記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所 所長
弁護士 神林 美樹

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、都内の法律事務所・東証一部上場企業での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員部会委員等を務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決4件獲得。また、障害を有する方の弁護活動に力を入れており、日弁連責任能力PT副座長、司法精神医学会委員等を務めている。

近年、大学生が大麻取締法違反の疑いで逮捕されたり、20代前半の方が闇バイトに応募し、詐欺や強盗致傷等の疑いで逮捕されたという事件が少なくありません。

 

刑事裁判において、被告人が若年(20代前半)であることは、量刑上考慮されるのでしょうか。考慮されるとして、量刑を判断する際に、どのように考えられているのでしょうか。

 

若年者については、一般に、「人格が未熟であり、耐性が弱く、交友関係など環境の影響により犯罪に急傾斜しやすい一方、可塑性に富み、立ち直りも早い(教育可能性が大きい)ことが多い」とされています(大阪刑事実務研究会編著『量刑実務体系 第3巻 一般情状等に関する諸問題』(判例タイムズ社、2011年)96-97頁)。

 

そして、「若年であることは、改善可能性の高さなど特別予防の点で、有利に考慮されることが多い」「人格成長の途中の未熟な身であって(仲間からの誘いや雰囲気に対する抵抗力も含め)反対動機を形成する力がいまだ弱いことによる責任非難の減弱が認められる場合もあろう」と指摘されています(同書、97頁)。

 

若年の方の弁護を担当するとき、実際にお話をすると、「未成熟で可塑性に富む」という特性を実感することがよくあります。

 

若年の方は、その未熟さや脆弱性ゆえに周囲の影響を受けやすく、外部からの誘いや圧力にさからえずに罪を犯してしまうこともあります。

 

大学生の大麻取締法違反の事件などは、仲間への同調意識が強く、友達からの言葉やその場の流れにさからえずに罪を犯してしまう典型例です。

 

安易な気持ちで闇バイトに応募し、違法であるとわかった後も圧力にさからえずに犯罪に加担してしまうことも、若い方に多くみられます。

 

しかし他方で、一般的に、思考が固定化しがちな大人とは異なり、若年の方は思考が柔軟で、良い方向の影響にも敏感に反応し、大きく改善・更生する可能性に富んでいます

 

実際に、家族や専門家の指導・支援を受けながら振り返りをする中で、考えや行動がどんどん変化する姿を目の当たりにすることは多くあります

 

弁護人は、一般論としての「若年者が有する可塑性の高さ」や「未成熟さに基づく責任非難の減弱」を主張するだけでなく、実際に、ご本人と一緒に振り返りをして、事件当時の未熟で誤った判断をしてしまった原因について検討し、今後二度と罪を犯さないために具体的に何をすべきかを一緒に考えたうえで、実際に考えや行動が改善していることを具体的に主張・立証することが重要であると考えます。

 

そのように、未成熟で可塑性に富み、改善更生可能性が高いことが具体的な事実によって裏付けられたとき、犯情としての責任減少ないし一般情状としての若年性の主張がより強く認められ、量刑上有利な事情として有意に考慮されうると考えます。

 

可塑性のある大切な時期に関わる大人の一人として、ご本人の更生につながる存在の一助となれるよう、弁護人としての職責を果たしていきたいと思います。