執筆者

弁護士法人ルミナス法律事務所 
弁護士 田中 翔 が執筆しました。

新型コロナウィルスの流行による個人事業主の収入低下への対応として、政府は、2020年6月から持続化給付金の制度を導入し、一定の条件を満たした個人事業主に対し、最大100万円を給付していました。

持続化給付金の申請はすでに終了していますが、個人事業主でない人が個人事業主と偽って持続化給付金を受け取るという持続化給付金の不正受給が以前より問題となっており、すでに詐欺罪により有罪判決を受けたケースも多数報道されているところです。

 

持続化給付金の不正受給を行う場合には、1人で不正受給を行うパターン、組織的に不正受給を行うパターンがあります。

1人で不正受給を行うパターンであれば、持続化給付金の取扱部署である中小企業庁に対して返金手続を行えば、立件されずに終わることが多いようです。

他方、組織的に不正受給を行い、それに関与した場合は、警察が詐欺として立件して、逮捕されるケースもあります。そのため、刑事事件としての持続化給付金の不正受給をみた場合、組織的に不正受給を行ったケースが大きな問題となってきます。

 

 

役割から見た刑事処分・量刑の傾向

組織的に不正受給を行った場合でも、役割・立場によって刑事処分が異なる傾向があります。

 

まず、組織を作り不正受給の仕組みを作り出した立場(いわゆる指示役、首謀者)である場合には、警察も積極的に立件し、逮捕となる事案がほとんどのようです。この場合には、実刑となる可能性が大きくなります。

 

次に、指示役や首謀者ではないものの、申請者を勧誘して組織に紹介する役割のパターンもあります。この場合は、逮捕される事案が多いですが、件数や具体的な役割によって異なるものの、執行猶予になる可能性も低くはないようです。

執行猶予やより軽い量刑を得るためには、どのような情状弁護を行うかが非常に重要となってきます。

自身の得た利益分やそれを超える金額を申請者に支払うなどして被害弁償を行うことが非常に重要となってきます。なお、持続化給付金の返金は、申請者しか行えないため、申請者でないときには、申請者に相当額を支払い、申請者に国に返金手続をしてもらって、間接的な被害弁償を行うことになります。

 

最後に、組織から指示を受けた上で、自身が申請者になったパターンです。この場合には、逮捕されることは少なく、返金手続を行えば執行猶予となることが多いようです。

 

 

紹介役等であっても、より軽い刑事処分を狙えることもある

上で書いた傾向は、あくまでも全体的な傾向に過ぎません。個々の事件によって事情が異なるため、全ての事件に当てはまることはありません。

当事務所で取り扱った事案の中でも、複数人の申請者を紹介した立場であったものの、有利な事情を立証していったことで、不起訴処分となった事例もあります。

オレオレ詐欺などと異なり、持続化給付金の不正受給は、制度の性質上、今後繰り返しの再犯となることは考え難く、重く処罰しなければならない理由は必ずしも大きいものではありません。また、被害額も1件で100万円に限定され、被害者が国であるため、高齢者が被害者になる場合と比べて悪質性の程度にも限界があるものとも考えられます。

このようなことから、裁判所や検察庁も、必ず重く処罰しなければならないという姿勢までは取っていないように思われます。

そのため、事件の具体的内容や弁護活動次第では、不起訴処分や執行猶予判決を目指すことも可能だといえるでしょう。

持続化給付金の不正受給をしてしまった方は、可能な限り早く弁護士に相談することが、少しでも有利な処分を得るために重要です。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所 弁護士 田中翔