控訴審の弁護活動

目次

1.控訴とは
2.控訴の割合とその結果(事件の統計)
3.控訴の流れ
4.控訴審の特徴
5.控訴審の目標
6.控訴審の弁護活動
7.控訴審の弁護活動に必要なもの
8.第一審における保釈との違い
9.控訴での保釈請求
10.弁護士法人ルミナス法律事務所の控訴審弁護活動
11.控訴審弁護の解決実績

 

 

控訴とは

弁護士 田中 翔

控訴とは、第一審の地方裁判所や簡易裁判所が下した判決に不服がある場合、当該地方裁判所や簡易裁判所を管轄する高等裁判所に不服の申し立てをすることを言います。

この不服の申し立てに理由があれば、第一審の地方裁判所や簡易裁判所が下した判決は破棄されることになる一方で、不服の申し立てに理由がない場合には控訴棄却となります。

第一審では、裁判官3人の合議体で審理し判決をすることもありますが、裁判官1人だけで審理する事件のほうが多くなっています。

一方で、控訴審は、必ず裁判官3人の合議体によって審理が行われ、判決をすることになります。

 

 

控訴の割合とその結果(事件の統計)

控訴の割合

平成30年度の司法統計年報によると、地方裁判所で判決を下された人数が5万591人、簡易裁判所で判決を下された人数が5524人とされています。

この合計5万6115人のうち、控訴をした人(検察官控訴も含む)は6098人とされています。

そうすると、約10.8%の人が、控訴をし、もしくは控訴を申し立てられたという計算になります。

 

控訴の結果

平成26年度の司法統計年報によると、控訴審終局人員総数6098人のうち、第一審判決を破棄された人が572人とされています。

6029人のうち、982人が控訴を取り下げていますから、控訴の結果としては、約11.3%の割合で第一審判決が破棄されているという計算になります。

なお、第一審が破棄された人のうち、有罪になったのが534人、一部有罪になったのが13人、無罪になったのが25人、差戻しや移送になったのが15人とされています。この有罪になった方の中には、第一審から事実関係を認めていたものの量刑不当で破棄された方が含まれているものと思われます。

 

 

控訴の流れ

第一審判決に不服がある場合には、第一審判決が下された日の翌日から数えて14日以内に、控訴をすることができます。

控訴をする場合には、第一審判決をした裁判所に、高等裁判所宛の控訴申立書を提出します。

控訴申立書を提出すると、約1か月ほどで第一審裁判所から高等裁判所に事件の記録が送られ、それから約1か月後までに控訴趣意書の提出を求められます。

控訴趣意書というのは、控訴の具体的な理由を記した書面です。

控訴趣意書が提出してから約1か月後に控訴審の公判期日が指定されます。

したがって、事件ごとに異なりますが、おおむね第一審判決から約3~4か月後に控訴審の公判期日が開かれるという流れになります。

 

 

控訴審の特徴

控訴審は「事後審」

控訴審は、「事後審」だと言われています。

つまり、第一審の判決が不合理といえるかどうかを事後的に検討するための裁判であるということです。

ですので、第一審と同じことをもう一度繰り返すわけではありません。

第一審の記録と、控訴趣意書や答弁書を検討し、第一審の判決が不合理か否かを検討することになります。

ほとんどの場合が書面審査ですので、多くの公判期日は5分程度で終了します。

 

被告人は出頭しなくてもよい

控訴審においては、被告人は公判期日に出頭しなくても良いとされています(刑事訴訟法390条本文)。

第一審では被告人の出頭は義務ですから(刑事訴訟法273条2項)、第一審にはない控訴審の特徴と言えます。

 

第一審時に存在した証拠の提出には「やむを得ない事由」が必要

第一審時に存在していた証拠を提出するためには、その証拠を提出できなかった「やむを得ない事由」が必要であるとされています(刑事訴訟法382条の2)。

それは、控訴審が事後審とされており、第一審で当事者双方に攻撃防御を尽くさせる必要があるからです。

ですので、第一審では、控訴審では自由に証拠が提出できないことをも考えて、主張立証活動をする必要があります。

 

 

控訴審の目標

控訴審は、第一審の裁判に不満がある、裁判をやり直してほしいという方のために用意されている制度です。

控訴審の目標は、まぎれもなく第一審の判決が誤っていることを明らかにし、第一審判決を破棄してもらうことです。

ただし、裁判や判決に不満があって、やり直してほしいと思っても、また最初からやり直すことができるわけではありません。

第一審で取り調べられた証拠と、第一審の判決が存在することが前提となっています。

 

第一審判決を破棄するためのパターンとしては、法律上2つのパターンが規定されています。

一つ目が、控訴理由に当たる事由がある場合に第一審を破棄するというパターン(刑事訴訟法397条1項、いわゆる「1項破棄」)。

二つ目が、控訴理由に当たる事由はないけれども、第一審判決後に新たな事実が発生し(例えば、第一審判決後に示談が成立したなど)、その事実を取り調べた結果、第一審判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められる場合に、第一審判決を破棄するパターン(刑事訴訟法397条2項、いわゆる「2項破棄」)です。

 

「1項破棄」となる場合

①絶対的控訴理由がある場合(刑事訴訟法377条、378条)

②訴訟手続きの法令違反(刑事訴訟法379条)

③法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)

④量刑不当(刑事訴訟法381条)

