大麻・麻薬等

大麻・麻薬等の弁護士へのご相談・目次

1.大麻取締法違反
条文
法定刑
大麻取締法違反の逮捕・勾留の状況
解説
2.麻薬及び向精神薬取締法違反
条文
法定刑
麻薬及び向精神薬取締法違反の逮捕・勾留の状況
解説-麻薬取締法の故意
3.大麻取締法違反・麻薬取締法違反における弁護活動のポイント
4.おわりに

 

 

大麻取締法違反

大麻取締法の対象となっている「大麻」とは、大麻草(成熟した茎・種子は除く)及びその製品を言います。マリファナという俗称で聞いたことがある方も多いかもしれません。

大麻は、これに含まれる成分により幻覚作用・記憶への障害・学習能力の低下・知覚の低下などを引き起こし、精神依存性があるといわれています。

 

大麻取締法は、2023年12月6日に成立した「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」により、「大麻草の栽培の規制に関する法律」に名称が変更される予定です。改正法の施行日は、公布日から1年を超えない範囲内(一部については公布日から2年を超えない範囲内)で今後政令により定められる予定です。

 

改正後の法定刑や条文など、詳しくはこちら

 

こちらでは、改正以前の大麻取締法違反についてご説明いたします。

 

 

条文

大麻取締法は、免許を受けた大麻栽培者及び大麻研究者以外が大麻を所持したり栽培したりすることを禁止しています。

これに違反して大麻を所持するなどした場合の罰則も設けています。その主な罰則は以下の通りです。

 

第24条(不正な栽培、輸出入)

1 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第24条の2(不正な所持、譲受、譲渡)

1 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

 

法定刑

大麻使用 5年以下の懲役
大麻所持 5年以下の懲役
大麻営利目的所持 7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金
大麻譲渡 5年以下の懲役
大麻営利目的譲渡 7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金

 

 

大麻取締法違反の逮捕・勾留の状況

2022年検察統計年表(最新版)によると、大麻取締法違反事件の逮捕・勾留の状況は、以下のとおりです。

 

逮捕の状況

検挙された件数 7753件
逮捕された件数 4239件
逮捕されていない件数 3514件
逮捕率(※1) 約55%

(※1)小数点第一位を四捨五入しています。

 

 

勾留の状況

逮捕された件数 4239件
検察官が勾留請求せず、釈放した件数 81件
裁判官が勾留した件数 4002件
裁判官が勾留しないで、釈放した件数 84件
その他 72件
勾留率(※2・3) 約94%

(※2)裁判官が勾留した件数/逮捕された件数

(※3)小数点第一位を四捨五入しています。

 

 

解説

他の薬物犯罪(覚醒剤取締法違反)と同じように、大麻取締法違反の罪で逮捕された場合は、極めて高い確率で勾留されているのが現状です。

そして、営利目的ではない所持で、事実を認めている場合には、10日間の勾留の上、公判請求となるケースがほとんどであるといえます。

一方で、公判請求された後の保釈請求については、事実を認めている場合で、前科前歴等がない場合には認められやすい傾向にあります。

判決については、所持していた大麻の量及び何回目の裁判か(=同種前科がどれくらいあるか)によってほぼ定型的と言っても過言ではないほど、量刑相場が固定されているのが特徴と言えます。

ただし、初犯でも実刑になり得る要因もあります。売買のような営利目的をもって所持した場合などには悪質性が認められやすく、大麻を大量に所持していた場合には常習性や依存性が判断されやすいためです。

また、事件について反省せず、更生する気がないと裁判官によって判断されると、執行猶予判決を得ることが難しくなります。

他の薬物犯罪と同様、ご本人が薬物依存を理解し適切な治療を受けること、就労したり家族による監督を受けながら生活環境を整備していくこと、薬物を使用するきっかけとなった交友関係を断つことによって、改善更生し再犯のおそれがないと十分に主張・立証することが大切です。

 

 

 

 

麻薬及び向精神薬取締法違反

麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬等(ヘロイン・コカイン・MDMAなどの合成麻薬・LSD等)の輸出入、所持、譲渡、譲受、製造、施用等を取り締まる法律です。

 

同法では規制対象を成分ごとに定めており、ここで定められた成分を含んでいる薬物が「麻薬」として規制されます。つまり、法律の本文中には、いわゆる「コカイン」「ヘロイン」のような呼び名が出てくることはありません。

