記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス 代表
弁護士 中原 潤一

弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。

はじめに

刑務所を出所した後、「5年以内」のペナルティがある制度として累犯(刑法56条1項)と執行猶予(刑法25条1項2号)があります。

ただ、この2つは「5年以内」にどんなことがあったらペナルティが発生するのか、そのタイミングにズレがあります。そして、これは、刑務所出所後に再犯をしてしまった場合に、「執行猶予を付けることができるか否か」という点に大きく関わってきますので、刑法がどう規定しているかを確認しましょう。

 

 

「累犯」という制度

まず、累犯です。累犯はこのように規定されています。

 

第五十六条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。

 

これに該当するときは、長期が2倍になるというペナルティが発生します(刑法57条)。

「5年以内」の起算日は、執行を終えたか、免除を得た日の翌日です。

「更に罪を犯した場合」というのは「犯罪の実行に着手したこと」をいいます。

ですので、累犯の場合、長期が2倍になるというペナルティが発生するのは、出所後5年以内に犯罪の実行に着手した場合ということになります。

 

 

「執行猶予」の制度

一方で執行猶予ですが、このような規定になっています。

 

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 

この2号に言う「五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」と言うのは、執行を終えたか、免除を得た日の翌日から今回の刑の言渡しまでの間に、禁錮以上の刑に処せられることなく5年以上の期間が経過していることを指します。この5年の期間は、累犯とは違って、犯罪時(実行の着手時)ではなく、刑の言渡しの時までに経過していればいいと言うことになります。

 

つまり、出所後5年以内に犯罪を犯してしまった場合でも、累犯加重はされてしまう(刑の長期が2倍になってしまう)ものの、執行猶予付きの判決を言い渡すこと自体は可能である場合が生じると言うことがポイントです。裁判官の量刑判断という意味では、出所後5年以内に再犯に及んでしまった場合には基本的には執行猶予をつけるのは厳しいとは思いますが、前科が異種であったり、今回の犯罪が軽微なものであったりする場合には執行猶予がつくことも十分ありますので、このようなケースでも諦めずに執行猶予を目指すことになります。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 中原潤一