目次

1.公判前整理手続とは
2.公判前整理手続となる場合
3.公判前整理手続を行うには
4.公判前整理手続の流れ
5.公判前整理手続における証拠提出の制限
6.公判前整理手続が裁判の結果を大きく左右する

 

 

公判前整理手続とは

公判前整理手続とは、第1回公判期日の前に争点を明確にした上、これを判断するための証拠を厳選し、審理計画を立てることを目的とした手続です。

公判前整理手続が導入される前から、公判期日の前の争点整理に関する規定は存在していました。しかし、それは当事者の打合せを促す程度のものにとどまっており、「必ずしも十分に機能していない」との指摘を司法制度改革審議会から受けていました。審議会は、「刑事裁判の充実・迅速化」を実現するためには、「早期に事件の争点を明確化することが必要不可欠である」としたうえで、新たな準備手続の創設・証拠開示のルールの明確化について提言しました。これを受けて、2004年の刑訴法改正によって導入され、2006年から施行されたのが公判前整理手続です。

 

 

公判前整理手続となる場合

公判前整理手続は、裁判所が「充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるとき」(刑訴法316条の2)あるいは、「審理の経過にかんがみ必要と認めるとき」に行われます(刑訴法316条の28)。

裁判員裁判制度の対象となる事件については、必ず公判前整理手続を行わなければなりません (裁判員法49条)。裁判員の方にとって争点を分かりやすくし、拘束期間をなるべく短くするために、裁判員裁判が始まる前に争点と証拠を整理しておくことが重要だからです。

裁判員裁判対象事件以外で、公判前整理手続に付される可能性のある事件としては、否認事件で証拠が大量・証拠関係が複雑である場合などが挙げられます。

 

 

公判前整理手続を行うには

公判前整理手続は、複雑かつ大量の証拠を整理し、争点を明らかにするための手続であるため、手続を進めるためには必ず弁護人を付けなければなりません(刑訴法316条の4)。手続を行う場合には、検察官及び弁護人の出頭・在席が必要となりますが(刑訴法316条の7,8)、被告人の出頭は必要ではありません(刑訴法316条の9)。

 

 

公判前整理手続の流れ

①検察官が証明予定事実及び検察官請求証拠を開示する

刑事裁判においては、被告人が有罪であるということを証明する責任は検察官にあります。

そのため、まず、公判前整理手続では、検察官が「公判期日において証拠により証明しようとする事実」を明らかにし、その立証に必要な証拠の取調べを請求します(刑訴法316条の3)。そして、請求した証拠を速やかに弁護側に開示します(刑訴法316条の14)。

 

 

②弁護側からの請求により、検察官が類型証拠を開示する

検察官は、請求証拠として開示した証拠以外にもたくさんの証拠を持っており、その中に被告人に有利な証拠が存在する可能性があります。

そのため、弁護側は、刑訴法316条の15第1項各号が列挙する一定類型の証拠に該当し、かつ、「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するための重要であると認められるもの」については開示を請求することができます。請求を受けた検察官は、「その重要性の程度その他被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるとき」には、これを速やかに開示しなければなりません(刑訴法316条の15)。

 

 

③検察官請求証拠に対する弁護側の意見表明

弁護側は、検察官請求証拠に対して書証を採用することに同意するか否か、証拠物を取り調べることに異議がないか等の意見を述べます(刑訴法316条の16)。

 

 

④弁護側の主張を明らかにし、証拠調べ請求をする

開示された証拠などを吟味したうえで、次は弁護側が証明予定事実(その他主張を予定している事実上および法律上の主張)を明らかにします(刑訴法316条の17)。そして、検察官と同様、必要な証拠の取調べを請求し、請求した証拠を速やかに検察官に開示します(316条の18)。

 

 

⑤弁護側請求証拠に対する検察官の意見表明

③と同様に、検察官は、弁護側請求証拠に対して意見を述べます(刑訴法316条の18)。

 

 

⑥主張関連証拠の開示

弁護側は、証明予定事実に関連する証拠について、「開示の請求にかかる証拠を識別するに足りる事項」と「主張と開示の請求に係る証拠との関連性その他被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由」を明らかにして検察官に開示を求めることができます。

請求を受けた検察官は、「その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるとき」は速やかに開示をしなければなりません(刑訴法316条の20)。

 

 

公判前整理手続における証拠提出の制限

公判前整理手続に付されると、公判期日までに必要な証拠の開示、証拠調べ請求がなされるので、この手続が終わると当事者は原則として新たな証拠調べを請求することはできません(刑訴法316条の32)。もし、無制限に許されるとしたら、「充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う」という公判前整理手続の目的が達成されなくなってしまうからです。例外的に、「やむを得ない事由」によって同手続において請求することができなかったものについては証拠調べ請求をすることが可能です。例えば、公判前整理手続終了後に被害者と示談が成立した場合の示談書や、贖罪寄付の証明書などです。

 

 

公判前整理手続が裁判の結果を大きく左右する

弁護人が公判前整理手続に精通していないと、裁判で大きく不利になってしまいます。

まず、類型証拠開示請求では、弁護人が検察官や警察官が作成しているであろう、所持しているであろう証拠を考え、それらを全て開示させることが必要になります。これには、経験と技術が必要になります。この経験と技術がないために、中には、この類型開示請求すらしないで裁判に臨む弁護士すらいるようです。しかし、そのような弁護活動では、依頼者に有利な裁判の結果を期待することはできません。

また、弁護人の主張や証拠についても、公判前整理手続終了後には制限がかかってしまいます。そのため当初から適切な見通しをたて、適切な主張と証拠の請求をしておく必要があります。これにはやはり経験と技術が必要になります。

検察官は、刑事裁判ばかりやっていますので、当然、公判前整理手続を理解しています。それに対抗するためには、やはり刑事裁判を中心に行なっている弁護士でなければなりません。特に、裁判員裁判と否認事件では公判前整理手続は必須であるとまで言えます。そのような事件でお困りの方は、是非弁護士法人ルミナスにご相談ください。

 

 

このページは、弁護士法人ルミナス法律事務所 代表弁護士 中原潤一 が執筆しました。