目次

1.証拠開示の重要性
2.任意開示
3.類型証拠開示、主張関連証拠開示
4.まとめ

 

 

証拠開示の重要性

刑事事件では、事実の認定は証拠によるとされています。

事実を争う事件では求める結論を獲得するため、量刑事件でもより有利な量刑を得るため、できるだけ証拠をたくさん集めて検討することが重要です。

証拠を集める重要な手段の一つとして、検察官が保管している証拠の開示があります。

捜査機関は、関係者への事情聴取や捜索差押えなどによって、強制的に多くの証拠を収集することができます。

捜査機関が集めた証拠の中には、弁護側に有利な証拠があることもあります。また、証人尋問の準備の役に立つ証拠が含まれていることもあります。

そのため、より説得力がある弁護方針を考え、効果的な弁護活動を行い、弁護側が求める結論を得るためには、徹底した証拠開示を行うことが重要です。

もちろん、証拠開示を求めなくても、検察官が請求する証拠は開示されます。しかし、それは検察官が保管する証拠のごく一部に過ぎません。しかもそれは検察官自身が必要だと考えている証拠であり、簡単にいうと検察官にとって最も有利な証拠です。弁護側に有利な証拠は、何もしなければ開示されません。

そのため、検察官が請求する証拠以外についても、証拠開示を求めていくべきです。

 

 

任意開示

証拠開示の方法として、任意開示があります。任意開示は、検察官が相当と考える範囲のものを任意に開示するというものです。もっとも、弁護側から任意開示を申し入れたとしても、検察官は証拠開示の義務を負うものではなく、開示がされるとしても弁護人が求めた証拠の全てが開示されるという保証もありません。弁護側に有利な証拠を開示する義務はありませんから、弁護側に有利な証拠が開示されない可能性があるという大きなデメリットがあります。それだけではなく、争い方を検討するにあたって必要な証拠が全て開示されているかがわからないというデメリットもあります。

 

 

類型証拠開示、主張関連証拠開示

公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件では、刑事訴訟法の規定により証拠開示を行うことができます。

それが、類型証拠開示請求と主張関連証拠開示です。任意開示と最も異なるポイントは、請求がされた場合、検察官は法律上の要件に該当する証拠を開示する義務を負うということです。

類型証拠開示請求は、刑事訴訟法に定められた一定の類型に該当し、検察官が請求した証拠の証明力を判断するために重要と認められ、開示の必要性などを考慮して相当と認められたときに、検察官が開示義務を負うものです(刑事訴訟法316条の15第1項1号〜9号)。

主張関連証拠開示請求は、弁護人の主張に関連すると認められるものについて、関連する程度や開示の必要性などを考慮して相当と認められたときに、検察官が開示義務を負うものです(刑事訴訟法316条の20第1項)。

類型証拠開示、主張関連証拠開示請求では、要件を満たすときには検察官に開示義務が生じることが、任意開示とは異なる大きなメリットです。仮に検察官が開示を拒否するときは、裁判所に対して裁定請求を行い、開示命令を求めることもできます。

この類型証拠開示請求も、主張関連証拠開示請求も、事実を争う事件や量刑事件を戦う上で、極めて重要な武器になります。

 

 

まとめ

注意しなければならないのは、類型証拠開示請求、主張関連証拠開示請求は、公判前整理手続か期日間整理手続に付されている場合にしか行えないことです。そのため、事実を争う場合など、徹底した証拠開示が必要な事件では、公判前整理手続や期日間整理手続に付することを裁判所に請求することが必要です。

幅広い証拠開示を行わせるには技術と経験が必要です。拙い証拠開示請求では十分な証拠開示がされないままとなってしまう可能性があります。

日本の刑事裁判では、全ての証拠を開示しなければならないという全面証拠開示の制度は現時点ではとられていません。しかし、検察官に多くの証拠を開示させる方法ができつつあり、事実を争う事件では、できる限り多くの証拠を開示させる弁護士の力量が不可欠です。

 

 

このページは、弁護士法人ルミナス法律事務所 弁護士 田中翔 が執筆しました。