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弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所 所長
弁護士 神林 美樹
慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、都内の法律事務所・東証一部上場企業での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員部会委員等を務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決4件獲得。また、障害を有する方の弁護活動に力を入れており、日弁連責任能力PT副座長、司法精神医学会委員等を務めている。
目次
刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました |
公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設 保釈・勾留執行停止をされた被告人の公判期日への不出頭罪 保釈・勾留執行停止をされた被告人の制限住居離脱罪 保釈・勾留執行停止の取消し後の被告人の出頭命令違反の罪 勾留執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪 刑の執行のための呼出しを受けた者の不出頭罪 |
施行日 |
終わりに |
刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました
令和5年5月10日に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)が成立し、同月17日に公布されました。
本改正では、保釈等に関する重要な改正が行われています。
保釈等に関する改正点を中心に、刑事弁護活動を行う上での本改正の重要なポイントについて、5回にわけて、弁護士が解説します。
今回は、「公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設」について、説明します。
公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設
本改正によって、公判期日への出頭等を確保するために、以下の罰則が新設されました。
- 保釈・勾留執行停止をされた被告人の公判期日への不出頭罪
- 保釈・勾留執行停止をされた被告人の制限住居離脱罪
- 保釈・勾留執行停止の取消し後の被告人の出頭命令違反の罪
- 勾留執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪
- 刑の執行のための呼出しを受けた者の不出頭罪
以下、それぞれの具体的な内容について、紹介します。
なお、法定刑は、いずれも「2年以下の拘禁刑」となっています。
保釈・勾留執行停止をされた被告人の公判期日への不出頭罪
⑴ 条文
刑事訴訟法278条の2
⑵ 対象行為
保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、召喚を受け正当な理由がなく公判期日に出頭しないとき
⑶ 法定刑
2年以下の拘禁刑
保釈・勾留執行停止をされた被告人の制限住居離脱罪
⑴ 条文
刑事訴訟法95条の3
⑵ 対象行為
①裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないとき
②上記の被告人が、裁判所の許可を受けて上記の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないとき
⑶ 法定刑
2年以下の拘禁刑
保釈・勾留執行停止の取消し後の被告人の出頭命令違反の罪
⑴ 条文
刑事訴訟法98条の3
⑵ 対象行為
保釈又は勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被告人が、正当な理由がなく、指定された日時及び場所に出頭しないとき
⑶ 法定刑
2年以下の拘禁刑
勾留執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪
⑴ 条文
刑事訴訟法95条の2
⑵ 対象行為
期間を指定されて勾留の執行停止をされた被告人が、正当な理由がなく、当該期間の終期として指定された日時に、出頭すべき場所として指定された場所に出頭しないとき
⑶ 法定刑
2年以下の拘禁刑
刑の執行のための呼出しを受けた者の不出頭罪
⑴ 条文
刑事訴訟法484条の2
⑵ 対象行為
484条前段の規定による呼出し(刑の執行のための呼出し)を受けた者が、正当な理由がなく、指摘された日時及び場所に出頭しないとき
⑶ 法定刑
2年以下の拘禁刑
施行日
上記改正については、令和5年11月15日より施行されています。
終わりに
本改正は、「法制審議会-刑事法(逃亡防止関係)部会」(令和2年6月~・全14回)での議論を経て成立しましたが、弁護人として留意すべき点が多く含まれています。
当事務所では、改正法の内容だけでなく、改正の経緯や、勾留・保釈の実務的な運用に関する問題の所在についても正しく理解し、依頼者を護るために、改正法下における最善の弁護活動を尽くしてまいります。
保釈請求に関しては、当事務所の代表弁護士である中原潤一が執筆した共著「事例から掴む 保釈請求を通す技術」(第一法規、2021年)もご参照いただければ幸いです。
ご家族や大切な方が逮捕されてしまった方、逮捕・勾留からの釈放、保釈に関するご相談は、当事務所までご相談ください。
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