記事を執筆した弁護士
弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所
弁護士 大橋 いく乃
早稲田大学大学院法務研究科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、弁護士法人ルミナス法律事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局、治療的司法研究会事務局等を務める。無罪判決、再度の執行猶予判決等を獲得。精神障害を有する方の刑事弁護に注力しており、医療・福祉の専門家と連携した弁護活動に積極的に取り組んでいる。
障害があって苦しんでいる方、ご家族がいます。
障害の影響によって、社会生活の中で、ご本人とご家族の力だけでは乗り越えることが困難な問題が生じることがあります。
そのようなとき、周囲の理解や適切な支援を受けることができなければ、社会の中で孤立し、生きづらさを感じて、精神的にも、環境的にも追い込まれてしまいます。
たとえば。
まじめで、人に優しく、努力家な人ほど、鬱病を発症しやすいかもしれません。
鬱病が進行した結果、希死念慮(自殺願望)を生じて、無理心中を図り、殺人罪や殺人未遂罪に問われた方もいます。
犯罪とはまるで無縁の生活を送っていた人が、鬱病を発症し、善悪を判断する力や、自分の行動をコントロールする力を失った結果、正しく判断することも、思い止まることもできずに、万引きを繰り返してしまうこともあります。
発達障害を抱える方が、特定の心理的・環境的要因が生じた際に、衝動的に行動してしまうこともあるでしょう。
ご本人の責任ではない、障害の影響を受けて刑事事件を起こしてしまったとき、単に、してしまった行為に対する刑事責任を追及するだけでは、問題の根本的な解決にはなりません。
事件の背景に障害の影響があるのであれば、再犯を防止するためには、その方の抱える障害に応じた医療や福祉による専門的な支援が必要です。
弁護士は、法律の専門家であり、医療や福祉の専門家ではありません。刑事事件を多く担当すれば、必然的に、医療や福祉に関する知識は深まります。しかしそれはあくまでも素人の域を出ず、法律家が、医療や福祉の分野について、専門的な意見をなし得ないことには、自覚的であるべきです。
刑事裁判において、障害の有無やその影響の程度が問題となる場合には、医師の証人尋問を行い、精神医学的な意見を求めることになります。
もし、裁判官が、障害の有無やその影響の程度について、医師の意見をきかずに独善的な判断をしようとする場合には(残念ながら、そのようなケースも存在します)、その違法性について徹底的に争い、正しい審理と判断を求めます。
また、ご本人の障害特性を正しく理解した上で、事件に至ってしまった原因・背景を分析し、二度と再犯をすることなく生活するために望ましいと考えられる生活環境の整備、家族間の環境調整、必要な福祉的支援の内容について検討・構築し、実際の支援につなげる活動を実践するためには、福祉の専門家である社会福祉士による支援が必要です。
当事務所では、これまで、障害を抱えている方、ご家族の方からのご相談を多数お受けしてまいりました。
法律の専門家として、職業本来の使命である刑事弁護活動に全力を尽くすことはもちろん、障害を抱えて悩んでいる方、ご家族の皆様の痛みに寄り添い、医療や福祉の専門家と連携した弁護活動に努めております。
障害があることはご本人の責任ではありません。
弁護士法人ルミナス法律事務所