記事を執筆した弁護士
弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所 所長
弁護士 神林 美樹
慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、都内の法律事務所・東証一部上場企業での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員部会委員等を務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決4件獲得。また、障害を有する方の弁護活動に力を入れており、日弁連責任能力PT副座長、司法精神医学会委員等を務めている。
目次
1.性犯罪規定改正の動向 |
2.性犯罪規定改正の経緯 平成29年の刑法改正 平成29年改正法附則第9条に基づく検討 |
性犯罪規定改正の動向
現在、性犯罪に関する規定の改正が進められています。
今回の改正は、平成29年の刑法改正(刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)平成29年6月23日交付、同年7月13日施行)に次ぐ、性犯罪規定に関する大幅な改正となる見込みです。
性犯罪に関する今後の実務にも影響が生じますので、刑事事件に携わる全ての弁護士がその内容を正しく理解する必要があります。
また、私たち実務家は、最終的な改正法規定の内容だけでなく、改正に至る経緯や、問題の所在、性犯罪規定をめぐる最新の議論状況についても、理解することが重要です。
本改正に関する議論を行ってきた、法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会の議事録等は、法務省のホームページ上に公開されています。
当事務所では、性犯罪弁護の一翼を担う事務所として、法制審議会での議論状況等を理解し、今後の国会での審議状況等についても注視しながら、性犯罪弁護の在り方について研鑽を積んでまいります。
性犯罪規定改正の経緯
平成29年の刑法改正
平成29年6月23日に「刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)」が成立し(同年7月13日施行)、主として以下のような改正が行われました。
①強姦罪・準強姦罪の見直し
- 罪名の変更:「強姦罪」から「強制性交等罪」、「準強姦罪」から「準強制性交等罪」へ
- 対象行為の拡大:「姦淫」から「性交等(性交、肛門性交又は口腔性交)」へ
②法定刑の下限の引き上げ
- 強制性交等罪の法定刑の下限:「3年」から「5年」へ
- 強制性交等致死傷罪の法定刑の下限:「5年」から「6年」へ
③監護者わいせつ罪・監護者性交等罪の新設
④強姦罪等の非親告罪化
同法附則第6条は、以下のように規定し、施行後3年を目途に、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとしていました。
「第9条 政府は、この法律の施行後3年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」
平成29年改正法附則第9条に基づく検討
平成29年改正法附則第9条に基づいて、法務省は、平成30年4月から「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」を開催し(全14回)、令和2年3月に、「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ取りまとめ報告書」を公表しました。
その後、同年6月から「性犯罪に関する刑事法検討会」を開催し(全16回)、令和3年5月に、「『性犯罪に関する刑事法検討会』取りまとめ報告書」を公表しました。
そして、同年10月から「法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会」を開催し(全14回)、令和5年2月3日の第14回会議において「要綱(骨子)案」が可決されました。
その後、同年3月14日に、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に罹る電磁的記録の消去等に関する法律案」が閣議決定され、国会に提出されています。
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