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弁護士法人ルミナス法律事務所 埼玉事務所 所長
弁護士 田中 翔

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、公設事務所での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所埼玉事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、埼玉弁護士会裁判員制度委員会委員、慶應義塾大学助教等を務めるほか、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師も多数務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決2件獲得。もし世界中が敵になっても、被疑者・被告人とされてしまった依頼者の味方として最後まで全力を尽くします。

目次

1.前科はどのような場合につきますか?
捜査段階
裁判段階
2.前科と職業・資格制限
前科によって、職業の制限が生じることがある
少年法改正による影響
どのような弁護活動をするのか
主な資格と制限の内容

 

 

前科はどのような場合につきますか?

日常的によく聞く言葉である「前科」ですが、「過去に有罪判決により刑の言い渡しを受けた事実」をいいます。

取調べを受けただけ、注意を受けただけでは前科になりません(ただし、前歴として捜査機関の記録には残っています)。

 

 

捜査段階

不起訴処分になった場合、前科はつきません。

警察から呼び出しを受けただけでその後何もなかったような場合にも前科はつきません。

しかし、手続による罰金刑となった場合には、前科がつきます。

正式裁判が開かれたわけではないですが、略式手続による罰金刑は前科になることは、誤解している方もいらっしゃるので注意が必要です。

 

 

 

裁判段階

無罪判決となった場合、前科はつきません。

罰金判決、執行猶予判決、実刑判決の言い渡しを受けた場合には、前科がつきます。

 

 

前科と職業・資格制限

弁護士 田中 翔

前科によって、職業の制限が生じることがある

前科がついた場合、国家資格・免許・許可など、職業に関する様々な面で制限が生じることがあります。

具体的な欠格事由や制限の内容は、資格・職業に関する個々の法律によって異なります。

前科による資格制限により弁護方針が変わることもあるので、早期に欠格事由などを確認するべきです。

制限が生じる主な資格とその内容については、後述します。

 

 

少年法改正による影響

令和3年少年法改正(令和4年施行)により、18歳以上の少年(18、19歳の少年)は「特定少年」にあたり、原則逆送事件の対象範囲が拡大されることとなりました。

 

そして、これらの特定少年が逆送により刑事裁判で実刑判決を受けた場合には、公務員採用における年齢制限と相まって、のちに公務員となることが困難になる可能性があります。

 

弊所では、少年事件の弁護活動にも力を入れております。お困りの際には、ぜひ弊所にご相談ください。

 

 

どのような弁護活動をするのか

「罰金以上の刑」に処せられると、資格制限を受けるという職業の場合

不起訴処分を目指す弁護活動を行います。

略式手続により罰金刑を受ける場合や、裁判で罰金判決・執行猶予判決・実刑判決を受けた場合には、資格制限を受けることになるからです。

当事務所では、罰金以上の刑で資格制限を受けるケースのご相談で、不起訴処分を獲得した実績があります。

 

  • 不起訴処分を目指す弁護活動はこちら

 

 

「禁固以上の刑」に処せられると、資格制限を受けるという職業の場合

捜査段階では、不起訴処分又は略式手続による罰金刑を目指し、起訴されることを回避するための弁護活動を行います。

起訴されて裁判となった場合には、罰金判決を目指す弁護活動を行います。執行猶予の場合には、欠格事由とならないとされている場合を除いて、執行猶予判決であっても制限を受けることになるからです。

 

以下では、主な資格・職業と制限の内容について紹介します。

 

 

主な資格と制限の内容

「罰金以上の刑」で資格制限を受ける職業

職業・資格 医師
法律 医師法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①戒告

②3年以内の医業の停止

③免許の取消

備考

医事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

当事務所では、刑事事件の弁護活動+医道審議会の対応、双方について、ご相談をお受けしております。

 

 

職業・資格 保健師、助産師、看護師、准看護師
法律 保健師助産師看護師法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①戒告

