執筆者

弁護士法人ルミナス 
弁護士 中原 潤一 が執筆しました。

目次

1.はじめに
2. 懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に統一(ポイント1)
3. 侮辱罪の法定刑が引き上げ(ポイント2)
4. 再度の執行猶予を付すことが可能な年数が、1年から2年に引き上げ(ポイント3)
5. 保護観察中でも再度の執行猶予を付すことが可能に(ポイント4)
6.まとめ

 

 

はじめに

先日、国会で刑法改正案が可決されました。

この刑法改正案は2022年6月17日に公布され、3年以内に施行されることになっています。

そこで、このコラムでは、この刑法改正のポイントについて、あまり報道されていない点を中心にお伝えしたいと思います。

 

 

懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に統一(ポイント1)

こちらはよく報道されているポイントですが、懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に統一されました。こちらは、実刑判決を受けて確定した後の処遇のお話ですので、刑事弁護活動に何か変更を求められる点はありません。

 

 

侮辱罪の法定刑が引き上げ(ポイント2)

こちらもよく報道されているポイントですが、侮辱罪の法定刑が引き上げられ、「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」となりました。これまでは侮辱罪はほぼ処罰されなかったに等しいと言っても過言ではありませんでしたが、この改正により最大で実刑判決を受ける可能性が出ることになりました。SNS上の誹謗中傷問題で議論が加速し今回の改正に至りましたが、一方で、この法定刑引き上げは、表現の自由との関係で重大な問題を孕み、特に国家権力によって濫用されないように注視しなければなりません。

 

 

再度の執行猶予を付すことが可能な年数が、1年から2年に引き上げ(ポイント3)

あまり報道されていないポイントですが、我々にとって非常に重要なポイントが、再度の執行猶予を付すことが可能な年数が、1年から2年に引き上げられたという点です。

執行猶予中に、再度犯罪を犯してしまった場合、もう一度執行猶予をつけることができるというのが、この「再度の執行猶予」という制度です。これまでは、執行猶予中に犯してしまった犯罪に対し、「一年以下の懲役又は禁錮」の判決が言い渡された場合にのみ、再度の執行猶予をつけることができるとされていました。つまり、例えば、執行猶予中に窃盗を行い、それに対して1年6月の判決を受けた場合、再度の執行猶予はつけられませんでした。ですので、この場合は必ず実刑になっていました。ですが、今度の改正でこの「一年以下の懲役又は禁錮」が「二年以下の拘禁刑」に改正されましたので、先程の1年6月の判決を受けたとしても、再度の執行猶予を付すことができることになったのです。これは、再度の執行猶予を目指す我々にとっては可能性が広がる非常に重要な改正ポイントであり、今後、再度の執行猶予を求めるための活動が更に重要になってくることを示唆していると言えます。

 

 

保護観察中でも再度の執行猶予を付すことが可能に(ポイント4)

また、こちらもあまり報道されていないポイントですが、我々にとって非常に重要なポイントが、保護観察中でも再度の執行猶予を付すことができるようになったという点です。

執行猶予判決を言い渡す際に、保護観察も付ける運用が、裁判員裁判開始後かなり広まってきました。ですが、現在は、法律上、保護観察中に再度犯罪を犯してしまった場合、再度の執行猶予を付すことができませんでした。特にクレプトマニアなどの依存症を抱える方には、とても深刻な問題です。保護観察を付されると、治療中に再犯をしてしまったらその治療を中断して服役しなければならなくなり、治療の効果が減退してしまうことになるからです。しかし、今回の改正により、保護観察中に再度犯罪を犯したとしても再度の執行猶予を付すことができるようになりました。これにより、上記の保護観察中のクレプトマニアの方の再犯も、再度の執行猶予を目指すことが可能になりました。

 

 

まとめ

事前の報道は拘禁刑の新設や侮辱罪の法定刑の引き上げが中心でしたが、実は、我々にとってはあまり報道されなかった再度の執行猶予の拡充という点が非常に重要なポイントだったりします。今後は、再度の執行猶予を目指すための弁護活動が更に広がり、それと同時により専門性が強くなると思われます。弁護士法人ルミナスでは、これまで何件もの再度の執行猶予判決を獲得して参りました。今後も、刑法改正を見据え、更なる弁護活動の充実を目指して参ります。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所 弁護士 中原潤一