⑤事実誤認(刑事訴訟法382条)

⑥再審事由等(刑事訴訟法383条)

 

「2項破棄」となる場合

第一審判決では示談が成立していなかったけれども、第一審判決後に示談が成立したような場合、示談書を事実取調べ請求し、控訴審裁判所が事実を取り調べた結果、刑の量定に影響を及ぼすべき情状が生じたと判断し、かつ、第一審判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められる場合に、第一審判決を破棄できるとされています(刑事訴訟法397条2項)。

 

 

控訴審の弁護活動

控訴審では、以上の法律の規定に従って、弁護活動の指針を定める必要があります。

 

事実を認める事件の場合

事実を認める事件の場合には、「1項破棄」「2項破棄」双方を狙っていくことになります。

第一審判決の判決理由から、考慮すべきことを考慮していない(または過少に評価している)部分はないか、もしくは考慮すべきではないことを過大に考慮していないかという点をピックアップし、第一審判決が不合理であることを明らかにしていきます。

また、事実を認める事件の場合は、「2項破棄」を目標とすることも多いです。

示談が成立していない場合には示談活動を行い、示談の成立を目指します。

さらに、依存症などによって病院への入通院が必要である場合には、それを行い、刑務所に入れるべきではないことを主張立証することになります。

 

事実を争う事件の場合

事実を争う事件の場合には、「1項破棄」しかありません。

第一審判決が事実認定の誤りをしていることを、具体的に主張していく必要があります。

それと同時に、第一審判決に影響を及ぼすような証拠がないかを探し、事実取調べ請求をすることになります。

控訴審での事実取調べ請求には「やむを得ない事由」が必要ですから、「やむを得ない事由」に該当することを説得的に論じる必要があります。

 

 

控訴審の弁護活動に必要なもの

控訴審の経験

弁護士になる前に、司法研修所で修習生として研修を行いますが、それは第一審の活動に限られます。

しかし、控訴審の活動は第一審の活動とは全く異なりますから、経験を積まなければ控訴審を担当する能力が育まれません。

控訴審の弁護活動には、経験が必要です。

 

判決を分析する能力

また、控訴審は第一審の判決の合理性を問うものですから、判決を分析する能力が必要になります。

判決を分析し、第一審判決や事件全体の問題点をあぶりだし、その問題点に対してどのように反論するのかが重要です。

控訴審の弁護活動には、判決を分析する能力が必要です。

 

的確な証拠を提出する能力

控訴審においても、証拠を提出することが必要です。

第一審判決と事件の分析を前提に、依頼者にとって有利な判決をしていただくための的確な証拠を選択し、提出することが重要です。

控訴審の弁護活動には、的確な証拠を提出する能力が必要です。

 

 

第一審における保釈との違い

第一審においては、保釈について2つの条文が用意されています。

それが、権利保釈(刑訴法89条)と裁量保釈(刑訴法90条)です。

権利保釈の場合には、除外事由(例えば、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由など)に該当しない限り、「これを許さなければならない」とされています。

つまり、保釈が権利として認められているのです。

しかしながら、禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈の規定は適用されません(刑訴法344条)。

したがって、仮に第一審で実刑判決となってしまった場合には、裁量保釈を求めるしかありません。

これは、第一審の時に保釈されていた場合でも、保釈されていなかった場合でも、条件は一緒です。

 

 

控訴での保釈請求

実刑判決だと収監されてしまう

第一審で保釈許可決定が出ていて保釈中の方であっても、実刑判決となると保釈の効力が失効して、そのまま拘置所等に収容されてしまうということになります(刑訴法343条、98条)。

したがって、事実関係を認める事件でも、争う事件でも、実刑判決があり得る事件ではあらかじめ再保釈の請求を念頭に置いておかなければなりません。

もちろん、保釈中じゃなかったとしても、控訴審から保釈請求をするということはあり得ます。

 

控訴審での保釈の考慮事項

裁量保釈では、保釈の必要性が求められています。

それは、保釈の必要性の程度(被告人が病気をしていてその治療が拘置所ではできないものかどうか、家族や親族に介護を要する人がいて被告人でなければできないのか、仕事上の必要性等)や控訴結果の見込み(控訴した結果無罪や執行猶予、罰金等になる見込みがどれほどあるか)、逃亡のおそれの大小(第一審で言い渡された刑期の長短、被告人の生活環境等)を考慮して判断されているとされています。

したがって、控訴審での保釈請求にあたっては、これらの点を理解して保釈請求をしなければなりません。

 

保釈保証金は第一審よりも金額が上がることが多い

控訴中の保釈が認められたとしても、第一審での保釈保証金額よりも高額になることが多いです。

したがって、すぐに保釈請求をする場合には、その点も頭に入れておかなければなりません。

なお、保釈保証金の金額を基準に保釈の報酬を定めているタイプの法律事務所にご依頼をされている方は、その点も注意しなければなりません。

当事務所では、保釈保証金の金額を基準に報酬を決めることは絶対にありません。

その点については、こちらのページをご覧ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所の控訴審弁護活動

弁護士法人ルミナス法律事務所は、控訴審の経験も豊富です。

被告人から控訴を申し立てる事件の取り扱いも、検察官から控訴を申し立てられた事件の取り扱いもございます。

控訴審の弁護活動は、弁護士法人ルミナス法律事務所にお任せください。

 

 

控訴審弁護の解決実績

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