目次

1.法廷で被告人・証人の氏名・住所等が明かされるか?
2.証人について
証人特定事項の非公開
被害者特定事項の非公開
3.被告人について
4.結論

 

 

法廷で被告人・証人の氏名・住所等が明かされるか?

公開の法廷で、氏名・住所等を明かされることには、抵抗を感じる方がいるかもしれません。

実際、被告人や、被告人の情状証人として出頭予定の方、刑事事件の被害者から、氏名や住所を明かされるのかについて質問を受けることがあります。

このコラムでは、公判請求された場合、法廷で、被告人や証人の氏名・住所等が明かされることになるのかについて説明します。

 

 

証人について

証人に対しては、まず、その人違いでないかどうかを取り調べなければならないという規則があります(刑事訴訟規則115条)。その取り調べ方法については、特に定めはなく、実際には尋問で訊かれない限り証人の住所、年齢等が法廷で明かされることは通常はありません。

証人は、開廷前に、出頭カードというA4紙に、氏名、住所、年齢などを記載し、押印します。開廷後、宣誓及び尋問前に、裁判長から、「住所、年齢等は出頭カードに記載いただいた通りですね」と問われ、応答するだけで足ります。なお、氏名は呼ばれることもあります。

 

 

証人特定事項の非公開

証人尋問等の手続においても、申出をすれば,証人の氏名・住所・年齢等を秘匿できる場合があります。

次の①又は②の場合で、相当と認めるときには、裁判所は、証人等特定事項(氏名及び住所その他の当該証人等を特定させることとなる事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます(刑訴法290条の3)。

①証人、その親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき

②証人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき

 

 

被害者特定事項の非公開

証人ではなくとも、性犯罪事件等の被害者に関しては、裁判所は、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます(刑訴法290条の2)。

こちらも、申出が必要になります。

 

 

被告人について

被告人の場合、審理の冒頭に行われる人定質問において、氏名、住所、本籍、年齢、職業について問われます(刑事訴訟規則196条)。人違いでないかを確認するためです。

しかし、被害者特定事項の非公開の決定がなされている場合、被告人の氏名、住所、本籍、年齢、職業等についても、公開の法廷で明らかにされない場合があります。

例えば、被害者が、被告人の氏と同一の氏を持つ親族である場合、被告人の氏を明らかにすることによって被害者を特定可能となり得るため、被告人の氏が公開の法廷で明らかにされない場合があります。

 

 

結論

原則、被告人の氏名・住所等は、法廷で明らかにされる事項です。証人の場合は、尋問で訊かれなければ、明らかにされないことが通常です。 事前に申入があれば、これらの情報を公開の法廷で明らかにしない決定が付されることがあります。