②3年以内の業務の停止

③免許の取消し

備考

保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

職業・資格 薬剤師
法律 薬剤師法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①戒告

②3年以内の業務の停止

③免許の取消し

備考

薬事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

職業・資格 歯科医師
法律 歯科医師法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①戒告

②3年以内の歯科医業の停止

③免許の取消し

備考

医事に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

当事務所では、刑事事件の弁護活動+医道審議会の対応、双方について、ご相談をお受けしております。

 

 

職業・資格 歯科衛生士
法律 歯科衛生士法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①期間を定めた業務の停止

②免許の取消し

備考

歯科衛生士の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

職業・資格 獣医師
法律 獣医師法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①期間を定めた業務の停止

②免許の取消し

備考

獣医事に関する不正の行為をした場合、刑事処分のいかんを問わず、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

職業・資格 栄養士、管理栄養士
法律 栄養士法
資格制限の内容

以下の処分をすることができる。

①1年以内の期間を定めて栄養士・管理栄養士の名称の使用の停止

②免許の取消し

備考 栄養士又は管理栄養士の業務に関して犯罪行為をした場合、刑事処分の種類を問わず(不起訴処分となった場合でも)、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

職業・資格 調理師
法律 調理師法
資格制限の内容 免許を取り消すことができる
備考 麻薬、あへん、大麻又は覚醒剤の中毒者も、上記の資格制限を受ける可能性があります。

 

 

「禁錮以上の刑」で資格制限を受ける職業

職業・資格 国家公務員
法律 国家公務員法
資格制限の内容 (人事院規則で定める場合を除き) 当然失職する
資格制限の期間 刑の執行を終わるまで、又は、刑の執行を受けることがなくなるまで

 

 

職業・資格 地方公務員
法律 地方公務員法
資格制限の内容 (条例に特別の定がある場合を除き) その職を失う
資格制限の期間 刑の執行を終わるまで、又は、刑の執行を受けることがなくなるまで

 

 

職業・資格 学校の教師
法律 学校教育法、教育職員免許法
資格制限の内容 免許状が失効する

 

 

職業・資格 保育士
法律 児童福祉法
資格制限の内容 登録が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して2年経過するまで

 

職業・資格 公認会計士
法律 公認会計士法
資格制限の内容 登録が抹消される
資格制限の期間

刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで

 

※公認会計士法その他特定の法令に違反する罪を犯した場合:

刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 司法書士
法律 司法書士法
資格制限の内容 登録が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで

 

 

職業・資格 行政書士
法律 行政書士法
資格制限の内容 登録が抹消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで

 

 

職業・資格 税理士
法律 税理士法
資格制限の内容 登録が抹消される
資格制限の期間

刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで

 

※税理士法その他特定の法令に違反する罪を犯し、禁固以上の刑に処せられた場合:

刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 社会保険労務士
法律 社会保険労務士法
資格制限の内容 登録が抹消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して3年経過するまで

 

 

職業・資格 社会福祉士
法律 社会福祉士及び介護福祉士法
資格制限の内容 登録が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して2年経過するまで

 

 

職業・資格 一級建築士、二級建築士、木造建築士
法律 建築士法
資格制限の内容 免許が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 警備業者・警備員
法律 警備業法
資格制限の内容 警備業務を営むこと、警備業務を行うことができない
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 賃金業者
法律 賃金業法
資格制限の内容 登録が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 建設業者
法律 建設業法
資格制限の内容 許可が取り消される
資格制限の期間 刑の執行を終わり、又は、刑の執行を受けることがなくなった日から起算して5年経過するまで

 

 

職業・資格 取締役
法律 会社法
資格制限の内容 取締役となることができない
資格制限の期間

刑の執行を終わるまで、又はその執行を受けることがなくなるまで(刑の執行猶予中の者を除く)

※一部の法律に違反して刑罰を受けた場合はこれと異なることがあります

 

 

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