執筆者

弁護士法人ルミナス 

弁護士 大橋 いく乃 が執筆しました。

はじめに

ご依頼者の中には、発達障害を持っており、その影響で事件に至ってしまう方が一定数いらっしゃいます。ご本人が、発達障害のような精神障害を持っている場合には、その特性に合わせた弁護活動が必要となります。

 

 

発達障害とは

発達障害とひとことでいっても、その症状や特性は様々です。

発達障害支援法では、発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものとされています(同法2条1項)。DSM-Vでは、自閉症、アスペルガー症候群、広範性発達障害を総合して、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)としてまとめており、「これら各障害の症状は、それぞれがはっきりと区別される障害であるというよりも、社会的コミュニケーションの制限、及び反復性の行動と興味、という2つの領域における軽度~重度の能力低下という1つの連続体を示している」としています。

 

発達障害を有する方は、障害特性や特性への周囲の無理解から、生きづらさを感じるようになり、うつ病などの二次障害を発症し、問題行動の直接の原因はそのような精神症状が影響しているようなケースもあります。

 

 

障害特性の事件への影響

発達障害を持つ方の特性として、

・コミュニケーションをとることの苦手さ

・行動のパターン化(見通しをつけることの苦手さ)

・行動パターンを変えられることへの大きな抵抗(強いこだわり)

・衝動コントロールの苦手さ

などが挙げられます。

そして、このような障害特性が影響して、事件に至ってしまう場合もあります。

たとえば、ご本人の行動パターンの中に、万引きや盗撮といった違法行為が含まれてしまうと、それをやめることが非常に困難となり、常習化してしまうことがあります。

また、障害特性から、衝動性を制御することに困難を抱えている方もいらっしゃいます。衝動的な行動に出やすいことから、暴力行為やわいせつ行為などを抑えることができず、事件に至ってしまうこともあります。

 

 

障害特性を踏まえた弁護活動

発達障害をもつ方の場合には、各特性に応じて、弁護活動をすべきです。

 

まず、ご本人の意思に沿った弁護活動をするために、お話する際に注意しなければならないポイントがあります。

たとえば、発達障害を持つ方の中には、曖昧な概念や抽象的な表現を苦手とする方もいらっしゃいます。そのため、お話をさせていただく際にはきちんと真意が伝わるよう、曖昧・抽象的な表現を使わずに伝えることを意識します。

また、発問者の誘導に乗りやすく、非常に迎合的に答えてしまうという特質を有する方も多いため、できる限りオープン聞くなど、誤った誘導をしないよう注意しながらお話を伺います。

 

このような特性は、捜査機関との関係でも注意が必要となります。すなわち、捜査機関からの取り調べの際、捜査機関からの曖昧な概念や抽象的な問いをされたときに、迎合的に回答したり、誘導のままに話してしまう危険があるためです。そこで、捜査機関の取り調べに対し、どのように対応するか、慎重な検討が必要となります。そして、お話をしていただく場合には、捜査機関に対し、いかなる事件であったとしても、取り調べの録音録画を実施するよう求め、適正な聴取が行われているかチェックするなどの対応をとります。

 

公判段階では、障害特性による影響について、裁判所に対し正しく伝える必要があります。場合によっては、医師と連携し、医学的な見地からの犯行の影響について意見をいただく場合もあります。

そして、犯行に影響を与えた障害特性に対して、十分なフォロー体制が組まれていること、それにより、再犯可能性が低減したことを立証します。そのために、社会福祉士などと連携し、更生支援計画を作成いただくこともあります。(更生支援計画についての詳細はこちら。)

 

 

終わりに

発達障害を持つの方の中には、ご自身の行動パターンの中に違法行為が組み込まれてしまっている方や、自らの衝動性を抑えられずに、事件に至ってしまったという方もいらっしゃいます。

しかし、いずれの方も、問題行動以外の側面を見れば、とても優しく、生真面目な気質の方が多いように感じます。起こしてしまった事件に対しても、非常に反省し、被害者の方や関係者の方に対し、謝罪のお気持ちを口にする方が多いです。

事件を起こしてしまった部分というのは、その方の一側面に過ぎません。その一部分のみをもって、それがご本人の全てであるかのように判断されることは、絶対に避けなければなりません。

 

当事務所では、発達障害を有する方の弁護活動に精通した弁護士が、裁判官や検察官に対し、事件に発達障害の特性の影響があったことを正しく伝えると同時に、ご本人の本来の姿を正しく伝えるべく、活動してまいります。

発達障害を持つご本人が事件を起こしてしまったという場合には、是非一度ご相談ください。