執筆者

弁護士法人ルミナス
弁護士 神林 美樹 が執筆しました。目次
1.前科はどのような場合につきますか? |
2.前科と職業・資格制限 |
前科はどのような場合につきますか?
前科とは、過去に有罪判決により刑の言い渡しを受けた事実をいいます。
捜査段階
- 不起訴処分になった場合、前科はつきません。
- 略式手続による罰金刑となった場合には、前科がつきます。
裁判段階
- 無罪判決となった場合、前科はつきません。
- 罰金判決、執行猶予判決、実刑判決の言い渡しを受けた場合には、前科がつきます。
前科と職業・資格制限
前科がついた場合、法律によって、ご本人の保有する資格が制限される職業があります。
前科による資格制限があるか、資格制限を受けるのはどのようなときか、資格制限の内容は何かについては、個々の法律によって異なります。
「罰金以上の刑」に処せられると、資格制限を受けるという職業の場合
不起訴処分を目指す弁護活動を行います。
略式手続による罰金刑、罰金判決・執行猶予判決・実刑判決のいずれかとなった場合には、資格制限を受けることになるからです。
不起訴処分を目指す弁護活動については、以下の記事をご覧ください。
当事務所では、罰金以上の刑で資格制限を受けるケースのご相談で、不起訴処分を獲得した実績があります。
「禁固以上の刑」に処せられると、資格制限を受けるという職業の場合
捜査段階では、不起訴処分又は略式手続による罰金刑を目指し、起訴されることを回避するための弁護活動を行います。
起訴されて裁判となった場合には、罰金判決を目指す弁護活動を行います。執行猶予判決又は実刑判決となった場合には、資格制限を受けることになるからです。
当事務所では、禁錮以上の刑で資格制限を受けるケースのご相談で、罰金判決を獲得した実績があります。
以下では、前科による資格制限を受ける職業の一部をご紹介します(令和2年5月1日時点の情報)。
このような資格をお持ちの場合、通常の刑事事件以上に、資格制限を回避するために裁判官・検察官と粘り強く交渉・説得する必要性が高く、幅広い弁護活動が要求されます。そのような弁護活動を尽くすため、できる限り早い段階で、当事務所まで、ご相談ください。
「罰金以上の刑」で資格制限を受ける職業
職業・資格 |
---|
医師 |
法律 |
医師法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①戒告 ②3年以内の医業の停止 ③免許の取消し |
備考 |
医事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。
当事務所では、刑事事件の弁護活動+医道審議会の対応、双方について、ご相談をお受けしております。 |
職業・資格 |
---|
保健師、助産師、看護師、准看護師 |
法律 |
保健師助産師看護師法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①戒告 ②3年以内の業務の停止 ③免許の取消し |
備考 |
保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
職業・資格 |
---|
薬剤師 |
法律 |
薬剤師法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①戒告 ②3年以内の業務の停止 ③免許の取消し |
備考 |
薬事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
職業・資格 |
---|
歯科医師 |
法律 |
歯科医師法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①戒告 ②3年以内の歯科医業の停止 ③免許の取消し |
備考 |
医事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。
当事務所では、刑事事件の弁護活動+医道審議会の対応、双方について、ご相談をお受けしております。 |
職業・資格 |
---|
歯科衛生士 |
法律 |
歯科衛生士法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①期間を定めた業務の停止 ②免許の取消し |
備考 |
歯科衛生士の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
職業・資格 |
---|
獣医師 |
法律 |
獣医師法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①期間を定めた業務の停止 ②免許の取消し |
備考 |
獣医事に関する不正の行為をした場合、刑事処分のいかんを問わず、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
職業・資格 |
---|
栄養士、管理栄養士 |
法律 |
栄養士法 |
資格制限の内容 |
以下の処分をすることができる。 ①1年以内の期間を定めて栄養士・管理栄養士の名称の使用の停止 ②免許の取消し |
備考 |
栄養士又は管理栄養士の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
職業・資格 |
---|
調理師 |
法律 |
調理師法 |
資格制限の内容 |
免許を取り消すことができる |
備考 |
麻薬、あへん、大麻又は覚せい剤の中毒者も、上記の資格制限を受ける可能性があります。 |
「禁錮以上の刑」で資格制限を受ける職業
職業・資格 |
---|
国家公務員 |
法律 |
国家公務員法 |
資格制限の内容 |
(人事院規則で定める場合を除き) 当然失職する |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わるまで、又は、刑の執行を受けることがなくなるまで |
職業・資格 |
---|
地方公務員 |
法律 |
地方公務員法 |
資格制限の内容 |
(条例に特別の定がある場合を除き) その職を失う |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わるまで、又は、刑の執行を受けることがなくなるまで |
職業・資格 |
---|
学校の教師 |
法律 |
教育職員免許法 |
資格制限の内容 |
免許状が失効する |
職業・資格 |
---|
保育士 |
法律 |
児童福祉法 |
資格制限の内容 |
登録が取り消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して2年経過するまで |
職業・資格 |
---|
公認会計士 |
法律 |
公認会計士法 |
資格制限の内容 |
登録が抹消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで
※公認会計士法その他特定の法令に違反する罪を犯した場合: 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで |
職業・資格 |
---|
司法書士 |
法律 |
司法書士法 |
資格制限の内容 |
登録が取り消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで |
職業・資格 |
---|
行政書士 |
法律 |
行政書士法 |
資格制限の内容 |
登録が抹消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで |
職業・資格 |
---|
社会保険労務士 |
法律 |
社会保険労務士法 |
資格制限の内容 |
登録が抹消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで |
職業・資格 |
---|
社会福祉士 |
法律 |
社会福祉士及び介護福祉士法 |
資格制限の内容 |
登録が取り消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して2年経過するまで |
職業・資格 |
---|
土地家屋調査士 |
法律 |
土地家屋調査士法 |
資格制限の内容 |
登録が取り消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して2年経過するまで |
職業・資格 |
---|
警備業者・警備員 |
法律 |
警備業法 |
資格制限の内容 |
警備業務を営むこと、警備業務を行うことができない |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで |
職業・資格 |
---|
賃金業者 |
法律 |
賃金業法 |
資格制限の内容 |
登録が取り消される |
資格制限の期間 |
刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで |