勾留について

コラム

2019.06.17

目次

1.勾留とは
2.被疑者勾留(起訴前勾留)
勾留の手続き
勾留の期間
勾留理由開示
勾留の取消し・執行停止
勾留決定に対する準抗告
3.被告人勾留(起訴後勾留)
請求の要否
勾留期間
保釈の有無
4.拘留とは??

 

 

勾留とは

勾留とは、被疑者または被告人の身体を強制的に拘束し刑事施設に留め置くことをいいます。勾留の目的は、逮捕同様、被疑者・被告人の逃亡や、罪証隠滅を防止することにあり、取調べや、再犯の防止などを目的として勾留することは許されません。また、勾留は、それ自体で罰を与えることを目的とした制度でもありません

勾留は、

①定まった住居を有しない(刑事訴訟法60条1項1号)

②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある(同2号)

③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある(同3号)

のいずれかに該当し、かつ、

④罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり(刑事訴訟法207条1項、60条1項柱書)

⑤勾留の必要がある場合(刑事訴訟法207条1項、87条1項)

に限り、行うことができます。

勾留の必要性について、刑事訴訟法87条1項では、「勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは・・・勾留を取り消さなければならない」と規定されています。既に検察官が起訴するか否かを決定している場合や、確実な身元引受人がいる場合は、「勾留の必要」はありません。また、勾留によって得られる捜査上の利益と勾留によって生じる被疑者の権利侵害の程度との均衡がとれていることも、勾留の必要性として求められているといえます。

 

 

被疑者勾留(起訴前勾留)

勾留の手続き

勾留の請求

被疑者の勾留を決定するのは、裁判官です。そして、被疑者の勾留は、検察官の請求に基づき行われます(この請求は検察官のみ行うことができます)。(刑事訴訟法204条、205条、207条)。また、逮捕から勾留請求に至るまでの手続きには、厳格な時間制限が設けられています(刑事訴訟法203条~205条)。厳格な時間制限については、こちらの逮捕のコラムをご覧ください。

 

勾留質問

被疑者の勾留は、裁判官が被疑者に対して被疑事実を告げ、これに関する被疑者の陳述を聞いた後でなければ行うことができません(刑事訴訟法207条1項本文、61条)。この手続きを、勾留質問といいます。被疑者はここで初めて、裁判官と対面することになります。

 

勾留の裁判・勾留状の執行

勾留請求を受けた裁判官は、検察官から提供された資料を検討した上で被疑者の陳述を聞き、上記勾留の要件が認められるかどうか審査します。

要件を満たすと判断した場合は、裁判官は勾留状を発付し(刑事訴訟法207条4項)、検察官の指揮により、勾留状が執行されます(刑事訴訟法207条1項、70条)。執行は、被疑者に勾留状を呈示したうえで、できるだけ速やかに、直接指定された刑事施設に引致することにより行われます(刑事訴訟法207条1項、73条2項)。刑事施設とは、刑務所・少年刑務所・拘置所を指しますが(法務省設置法8条2項参照)、警察署に設置されている、いわゆる留置場が代用刑事施設として用いられる例がほとんどです(刑事収容施設法15条1項、14条1項参照)。

要件を満たさないと判断した場合は、裁判官は勾留請求を却下して、直ちに被疑者の釈放を命じなければなりません(刑事訴訟法207条4項但し書き)。

 

 

勾留の期間

検察官は、勾留請求した日から10日以内に公訴提起しない場合は、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(刑事訴訟法208条1項)。もっとも、「やむを得ない事由」があるときは、裁判官は検察官の請求により、通じて10日を超えなければ、10日間の勾留期間を延長することができます(刑事訴訟法208条2項)。判例上、この「やむを得ない事由」とは、「事件の複雑困難」「証拠蒐集の遅延若しくは困難」等により、「勾留期間を延長して更に取調をするのでなければ起訴もしくは不起訴の決定をすることが困難な場合」を指すとされています(最判昭37・7・3民集16巻7号1408頁)。

 

 