 

このような薬物は所持や施用等は原則として禁止されています。所持や施用等には特別の許可が必要となっているため、許可のない一般の方が所持した場合に罰せられます。

許可がある者であっても不適当な所持・施用等をした場合、そのような施用を受けた一般の方についても、罰せられます。

 

また、所持や施用等の各態様について未遂罪が規定されているため、未遂であっても処罰対象になります。

 

 

条文

同法は、①ヘロイン②ヘロイン以外の麻薬③向精神薬(メチルフェニデート等)の大きく3つに分けて罰則を定めています。

※以下は改正後の条文となります。

 

ヘロイン

第64条

1 ジアセチルモルヒネ等を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者は、一年以上の有期懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第64条の2

1 ジアセチルモルヒネ等を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、交付し、又は所持した者は、十年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第64条の3

1 第十二条第一項又は第四項の規定に違反して、ジアセチルモルヒネ等を施用し、廃棄し、又はその施用を受けた者は、十年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の違反行為をしたときは、当該違反行為をした者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

ヘロイン以外の麻薬

第65条

1 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

一 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第六十九条第一号から第三号までに規定する違反行為をした者を除く。)

二 麻薬原料植物をみだりに栽培した者

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第66条

1 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該違反行為をした者は、一年以上十年以下の懲役に処し、又は情状により一年以上十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第66条の2

1 第二十七条第一項又は第三項から第五項までの規定(※執筆者註:施用者以外の施用)に違反した者は、七年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の違反行為をしたときは、当該違反行為をした者は、一年以上十年以下の懲役に処し、又は情状により一年以上十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

向精神薬

第66条の3

1 向精神薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、製造し、製剤し、又は小分けした者V第七十条第十五号又は第十六号に規定する違反行為をした者を除く。)は、五年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

第66条の4

1 向精神薬を、みだりに、譲り渡し、又は譲り渡す目的で所持した者(第七十条第十七号又は第七十二条第六号に規定する違反行為をした者を除く。)は、三年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、五年以下の懲役に処し、又は情状により五年以下の懲役及び百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

 

 

法定刑

麻薬及び向精神薬取締法における主な罰則規定について、①ヘロイン、②ヘロイン以外の麻薬、③向精神薬の3つに分けて紹介いたします。

 

特に➀ヘロインに関する規制は他の麻薬と比べて厳しいものになっています。ヘロインが特に作用が強く依存性の強い薬物であることを反映したものといえます。

 

さらに、営利目的をもって同法の規制に違反した場合については、営利目的を持たずに同法の規制に違反した場合と比べて、法定刑がより重くされています。

 

  法定刑 営利目的の場合の法定刑
ヘロイン 輸出入・製造 1年以上の有期懲役 無期懲役若しくは3年以上の懲役又は情状により1000万円以下の罰金併料
製剤・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・施用 10年以下の懲役 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併料
ヘロイン以外の麻薬 輸出入・製造・栽培 1年以上10年以下の懲役 1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併料
製剤・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・施用 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併料
向精神薬 輸出入・製造・製剤・小分け 5年以下の懲役 7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併料
譲渡・譲渡目的での所持 3年以下の懲役 5年以下の懲役又は情状により100万円以下の罰金併料

 

 

麻薬及び向精神薬取締法違反の逮捕・勾留の状況

2022年検察統計年表(最新版)によると、麻薬及び向精神薬取締法違反事件の逮捕・勾留の状況は、以下のとおりです。

 

逮捕の状況

検挙された件数 1346件
逮捕された件数 826件
逮捕されていない件数 520件
逮捕率(※1) 約61%

(※1)小数点第一位を四捨五入しています。

 

 

勾留の状況

逮捕された件数 1346件
検察官が勾留請求せず、釈放した件数 3件
裁判官が勾留した件数 819件
裁判官が勾留しないで、釈放した件数 3件
その他 521件
勾留率(※2・3) 約99%

(※2)裁判官が勾留した件数/逮捕された件数

(※3)小数点第一位を四捨五入しています。

 

 

解説

「逮捕・勾留の状況」で示したとおり、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪で逮捕された場合は、極めて高い確率で勾留されているのが現状です。

