執筆者

弁護士法人ルミナス 

弁護士 田中 翔 が執筆しました。

違法収集排除法則について

違法な職務質問によって発見された薬物が、後の裁判で証拠から排除されることがあります。

 

警察官の違法な行為によって収集された証拠について、刑事訴訟法には明文の規定はありません。

しかし、最高裁判所の判決により、一定の場合には、違法に収集された証拠には証拠能力を認めないということが現在では確立されています。

最高裁昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁は、「証拠物の押収等の手続に憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである」としています。

 

つまり、刑事訴訟法は、捜索差押の手続を定めており、司法手続は適正に行われなければならないですが、そうした要請を無視した重大な違法があり、そうした違法が将来的に行われないためにその証拠を証拠から排除することが相当である場合には、証拠として排除するというものです。

 

こうしたルールは、違法収集排除法則と呼ばれており、違法な職務質問などによって発見された薬物の証拠能力が争われることがあります。

 

 

どのような場合に証拠排除が認められるか

この最高裁判所の判決にも書かれているとおり、証拠として排除されるためには「重大な」違法でなくてはならず、違法であれば直ちに排除が認められるわけではありません。

 

どのような場合に重大な違法であり、排除が相当とされるかは、個別の事件ごとに判断されるものであり、様々な事情が考慮されます。

 

職務質問の場合であれば、例えば、

  • 捜査官が対象者をその場に留め置いた時間
  • 捜査官が対象者の身体、持ち物、自動車などを令状なく捜索したか
  • 捜査官は対象者の同意を得ようとしているか
  • 対象者は捜査官の行為に同意しているか
  • 捜査官が対象者にどのような実力行使を行ったか
  • 職務質問中の対象者の態度
  • 捜査官は捜索差押えや逮捕手続などに事実経過について事実通りの報告書を作成しているか

などの着眼点があります。

 

対象者が同意していないのに捜査官が対象者を長時間留め置いたり、同意なく対象者の着衣を捜索したような場合には、重大な違法と判断されやすくなります。

また、違法な行為を行ったことを隠そうとして、捜査官が虚偽の捜査報告書を作成していた場合には、排除が相当だと判断されやすくなります。

 

各地の裁判所でも、様々なケースで証拠が排除が認められています。

 

 

どのように争うか

違法収集を争う場合、法廷で警察官の尋問を行うことになります。

そのためには、徹底した証拠開示が必要となります。

 

警察官は、職務質問や捜索差押えについて多くの捜査報告書や写真撮影報告書を作成しており、重要な手がかりとなることもあります。

当時の状況を明らかにするために、ドライブレコーダーや防犯カメラの動画などが重要な証拠となることがあります。

効果的な尋問を行うためには、そうした証拠をできる限り多く開示させ、その内容を検討することが必要です。

 

また、その前提として、弁護人は、違法な捜査を受けたご本人から徹底して当時の状況を聴取することが必要です。

違法収集を争う場合には、警察官などに対する反対尋問や違法な捜査を受けたご本人の被告人質問が重要になります。

裁判所に違法収集証拠排除を認めてもらうためには、高い証拠開示の技術、高い尋問技術が必要です。

違法な捜査が疑われるときは、当事務所にご相談ください。