被害者の痛みのわかる、弁護人になるために・・・

コラム

2017.09.11

 ある被害者の方から、こんな言葉をかけてもらったことがありました。

 

 「被害者が、辛い気持ち、苦しい気持ちを、加害者に真正面からぶつけることができるのは、法廷に、加害者をまもる弁護人がいるからです。加害者が法廷でひとりぼっちで、誰も味方がいなかったら、私は、この苦しみを、ぶつけることができなかったかもしれません。」

 

 この言葉を聞いたとき、私は、刑事弁護人の役割の大切さを再認識しました。

 被害者の方は、事件によって、大きな心の傷を負っています。その苦しい気持ちを、家族にも、友達にも、誰にも「すべてをぶつけること」はできずにいます。捜査してくれる警察官には、相談することはできても、怒りをぶつけることはできないでしょう。では、その気持ちを誰にぶつけることができるのでしょうか?被害者の方にとって、気持ちをストレートにぶつけることができる相手、それが、加害者の弁護人なのだと思います。

 

 刑事弁護人の使命は、刑事事件を起こしてしまった方、ご家族の方々を護ることにあります。被害者との示談交渉は、最も多いご依頼の一つです。

 

 私は、被害者の方と示談交渉をするとき、いつも、上記の言葉を思い出します。

 加害者の方の謝罪の気持ち、反省の気持ちを受け入れていただくために大切なことは、被害者の方に、気持ちをぶつけてもらうこと、不安を吐き出してもらうこと。加害者の弁護士=加害者の気持ちしか考えない相手だという誤解を解くこと。安心して話してもらえるような関係を築くこと。

 それは、決して簡単なことではありません。

 ですが、そのような前提がなければ、被害者の方に、本当の意味で、謝罪や示談を受け入れていただくことなどできないはずです。

 

 加害者の方、ご家族の方々をまもるために、「被害者の方の痛みのわかる」刑事弁護人でありたいと思っています。

 

 今回は、日本弁護士連合会・東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会共催のシンポジウム「犯罪被害者のための『連携』を考えよう!」に参加しました。被害者の方の様々な声に触れることができ、また、被害者支援都民センターや弁護士会、警視庁犯罪被害者支援官などによる被害者支援における連携の在り方・課題についても再確認することができ、大変勉強になりました。今後も、刑事弁護人としての立場から、被害者関連法制の動向・被害者支援の在り方に関しても、日々研鑽を積んでまいりたいと思っております。

 

 

 弁護士法人ルミナス東京事務所

 パートナー弁護士 神林美樹(第一東京弁護士会所属)

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