記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス 代表
弁護士 中原 潤一

弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。

目次

1.はじめに
2. 整体師・マッサージ師の方の施術が該当する刑法上の犯罪
3. 整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとして捜査が開始された後の刑事手続きの流れ
4. 整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとされた場合の防御の難しさ
5. 冤罪に巻き込まれないために
6. 整体師・マッサージ師の方がわいせつ冤罪に巻き込まれた場合には、経験豊富な弁護士法人ルミナスにご相談ください

 

 

はじめに

整体師・マッサージ師の方が、施術中にわいせつ行為をしたと疑われ、刑事事件に発展することも少なくありません。最悪のケースでは、逮捕・勾留され、刑事裁判となり、冤罪であるにもかかわらず実刑判決を受け、刑務所に収監されてしまうこともあります。

当事務所にも、整体師、マッサージ師の方からのご相談は少なからず寄せられています。

そこで、このコラムでは、整体師、マッサージ師の方が、わいせつ行為を疑われてしまった場合、どのような犯罪となり、どのような流れで刑事手続きが進んでいくのか、これを防止する方法はどのようなものなのかという点について、お話ししたいと思います。

 

 

整体師・マッサージ師の方の施術が該当する刑法上の犯罪

整体師・マッサージ師の方の施術が、わいせつ行為だとして冤罪に巻き込まれてしまった場合、その施術は、通常、刑法178条1項の準強制わいせつ罪に該当するとして、捜査されることになります。

 

刑法178条1項(準強制わいせつ)

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

 

準強制わいせつ罪は、まず、「人の心神喪失」に乗じてわいせつ行為をした場合に成立すると規定されています。ここにいう「心神喪失」とは、例えば睡眠薬を飲んで眠ってしまっている場合等を指しますので、整体やマッサージはこれには該当しません。一方で、この条文は「人の…抗拒不能」に乗じてわいせつ行為をした場合にも準強制わいせつ罪が成立すると規定していますが、この「抗拒不能」とは、身体的・心理的に抵抗をすることが著しく困難である場合のことを指すとされ、畏怖している場合や、勘違いをしているために性的自由の侵害を許している場合(勘違いをしていなければそのような行為は許さなかった場合)を指します。整体やマッサージの施術が準強制わいせつ罪に該当するとされるのは、この場合です。すなわち、正当な施術であると信じていたために抗拒不能に陥っていたとして、準強制わいせつ罪に該当するということになります。

 

 

整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとして捜査が開始された後の刑事手続きの流れ

整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとして捜査が開始される場合、そのほとんどが、被害者とされる方が警察に被害届を提出することによって開始されます。この場合に、整体師・マッサージ師の方が逮捕されるかはケースバイケースです。当事務所で過去に取り扱った事例でも、逮捕・勾留されてしまったケースもありますし、逮捕・勾留はされなかったものの、刑事裁判で有罪になってしまったケースもあります。おそらく、警察は、被害内容、被害者との距離、連絡頻度、被害者とされる方の人数等で逮捕をするか否かを決めているものと思われます。

当事務所が過去に取り扱ったケースでは、嫌疑不十分として裁判にならなかったケースもありますし、裁判となったケースもあります。

刑事裁判になってからは、通常の裁判と同様、公判前整理手続、証拠調べ、論告弁論を経て判決に至ります。概ね約1年程度の時間がかかることが通常です。

 

 

 

 

 

 

 

整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとされた場合の防御の難しさ

整体師・マッサージ師の方の施術が準強制わいせつ罪に該当するとされた場合、防御は容易ではありません。

裁判では、被害者とされる方の被害にあった旨の証言内容が、信用できれば有罪に、疑問が残る場合には無罪となるということになります。この証言内容が、客観的な証拠で裏付けられていれば有罪になりやすいと言えますが、例えそのような信用性を裏付ける客観的な証拠が存在しなかったとしても、被害者とされる方の供述が具体的で、迫真的で、嘘をつく理由がないなどという理由だけで有罪にされてしまうことも少なくありません。弁護側が、いつ誰でもその施術室に入ってくる状況があることや、他にされた人がいないこと、被害者とされる方が証言している内容が不自然であることを明らかにしたとしても、有罪にされてしまう可能性が十分にあります。

したがって、そうなる前に、身を守る準備が必要です。

 

 

冤罪に巻き込まれないために

このような、整体師・マッサージ師の方が行った施術が準強制わいせつ罪に該当するという冤罪に巻き込まれないためには、身を守る準備をする必要があります。

まず、準強制わいせつ罪に該当するとされてしまったケースでは、乳房周りのリンパのマッサージをしたケースや、その際に乳首に触れてしまったケース、内太もものマッサージの際に陰部付近を服の上から触ってしまったケースなどがあり得ます。いずれの部分のマッサージも可能であれば避けるべきです。もし、お客さんの希望でどうしてもマッサージをしてほしいという場合には、必ずその付近のマッサージであることと、注意をしていても触れてしまう可能性があることを事前に説明し、同意書にサインをしてもらいましょう。

また、お客さんの事前の承諾を得た上で、施術過程の全てを例えば防犯カメラで録画する等すれば、施術時にお客さんからどのようなリクエストがあったか、どのような施術をしたか、お客さんに施術ごとにどのような説明をしているかという点を証拠化することができますので、ご自身の身を守ることができます。

 

 

整体師・マッサージ師の方がわいせつ冤罪に巻き込まれた場合には、経験豊富な弁護士法人ルミナスにご相談ください

上記のとおり、整体師・マッサージ師の方がわいせつ冤罪に巻き込まれた場合には、その防御は容易ではありません。当事務所は、そのような方がわいせつ冤罪に巻き込まれたケースを複数担当しており、嫌疑不十分として不起訴処分を獲得した経験があります。こういったケースでは、起訴をさせないことが最も重要になります。

整体師・マッサージ師の方がわいせつ冤罪に巻き込まれた場合には、経験豊富な弁護士法人ルミナスにご相談ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 中原潤一