令和3年6月4日、金沢弁護士会主催のギャンブル依存症に関する勉強会に参加しました。

 

ギャンブル依存症とは、ギャンブルへの欲求をコントロールできなくなる病気です。しかし、依存症、特にギャンブル依存は、未だに「依存症になったのはだらしない性格だから」「やめられないのは本人の意思の問題」とされることが多く、問題の本質や具体的な再発防止策に目が向けられていないのが現状です。

 

ギャンブルは、それ自体は違法行為ではありません。しかし、ギャンブルに依存し、耽溺していくことで、ご本人の経済状況が悪化します。そして、生活のため、もしくはギャンブルを続けるための資金を得るために、窃盗や詐欺、強盗、殺人と言った行為に至ってしまう場合があります。平成30年頃、20代の青年が祖父を殺害し、家電等を奪い、売却の上、ギャンブルのために費消したという強盗殺人事件も、ご本人はギャンブル依存症に罹患していたとされています。

 

今回の勉強会では、昭和大学烏山病院の常岡敏明医師及び公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の代表 田中紀子氏より、ギャンブル依存症の医療的側面、治療や回復に向けて必要な活動について、それぞれご講演をいただきました。その後、神奈川県弁護士会所属の弁護士より、ギャンブル依存症に罹患した方の自己破産、刑事事件についての事例報告がありました。

 

常岡医師からは、依存症とは、欲求を自分でもコントロールできなくなる病的な状態であり、脳の行動制御を司る部分が破壊されることによって生じるものだというお話がありました。すなわち、脳の障害であり、あくまでも病気(疾患)だということです。 一方で、医師の視点で刑事裁判を見たとき、統合失調症といった他の精神障害や身体障害と比較して、この疾患としての側面が軽視されていたり、無視されているとすら思われる場面があるとの指摘がありました。

 

ギャンブル依存症は、ご本人であっても、病識が薄いことが多いです。ギャンブルを辞められない自分を意思が弱い、ダメな人間だと責め、一人で抱え込み、誰にも相談できないまま、刑事事件を起こしてしまうケースが散見されます。 しかし、ギャンブル依存症になることには、ご本人に責任はありません。少しでも早く依存症に罹患していることに気づき、繰り返さないための治療・対策を立てることが重要です。

事件に至ってしまった場合にも、同様です。事件の背景にギャンブル依存症の問題があった場合には、一刻も早く、治療につながることが必要になります。ギャンブルを繰り返してしまう心理的・環境的要因を探り、改善していくことで、ギャンブルの再発を防ぎ、具体的に、再犯防止をはかります。そしてそのうえで、ギャンブル依存症の事件に与えた影響と、再発防止策を主張立証することで、少しでもご本人に有利な処分を求めていくことになります。

 

今回の勉強会では、医師や、日々依存症の方々と接していらっしゃる支援者の方のお話を直接伺うことで、弁護士の立場からできる支援を改めて考える貴重な機会となりました。弁護士は、依存症の医学的な知識は当然医師に劣ります。しかし、依存症に悩む方やそのご家族からご相談をお受けしたき、その症状や機序(しくみ)を全く知らないようでは、適切な弁護活動ができないと考えています。

当事務所では、今後も、依存症を含め精神障害に関する知識・理解を深めるべく、研鑽してまいります。

 

 

弁護士法人ルミナス東京事務所

弁護士 大橋いく乃



刑事事件・少年事件の法律事務所
 弁護士法人ルミナス(東京新宿・埼玉大宮)