執筆者

弁護士法人ルミナス 

弁護士 田中 翔 が執筆しました。

公判でも黙秘ができる

被疑者・被告人には黙秘権があります。

黙秘権は、17世紀頃にイギリスで確立されるようになったとされており、憲法38条1項によって保障され、刑事訴訟法にも黙秘権があることを前提とした規定があります。

被疑者・被告人という立場に置かれた人にとって、黙秘権の保障は、弁護人の援助を受ける権利と並び、重要かつ根源的な権利といえます。

 

実際に刑事事件において、黙秘権を行使する場面として最も多いのが、警察官・検察官による取調べです。

取調べで話をすることによって、捜査が進んでしまい不利な証拠が作り出されてしまう危険、逮捕されるという非日常的な状況で、不利な供述が証拠として残ってしまう危険などが高くなってしまいます。

そうした事態を避けるため、取調べで黙秘することは、捜査段階において非常に重要な防御方法となります。

 

もちろん、起訴されて、刑事裁判が行われる場合にも、黙秘権は保障されます。

第一回公判期日の冒頭手続で、裁判長から、被告人には黙秘権があることが告げられます。

その際は、「あなたには黙秘権があります。答えたくない質問には答えないこともできるし、全部の質問について答えないこともできます、ただし答えたことはあなたにとって有利にも不利にも証拠になるので、話をするときは注意して話すようにしてください。」というように説明をされます(丁寧な裁判官であれば、黙秘したことで不利に扱うことはありませんとも説明することがあります。)。

 

このように、取調べだけではなく、公判でも黙秘権を行使して黙秘することができます。

 

 

公判で黙秘権を行使するべきか

しかし、多くの刑事裁判では、黙秘権を行使せず、被告人質問という形で話をすることになります。

有罪・無罪を決めたり、自分に対する刑の重さを決める刑事裁判で、しっかり自分の言い分を伝えたいというのは自然な気持ちだといえます。公判で言い分を伝える方が有利な場合も、実際に少なくないでしょう。

しかし、黙秘権を行使する方が有利となる場合、不利な事態に陥るリスクを避けられる場合もあります。

 

例えば

 

  • 言い分の裏付けとなる証拠が存在せず、記憶もあいまいではっきり事件当時のことが思い出せないような場合
  • はっきりとした記憶はあるが、言い分のストーリーが信用されにくい内容であり、その言い分を裏付ける証拠がない場合

 

このような場合は、公判で話をすることにより、検察官からの反対質問などにより、不利な状況に陥る危険があります。

このような場合には、黙秘権を行使することが検討されるべきだといえるでしょう。

 

もっとも、黙秘権を行使することにより、こちらの言い分を伝えられず、本人にしか話せないような有利な事実を法廷に出せなくなるリスクなどもあります。

公判で黙秘権を行使するべきかは、証拠全体を踏まえたケースセオリー(こちらが勝つべき理由)を確立した上で、慎重に判断する必要があります。

このような判断を正しく行うためには、弁護人に十分な知識・経験が求められます。

 

もし刑事裁判での方針選択に迷いがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。