記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス 代表
弁護士 中原 潤一

弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。

はじめに

先週から今週にかけて、いわゆる池袋暴走事故やIR事件で実刑判決を受けたというニュースが流れました。その内容や実刑判決が妥当かどうかという点については私はそれを論評する立場にはありませんので差し控えたいと思いますが、よくご依頼者の方からも、実刑判決を受けてしまった場合にその後の流れはどうなるのかというご質問を受けます。ちょうど上記2つの事件は、被告人という立場に立たされた方が置かれていた状況が異なっておりますので、これらの事件を例にとってご説明したいと思います。

 

 

実刑判決を受けた後の流れ

逮捕・勾留されている方の場合

逮捕・勾留されている方の場合で、判決期日までに保釈が許可されなかった方の場合、実刑判決を受けてもそのまま身体拘束が続くということになります。

一方で、判決期日までに保釈が許可されていた方の場合、実刑判決を受けると保釈はその効力を失うと規定されていますので(刑訴法343条)、判決の宣告を受けた瞬間に再び勾留されている状態に戻ってしまいます。第一審では、被告人の出頭が義務付けられていますので(刑事訴訟法273条2項)、出頭した被告人はそのまま収監されることになります。そしてその後、保釈請求を再度して、保釈が許可された場合には、また社会内で今度は控訴審に備えることができます。いわゆるIR事件はこちらのケースで、一度その場で収監されてから再保釈が認められたようです。一方で、控訴審で実刑判決を受けた場合、被告人は控訴審への出頭は義務付けられていませんので(刑訴法390条本文)、そのまま収監されるという運用にはなっていません。概ね、控訴審判決の一週間後に高等検察庁に出頭せよ、という連絡が来ることが多いです。

 

 

逮捕・勾留されていない在宅事件の場合

逮捕・勾留されていない在宅事件の場合には、そもそも勾留されていませんので、その場で収監されることはありません。逮捕・勾留されている方は、勾留があり、その勾留から一時的に釈放する保釈の裁判の効力が失われるために、また勾留状態に戻ることが収監される理由です。勾留されていない在宅事件の場合には、そもそも被告人の身体を拘束する根拠がありませんので、収監されることはないということになります。この場合は、実刑判決が確定して初めて、出頭せよという連絡が来て収監されることになります。この流れは、第一審、控訴審の場合でも変わりません。いわゆる池袋暴走事故はこちらのケースになりますので、被告人は収監されることなくご自宅に帰られたようです。

 

 

困るのは保釈されている第一審のケース

以上見てきたように、一番困るのは、逮捕・勾留されている方で、保釈が認められていたけれども実刑判決を受けてしまったケースです。こういうケースでは、事前に判決はわからないの、実刑判決を受けた場合に備えて、身辺整理や持ち物などを用意しておいてくださいとお願いするようにしています。実際には実刑にならずに、無事に自宅に帰れたケースも数多くあります。そのようなケースを一つでも多く増やせるように、全力で弁護活動に取り組みます。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 中原 潤一