤不選任にならなかった候補者のなかから、くじで裁判員と補充裁判員を決定し、職務を公平誠実に行うことを宣誓する(同法32~39条)

 

裁判員は、公判期日ならびに公判期日外の証人尋問・検証に出頭する義務を負います(同法52条)。

裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料が支給されます(同法11条)。

 

 

裁判員保護のための制度

裁判員は被告人の前で顔を隠すことなく裁判に参加し、時に被告人に恨まれるかもしれないような判決を下す立場となるため、裁判員を保護するための制度も整えられています。たとえば、裁判員を特定する情報の公開の禁止(裁判員法101条)、当該事件に関して裁判員との接触の禁止(同法102条)、裁判員に対して威迫行為を行うことの禁止(同法107条)といった規定があります。

また、裁判に出席するために会社を休む等したことで、会社が裁判員を不利益に取り扱うことも禁止しています(同法100条)。

 

 

裁判員裁判の解決実績

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 中原潤一