執筆者

弁護士法人ルミナス法律事務所 

弁護士 田中 翔 が執筆しました。

目次

1. 持続化給付金の不正受給について
2. 持続化給付金の不正受給で逮捕はされるのか
持続化給付金の不正受給で逮捕されるか
逮捕・勾留された場合にどうしたらいいか
3. 持続化給付金の不正受給の量刑や弁護活動について
4.まとめ

 

 

持続化給付金の不正受給について

政府は令和2年から持続化給付金の申請を開始しました。

持続化給付金は、速やかに給付することを目的として、申請・審査が簡略なものとなっていたため、不正受給も多数発生していることがニュースなどでも報道されています。

すでに持続化給付金の申請は終了していますが、不正受給についての捜査や起訴は続いています。

持続化給付金の不正受給は、詐欺罪として捜査・起訴が行われており、すでに多くの判決も出ています。

持続化給付金の不正受給では、指示役、申請者など組織的に行われることが多く、それぞれの役割によっても逮捕の有無や量刑は異なる傾向があります。

 

 

持続化給付金の不正受給で逮捕はされるのか

持続化給付金の不正受給で逮捕されるか

持続化給付金は、刑法上の詐欺に当たります。

そのため、警察が捜査を開始した場合、逮捕・勾留される可能性もあります。

これまでの傾向をみると、持続化給付金の不正受給は、逮捕・勾留されて捜査が行われるケース、逮捕されずに在宅のまま捜査が行われるケースのいずれもあるようです。

逮捕・勾留を行うかは、個別的な事案によって異なるため、どのような場合であれば逮捕されるという一律の基準はありません。

一般に勾留は、罪を犯したと認めるに足りる相当な理由があることを前提に、

①住居不定

②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある

③逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある

のいずれかがあると判断された場合に行われます(刑事訴訟法60条)。

事件内容、事件での役割・立場,共犯者の有無、事件関係者との関係性、同居する家族等の有無、職業の有無など、前科前歴の有無など、様々な考慮要素を総合して判断されます。

そのため、事件内容が共通する共犯者であっても、逮捕・勾留されない人とされる人が分かれることもあります。

持続化給付金の不正受給においても、これと同じ枠組みで勾留の有無が判断されます。

あくまでも一般論ですが、持続化給付金の不正受給では、指示役など上位者とみられる人物は逮捕・勾留されやすく、申請者などは逮捕・勾留されにくい傾向があります。

もっとも、何件の不正受給に関係したかも逮捕・勾留の判断には大きく影響してくるため、多数の不正受給に関与した場合には、指示役などでない場合でも逮捕・勾留されやすいといえます。

また、多数の不正受給に関与した場合は、再逮捕が続き、勾留期間が長引く可能性もあります。

 

逮捕・勾留された場合にどうしたらいいか

持続化給付金の不正受給で逮捕・勾留された場合であっても、早期の身体拘束からの解放に向けて活動すべきであることは変わりがありません。

  • 家族等の身柄引受書等を作成し、検察官に対し勾留請求をしないよう働きかける
  • 勾留請求がされた場合、裁判官に対し勾留請求却下の決定をするよう働きかける
  • 勾留決定がされた場合、準抗告申立てを行う

などが考えられます。

すみやかに被害弁償を行い、その結果を資料として提出することなども有効です。

また、取調べ対応も重要です。

逮捕・勾留された場合、警察官と検察官による取調べが行われます。

取調べで供述することは、その内容が裁判で不利な証拠として残ってしまうなど大きなリスクがあるため、取調べで黙秘するなども有効な対応となり得ます。

逮捕された場合、できる限り早く弁護士と接見して、取調べ対応について助言を受けることが重要です。

 

 