勾留理由開示

勾留理由開示は、被疑者、その弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系親族・兄弟姉妹その他利害関係人から請求があった場合に行われる手続きです(刑事訴訟法207条1項、82条)。公開の法廷で、裁判官・裁判所書記が列席し、原則として被疑者とその弁護人が出頭したうえで行われます(刑事訴訟法207条1項、83条)。法廷では、裁判官は勾留の理由を述べ、検察官・被疑者・弁護人・その他請求者は意見を述べることができます(刑事訴訟法207条1項、84条)。勾留理由開示は、被疑者と家族が顔を合わせる機会や、下記の勾留取消請求や勾留に対する準抗告を行うための情報を得る機会にもなり得ます。しかし、実務上は裁判官は抽象的な勾留理由しか述べず、具体的な理由については「捜査に支障が生じる」などと言って答えないことが多いため、憲法の要請を満たしているとは言い難いという現実があります。

 

 

勾留の取消し・執行停止

勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判官は、検察官、被疑者もしくはその弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系親族・兄弟姉妹の請求により、または職権で、勾留を取り消さなければなりません(刑事訴訟法207寿1項、87条)。また、勾留が不当に長くなったときも、同様に取り消さなければなりません(刑事訴訟法207条1項、91条)。

さらに、裁判官は「適当と認めるとき」に、職権で、勾留の執行を停止することもできます(刑事訴訟法207条1項、95条)。執行停止は請求によることはできず、また、これにより勾留の効力が失われるものではありません。被疑者の身内に不幸があった場合等に利用されます。

 

 

勾留決定に対する準抗告

勾留に関する裁判に不服がある場合は、裁判所にその取消し・変更の請求をすることができます(刑事訴訟法429条)。これを、勾留決定に対する準抗告と言います。勾留に関する裁判には、勾留・勾留延長・勾留取消を認める裁判またはこれらの請求を却下する裁判、勾留の執行停止の裁判などが含まれます。

請求先は、簡易裁判所の裁判官の裁判の場合は管轄地方裁判所、その他の裁判官の裁判の場合はその裁判官が所属している裁判所になります。勾留決定は一人の裁判官で行いますが、勾留決定に対する準抗告の申立てを受けた裁判所は、裁判官三人の合議体で決定しなければなりません(刑事訴訟法429条3項)。ですので、合議体を組むことができない支部の裁判官が勾留決定を出した場合には、その支部が属する地方裁判所の本庁が準抗告の判断をすることになります。

 

 

被告人勾留(起訴後勾留)

被告人勾留の要件・手続は、原則として被疑者勾留の場合と同様であり、勾留質問、勾留理由開示、勾留の取消し、勾留の執行停止等の制度も同様に行われます。もっとも、①請求の要否、②勾留期間、③保釈の有無、の点で被疑者勾留と異なるところがあります。

 

請求の要否

被疑者勾留は、検察官による請求に基づき行われる必要がありますが、被告人勾留の場合は、当該事件の裁判を担当する裁判所あるいは裁判官が職権で行います。検察官が勾留の請求をする必要はありません。

 

勾留期間

被告人勾留の期間は、起訴前から引き続き勾留されている場合は公訴提起の日から、起訴後初めて勾留される場合はその日から、2か月間とされ、特に継続の必要がある場合には、具体的にその理由を付した決定で、1か月ごとに更新することができます(刑事訴訟法60条2項)。

 

保釈の有無

保釈とは、保釈保証金を納めることを条件として、勾留の執行を停止し、身体拘束を解く制度です。

被告人が勾留されている場合、被告人又はその弁護人、・定代理人・保佐人・配偶者・直系親族もしくは兄弟姉妹は保釈の請求をすることができます(刑事訴訟法88条1項)。また、裁判所は適当と認めるときに、職権で保釈を許すこともできます(刑事訴訟法90条)。

この保釈の制度は、被疑者勾留では認められていません。被告人勾留だけの制度となっています。

 

 

拘留とは??

以上のように、被疑者や被告人の逃亡や罪証隠滅行為を防止しつつ、捜査を遂げるための制度が「勾留」ですが、「拘留」という制度も存在します。

この「拘留」はメディアなどではよく「勾留」の誤字として登場します。

「拘留」は刑法16条に規定されており、1日以上30日未満刑事施設に拘置する「刑罰」です。

同じ刑事施設に拘置する制度ですが、それ自体刑罰である「拘留」刑罰ではない「勾留」は全く異なるものですので、お間違えの無いようお気を付けください。

 

 

このページは、弁護士法人ルミナス法律事務所 代表弁護士 中原潤一(埼玉弁護士会所属)が執筆しました。

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