記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 埼玉事務所 所長
弁護士 田中 翔

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、公設事務所での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所埼玉事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、埼玉弁護士会裁判員制度委員会委員、慶應義塾大学助教等を務めるほか、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師も多数務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決2件獲得。もし世界中が敵になっても、被疑者・被告人とされてしまった依頼者の味方として最後まで全力を尽くします。

被疑者・被告人の方から、取調べや裁判で反省していると言った方が有利な刑になるかという質問されることがあります。

 

もちろん、事実を認める事件であれば、裁判においては反省していることを示すことはより有利な刑を得るために必要だといえるでしょう。しかし、いくら取調べで反省をしていると言っても、有利な刑を得られることはありません。

一方で、裁判において「反省している」とただ言うだけでは、有利な量刑を得ることはできません。

 

反省していることをより効果的に主張することを考えるにあたっては、まず刑事裁判でどのように量刑を判断されているかを知る必要があります。

 

 

刑事裁判での量刑の判断方法

犯情と一般情状

刑事裁判での量刑は、「犯情」によって刑の大枠を決め、その後「一般情状」を考慮して刑を決めるとされています。

犯情とは、犯罪結果の重大さ、犯行をすると決めた意思決定をどの程度非難できるかなど、犯罪行為それ自体の重さです。

 

一般情状は、犯罪行為それ自体の重さ以外の全ての事情、例えば、情状証人がいるか、どのような生活をしていたか、反省しているかなどです。

 

つまり、刑事裁判では、犯罪行為それ自体の重さによって刑の大枠を決め(例えば、懲役2~4年など)、その後一般情状を考慮して最終的な刑を決めることになります(例えば、懲役2年~4年の範囲から、懲役2年と決める)。

 

刑法は、行為を処罰するとしており、また同じことをした人には同じ刑とすることが公平であることから、まずは犯罪行為に着目することとされています。

 

 

反省している事実はどのように位置づけられるか

それでは、反省は、刑を決めるにあたって、どのような位置づけとなるでしょうか。

先に少し書いてしまいましたが、刑は一般情状と位置づけられています。

つまり、犯情によって刑の大枠を決めた後の調整要素とされています。

 

そのため、反省をしているからと言って、それだけで直ちに大きく刑が軽くなったり、反省を示さず事実を争っているからといって、大きく刑が重くなったりはしないことになります。

 

犯罪行為自体が軽い場合には、争っているときでも執行猶予となったり軽い刑となりますし、一方で、犯罪行為自体が重いものである場合には、どれだけ反省していることを示しても執行猶予となったり刑がとても軽くなるということはありません。

 

 

反省は不要か

もっとも、事実を認めて刑を軽くしたい場合には、反省を示すことは必要です。

 

刑の大枠を犯罪行為自体の重さを決めるといっても、その後は反省しているかどうかで量刑の上げ下げがされることになります。また、執行猶予かどうかが微妙なケースでは、反省しているかどうかで決まる場合もあると言われます。

 

ただし、反省を示すためには、ただ反省していると言えばいいというものではありません。

有利な量刑を得るためには、反省していることを裏付ける具体的な事実を立証するべきです。

 

事件に至った原因を分析して、事件の原因となったことが解消されたことを示したり、二度と同様のことをしないための努力をしていることを示すことなどが考えられます。

 

例えば、借金が原因であれば、借金の返済ができたこと、薬物を使用してしまったのであれば、薬物依存に関する治療を行ったり薬物依存に関する書籍を読んで内省と理解を深めたことなどを立証していくべきです。これは、万引きや性犯罪でも全く同じことが言えます。具体的に、裁判までの間にどのような活動をしたかと言う点が重要になります。

 

単に公判で反省していると供述したり、反省文を書いたりするだけでは、有利な情状として考慮されることには限界があります。

 

有利な刑を獲得するためには、反省していると述べるだけではなく、反省を裏付ける事実を十分に立証していくことが必要になります。

それによって、反省していることが有利な情状として十分に斟酌されることが可能となります。

 

 

おわりに

このように、刑事裁判でより軽い刑を得るためには、単に反省していると述べるだけでは不十分です。反省を裏付ける事実を立証し、効果的に主張していく必要があります。

こうした主張や立証を効果的に行っていくためには、弁護人の技術が必要です。

 

事実を認めてより軽い刑にしたいとお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

 

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弁護士 田中 翔