執筆者

弁護士法人ルミナス 

弁護士 神林 美樹 が執筆しました。

障害等のために福祉的支援を必要とされている方の刑事裁判においては、情状弁護活動の一つとして、社会福祉士が作成した更生支援計画書を提出することがあります。

 

更生支援計画書は、ご本人の障害や特性を踏まえて、成育歴や家族歴、病歴、生活状況等について、詳細なアセスメントを行った上で、作成されるものです。

 

そこには、専門的な知見がたくさん入っていますし、ご本人の障害や特性を踏まえて、今後のこと(必要となる治療や支援、処遇の在り方など)を色々考えながら、まとめられています。

 

このようにして作成された更生支援計画は、刑事裁判では、再犯防止に向けた更生環境が整備されているかどうか、再犯可能性が認められるどうかということを判断する際の重要な資料となります。

 

近年では、刑事裁判において、更生支援計画書が提出されることが増えてきました。

 

私自身、刑事裁判で更生支援計画書を提出したことは、何度もあります。

 

過去の量刑傾向からすれば実刑の可能性がきわめて高いケースにおいて、ご本人の特性を踏まえた更生支援計画書が作成され、更生に向けた支援環境が整っていることなどが有利に評価された結果、執行猶予判決を獲得したこともあります。

 

しかし、更生支援計画書は、決して刑事裁判が終了するまでの書類ではありません。

 

むしろ、刑事裁判終了後に、ご本人が二度と再犯することなく生活していくうえで必要な治療や支援を受けられるようにということを考えて作成されるものです。

 

ですから、刑事裁判終了後に、更生支援計画書がしっかりと引き継がれるということは、非常に重要です。

 

刑事裁判の結果、執行猶予判決となった場合には、裁判中から支援いただいている社会福祉士の先生にご助力いただきながら、更生支援計画書の引き継ぎ、実行がスムーズに行われることが多いといえます。

 

他方、実刑判決が確定した場合には、一次的には、刑事施設への引き継ぎが求められることになります。

 

しかし、実際には、この引き継ぎが十分に行われておらず、せっかく更生支援計画書が作成されているのに、刑事施設への引き継ぎがなされていないことが少なくないという指摘があります。

 

これは本当に勿体ないことですし、福祉的支援の必要性があると考えて、社会福祉士に更生支援計画書の作成を依頼した弁護人には、たくさんの専門的知見や福祉的支援策がつまった更生支援計画書を処遇の現場に引き継ぐ努力が求められるといえます。

 

この点について、東京では、法務省矯正局、日本弁護士連合会及び東京三弁護士会等の協議に基づいて、法務省矯正局より「刑事施設における更生支援計画書の活用に関する試行について」という通知が発出されており、同通知に基づき、弁護士から東京拘置所・立川拘置所等へ更生支援計画書を引き継ぐ運用が認められています。

 

具体的には、

  • 更生支援計画書
  • 所定の添書、ご本人の同意書、関係連絡先一覧表
  • 弁護人選任届又は国選弁護人選任書の写し

 

を受付に直接持参するか、又は、郵送により提出して引き継ぎをします。

 

弁護人にとって、決して大きな負担となるものではありません。

 

このように提出された更生支援計画書は、その後、ご本人が東京拘置所・立川拘置所等から他の刑事施設に移送される際には、一緒に引き継がれることになります。

 

そして、拘置所長等又は移送先施設の長は、「対象者の改善更生及び円滑な社会復帰を図るため、刑執行開始時調査その他の処遇調査、社会復帰支援等を行うに当たり、必要に応じて、更生支援計画書一式を参考資料として活用すること」とされています(同通知別紙要領)。

 

このように、福祉の専門家である社会福祉士が時間をかけて作成した更生支援計画書は、処遇の場面、社会復帰支援等の場面においても、重要な資料となります。

 

福祉的支援を必要とされているご本人に対して適切な処遇と支援が行われるように、更生支援計画書の引き継ぎを忘れないようにしましょう。