そして、起訴された後の裁判では、単純施用(営利目的ではない施用)や所持の初犯だった場合は、執行猶予判決を得られる可能性が高いですが、前科があったり営利目的で所持・施用したりした場合には、実刑判決となる可能性が高くなります。

 

同法の故意

他の薬物犯罪(大麻取締法や覚醒剤取締法など)と同じく、麻薬取締法でも、過失で規制対象薬物(同法における「麻薬」など)を所持してしまった場合については処罰規定がありません。

そこで、麻薬取締法違反の罪が成立するには、「所持や施用等をした薬物が麻薬・向精神薬である」ことを認識している必要があります(:故意)。

 

もっとも、ここでいう「故意」は、その薬物が麻薬・向精神薬であると確定的にわかっていなくても、「麻薬などの身体に有害で違法な薬物かもしれない」という認識があれば、故意(未必の故意)が認められ得ます。

したがって、それを前提に故意の有無を検討する必要があります。

 

 

大麻取締法違反・麻薬取締法違反における弁護活動のポイント

捜査段階

大麻取締法・麻薬取締法を含め薬物事件では、逮捕後に勾留されることがほとんどです。

そして、共犯事件の場合等では勾留された後、接見禁止が付いてしまうこともあります。

 

接見禁止が付いた場合、ご家族でもご本人に面会することができません。

さらに、不起訴処分となることはすくなく、起訴された場合には、勾留期間が比較的長期にわたる可能性があります。そうすると、ご家族に加えて、お仕事や学校を含め、ご本人の社会生活に大きな影響が及びます。

接見禁止が付いた場合でも、弁護士であれば、身体を拘束されているご本人に面会することができます。

そこで、勾留決定を争ったり、勾留期間を短くするよう求めたり、起訴後は保釈をするよう求める弁護活動を行うことができます。

 

そして、否認事件の場合には、捜査段階で作成される供述調書・供述書において、ご本人が不利になるような内容が記載されないよう、注意する必要があります。

事件当時ご本人がさも麻薬や向精神薬だと認識していたかのような内容の調書がとられてしまうと、その後否定していても、故意があるとして起訴や有罪判決を受けることになりやすいからです。供述をしたり調書作成に応じるメリット・デメリットを考慮して、取調べに対するアドバイスをすることが重要です。

 

 

裁判段階

自白事件の場合には、執行猶予判決や減刑を目指して弁護活動を行うことになります。

そこで、本人が反省している状況に加えて、薬物を二度と使用・所持しないため適切な改善更生を行っていることを、裁判官に主張・立証することが必要です。

 

具体的には、本人が薬物への正しい理解を持って依存性を治療すること(通院やプログラムの参加)、事件以前の交流関係を断つこと、仕事・家庭といった生活環境の整備(就労や監督者の存在)が挙げられます。

 

また、二度と事件を起こさないためには、ご家族や周囲の方の協力を得ることが望ましいです。薬物事件の背景にある薬物依存は、ご本人一人だけの力では克服することが非常に困難だからです。

 

否認事件の場合には、「その薬物が麻薬・向精神薬であることを認識していなかった」として故意を争ったり、「自分は所持していない」などとして無罪を主張することが考えられます。

 

また、事件発覚の端緒である所持品検査等の違法性を主張し、そのような捜査活動から得られた証拠は証拠として用いてはならないとして、違法収集証拠排除法則のもと無罪を目指すことも考えられます。

 

 

おわりに

大麻・麻薬事件は、逮捕直後・勾留され捜査されている間・起訴され裁判になった段階と、事件を通して常に適切な弁護活動がポイントになります。

 

さらに、弁護活動にとどまらず、裁判後にご本人が二度と薬物事件を起こさないということも重要です。

弊所では、薬物依存症の方やそのご家族の方へ、薬物に頼らない生活を取り戻すお手伝いもさせていただきます。

 

また、大麻や麻薬事件は、近年、特に若年層の間での増加が問題となっています。

弊所は、成人の薬物事件はもちろんのこと、少年事件についても数多くご依頼を頂いています。

弁護士が少年事件の特徴を理解し、ひとりひとりの少年に寄り添って、丁寧な弁護活動をさせていただきます。

 

大麻取締法違反、麻薬取締法違反事件でお困りの方やご家族の方は、ぜひ弊所にご相談ください。

 

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