持続化給付金の不正受給の量刑や弁護活動について

詐欺は、刑法上、10年以下の懲役が科されることになっており(刑法246条)、重い法定刑となっています。

起訴されてしまい、罪を認める場合には、できるだけ有利な判決を得られるようにしなければなりません。

持続化給付金では、1件で100万の給付金となる制度のため、件数が多くなると被害額も大きくなり、量刑が重くなりやすいという状況があります。

もっとも、件数と被害額のみで量刑が決まるわけではないため、できる限り有利な判決を得られるような主張・立証を行うことで、件数が多く被害額が多額となった場合でも、執行猶予判決などを得られる可能性があります。

また、これまでの持続化給付金の不正受給に関する量刑をみると、指示役など上位の立場の場合は実刑などの重い刑になりやすく、申請者など比較的下位とみられる立場の場合は執行猶予になりやすいという傾向もあるように思われます。

こうしたことを踏まえて、公判では、適切な主張・立証を行っていることが必要です。

 

まず、役割・立場についてです。

持続化給付金の不正受給は、多数の関係者がいて一定の組織性を持つことが少なくありません。

その中で、役割・立場がどのようなものであるかも、重要な量刑事情となります。

当然ながら、犯行グループの中で、上位の立場と評価されれば、重い量刑になりやすく、下位の立場と評価されれば、軽い量刑になりやすいといえます。

この点については、証拠を精査し、場合によっては関係者の証人尋問を行うなどして、適切な主張・立証をする必要があります。

 

また、被害弁償がされているかも重要な量刑事情となります。

持続化給付金の不正受給では、受給した金額に延滞金などが加算されて請求されることが原則です。

持続化給付金で行うべき被害弁償は、国に対して給付金を返還する制度が定められている点で、他の詐欺とは異なっています。

申請者の場合、受給した金額を全額返還したこと、延滞金を含めて返還したことなどを証明する資料を証拠として提出するべきです。

指示役や申請の手伝いをしたとされる場合、国に対して受給した給付金を直接返還することは制度上できないことになっています。給付金の返還ができるのは、申請名義人のみとなっているためです。

そのため、指示役等、自身が直接申請者となっていない場合は、申請名義人に対して弁護人を通じて連絡を取り、申請者に対して一定の金銭を支払って被害弁償をすることなどが考えられます。このような場合も、被害弁償を行ったものと評価され、有利な事情と評価されます。

なお、その際には、申請者から、申請者が給付金の返還を行ったことを証明する書類(領収書等)を入手するよう交渉し、入手できた場合には、それも証拠として提出することなども考えられます。

 

その他、他の事件と同様、情状証人に出廷してもらったり、今度の就労先を確保してあることを立証するなどして、再犯可能性がないことを明らかにする立証も有効です。

 

 

まとめ

持続化給付金の不正受給は、ニュースでも報道されるなどしており、警察・検察も厳しく捜査を行ってきています。

しかし、制度自体が最近のものであったこともあり、量刑の傾向もまだはっきりと定まってはいないようです。

統計などがあるわけではありませんが、オレオレ詐欺などに比べると、比較的量刑は軽く、執行猶予になる事件も少なくないような印象があります。

これには、被害者が国であり、オレオレ詐欺のように高齢者を騙すものではないので悪質性がオレオレ詐欺ほどは高くないと思われること、すでに持続化給付金の申請は終了しており、今後同様の犯罪が繰り返される可能性は高くなく、あえて重く処罰するまでの必要性まではないことなどの理由があるように思います。

もっとも、被害額は少なくとも100万円となることなどから、簡単に執行猶予になる類型の刑事事件ではないことは明らかです。

執行猶予などを得るためには、公判で適切な主張・立証を行っていくことが必要です。

 

当事務所は、これまで持続化給付金の不正受給の弁護活動を多数行い、被害金額が多額の事案で執行猶予判決を得るなどの成果をあげています。

持続化給付金の不正受給に関わってしまい捜査を受けた方や、持続化給付金の不正受給で起訴されてしまった方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所 弁護士 田中翔