記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 横浜事務所
弁護士 南里 俊毅

上智大学法科大学院入学後、司法試験予備試験・司法試験合格。最高裁判所司法研修所修了後に、弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。神奈川県弁護士会刑事センター運営委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局等を務める。逮捕・勾留からの早期釈放、示談交渉、冤罪弁護、公判弁護活動、裁判員裁判等、あらゆる刑事事件・少年事件に積極的に取り組んでいる。

 

目次

1.刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました
2.逃走罪の主体の拡張及び法定刑の引上げ
3.加重逃走罪の主体の拡張
4.刑の時効の停止に関する規定の整備
5.施行日
6.終わりに

 

 

刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました

令和5年5月10日に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)が成立し、同月17日に公布されました。

 

本改正では、保釈等に関する重要な改正が行われています。

 

保釈等に関する改正点を中心に、刑事弁護活動を行う上での本改正の重要なポイントについて、5回にわけて、弁護士が解説します。

 

今回は、保釈に直接関わる規程ではありませんが、「逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等・刑の時効の停止に関する規定の整備」に関する刑法の改正について、説明します。

 

 

逃走罪の主体の拡張及び法定刑の引上げ

本改正によって、単純逃走罪の主体が拡張され、法定刑が引き上げられることとなりました。

 

⑴ 条文

刑法97条

 

⑵ 主体

(改正前)裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者

(改正後)法令により拘禁された者

 

⑶ 法定刑

(改正前)1年以下の懲役

(改正後)3年以下の懲役

 

上記のように、単純逃走罪の主体は、「法令により拘禁された者」に改正されました。改正後は、例えば、逮捕された者や拘引状の執行を受けた証人等についても、単純逃走罪の主体に含まれることとなります。

 

 

加重逃走罪の主体の拡張

そして、97条の改正に伴い、加重逃走罪の主体も拡張されています。

 

⑴ 条文

刑法98条

 

⑵ 主体

(改正前)97条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者

(改正後)97条に規定する者(=法令により拘禁された者)

 

⑶ 法定刑

3月以上5年以下の懲役

 

 

刑の時効の停止に関する規定の整備

また、刑の時効の停止に関する規定(刑法33条2項)が新設されました。

本規定により、刑の言渡しを受けた者が国外にいる場合には、その国外にいる期間は、刑の時効が進行しないこととなります。

 

刑法三十三条 (略)

2 拘禁刑、罰金、拘留及科料の時効は、刑の言渡しを受けた者が国外にいる場合には、その国外にいる期間は、進行しない。

 

 

施行日

単純逃走罪の主体の拡張等・加重逃走罪の主体の拡張についての改正(刑法97・98条)は、令和5年6月6日より施行されています。

 

刑の時効の停止に関する規定(刑法33条2項)は、公布日である令和5年5月17日より即日施行されています。

 

 

終わりに

本改正は、「法制審議会-刑事法(逃亡防止関係)部会」(令和2年6月~・全14回)での議論を経て成立しましたが、弁護人として留意すべき点が含まれています。例えば、単純逃走罪の主体の範囲が拡張されたことによって、従来は単純逃走罪が成立しなかったような事案でも、これが成立し得ることになります。

 

当事務所では、改正法の内容だけでなく、改正の経緯や、実務的な運用に関する問題の所在についても正しく理解し、依頼者を護るために、改正法下における最善の弁護活動を尽くしてまいります。

 

保釈請求に関しては、当事務所の代表弁護士である中原潤一が執筆した共著「事例から掴む 保釈請求を通す技術」(第一法規、2021年)もご参照いただければ幸いです。

 

逃走罪で疑いをかけられている方だけでなく、ご家族や大切な方が逮捕されてしまった方、逮捕・勾留からの釈放、保釈に関するご相談は、当事務所までご相談ください。