記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 横浜事務所
弁護士 南里 俊毅

上智大学法科大学院入学後、司法試験予備試験・司法試験合格。最高裁判所司法研修所修了後に、弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。神奈川県弁護士会刑事センター運営委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局等を務める。逮捕・勾留からの早期釈放、示談交渉、冤罪弁護、公判弁護活動、裁判員裁判等、あらゆる刑事事件・少年事件に積極的に取り組んでいる。

目次

1.少年事件での取調べ
2.少年事件での取調べ対応
3.少年は黙秘できない?
4. 少年は「取調べ」で反省するべきか
5. 少年の反省を適切に伝えるために

 

 

少年事件での取調べ

少年も、被疑者として捜査を受けている段階では、成人の被疑者と同様に取調べを受けることになります。しかし、少年事件の場合は、本人の年齢や刑事裁判との違い等からしても、取調べに適切に対応するために、とくに弁護士からの助言が必要だといえます。

 

取調べは、密室で行われ、(当然成人である)警察官等によって行われます。とくに少年は、迎合的な傾向があり、取調官の発言や求めていることに応じる傾向があると言われることもあります。自分の意図と異なる証拠が作成されてしまうなどの危険性が高いといえます。

 

 

少年事件での取調べ対応

少年の場合も、成人の場合と同様に、取調べにおいて何も話をしない、黙秘をするという対応が有力な選択肢となります。

 

当然ですが、取調べで警察官や検察官に供述するかということと、家庭裁判所調査官に対して供述するか・審判で裁判官に対して供述するかということとは、別の問題です。警察官や検察官に対しては供述しない、黙秘をするという対応をした場合であっても、調査官や裁判官に対しては供述をするという場合もあります(むしろこのようなケースが多いと考えられます)。

 

また、少年審判と刑事裁判とでは、伝聞法則と呼ばれるものが適用されないなど、大きな違いがあります。

具体的な違いとしては、少年審判の場合、捜査機関が作成した供述調書に署名指印しなかったとしても記録に綴られますし、少年の供述に関して警察官らが捜査報告書を作成すれば、これも記録に綴られます。その結果、これらを裁判官等がみることができます。刑事裁判においては、これらの証拠は原則として、そのまま法廷に出されることはありません。

もっとも、少年が刑事裁判を受けるということもあります。いわゆる逆送がされた場合です。逆送とは、家庭裁判所が事件を検察官に送致することです(逆送についてはこちらも参照)。逆送がされれば、審判での供述を記録した書面が刑事裁判において用いられる可能性があります。このような逆送の可能性も考えて、供述するか否かを決める必要があります。

 

取調べへの対応や供述の方針を決定するためには、それぞれの選択のリスクやメリット、家庭裁判所から検察官に送致される(逆送)の可能性などを考慮する必要があります。これを踏まえて、取調べで黙秘するべきか、調査官や裁判官に対しても黙秘をするべきか、などを検討する必要があります。

 

 

少年は黙秘できない?

弁護士のなかには、少年は黙秘することができないと考え、少年に対して、黙秘の助言をしないという方もいるようです。

もちろん、本人の特性などから黙秘が難しいことはあります。しかし、これは少年に特有のことではありません。成人であっても同じです。少年だから、黙秘ができないというわけではありません。

 

当事務所がご依頼を受けたケースのなかには、少年ご本人に会いに行ったところ、実際には犯罪に関与していなかったケースや、関与はしていたものの犯罪の成立には疑いがあるケースもありました。このようなケースでは、収集されている証拠を想定するなどして、供述した場合のリスクを慎重に検討する必要があります。そして、検討の結果、黙秘の助言が最適と判断し、実際に少年が黙秘をした結果、嫌疑なし又は嫌疑不十分により、検察官が家庭裁判所に送致をしないという結果を得られることもあります。

このように、少年だからといって黙秘ができないというわけではありません。選択肢にないと決めつけるべきではありません。家庭裁判所に送致されなければ、少年はそれ以上事件のことを追及されたり、家庭裁判所に行って説明をするということがなくなります。

 

 

 

 

少年は「取調べ」で反省するべきか

しかし、少年が実際に非行をしてしまっているというケースも多いでしょう。その際に、本当はやっているのに取調べで話をしないことは、反省していないのではないか、と思う方もいるかもしれません。

 

取調べにおいて黙秘をすることは、反省していないということなのでしょうか。そのように評価することは誤りです。単に、憲法や子どもの権利条約で黙秘権が保障されているという理由だけではありません。そもそも、取調べは反省をする場ではありません。非行事実(犯罪事実)について、捜査を受ける場です。少年を取り調べるのは、被害者でも家族でも裁判官でもありません。そこでの供述を証拠として、非行事実の存在などを立証しようとしている警察官らが取調べを行います。取調べは反省の場ではありません。

 

少年の反省を適切に伝えるために

少年の反省が不要というわけではありません。当然、非行をしてしまった少年が反省することには意味があります。反省を深め、非行の原因を把握し、それを解消していくことは、極めて重要な活動です。我々弁護士も、接見の際の会話や参考になる資料の差し入れなどを通じて、少年が考えを深めていけるよう手助けをしていくことを行っていますし、これらの活動は重要だと考えています。少年の反省の態度については、弁護士が裏付ける資料を作成収集し、調査官や裁判官に提出したり、少年から反省の気持ちを家庭裁判所調査官や裁判官に直接伝えてもらうことも多いです。

 

もちろん、取調べで供述をしてもらうケースもあります。しかし、反省のためだけで、取調べで供述する必要はありません。取調べで反省するということは、刑事訴訟法も少年法も求めていません。むしろ、取調べで反省のために供述することは前述のリスクが伴います。

 

当事務所がご依頼を受けるケースでも、ご本人が少年の場合に取調べでの対応をどうするか、悩ましいケースは多いです。あらゆる事情を考慮し、一番リスクが小さい選択や望ましい選択をするためにも、ご本人から入念に話を聞きくことが不可欠です。ご相談を受けたら、直ちに弁護士がお子さんの接見に向かうなどして、ご本人からお話を伺い、取調べでの対応を検討・助言してまいります。

 

適切な対応を選択・助言するためには、経験を積んでいるだけでは足りません。一番リスクの小さい対応は何か、最も適切な対応は何か、見極めるためには、知識や技術が必要です。

当事務所に所属する弁護士は、経験だけでなく、日々知識を学び、技術を磨いています。お子さんが逮捕されてしまった場合や、警察から連絡を受け取調べを受けることになった場合には、是非一度ご相談ください。

 

 

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弁護士 南里俊毅