記事を監修した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 埼玉事務所 所長
弁護士 田中 翔

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、公設事務所での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所埼玉事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、埼玉弁護士会裁判員制度委員会委員、慶應義塾大学助教等を務めるほか、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師も多数務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決2件獲得。もし世界中が敵になっても、被疑者・被告人とされてしまった依頼者の味方として最後まで全力を尽くします。

最近、検察官の取調べに関する2つのニュースが話題になっています。

 

1つ目は横浜の事件で、取調べで黙秘権を行使していた被疑者に対して、検事が「ガキ」などと言ったことが違法であるとして、東京地方裁判所が国に対して損害賠償の支払いを命じる判決を下したというものです。裁判所は、本件の取調べにおける検察官の発言について、黙秘権の保障の趣旨にも反するとしたうえで、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものであり、国家賠償法上違法であると判断しました。

 

2つ目は大阪の事件で、大阪地方裁判所が、検察官が取調べの際に被疑者に対して大声を交えながら罵倒するなどしたとして、特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条1項)で告発された検察官を被告人とする事件について、大阪地方裁判所の審判に付する旨の決定をしたというものです。

付審判請求とは、公務員による一定の犯罪について不起訴処分がなされた場合に、裁判所に対して、審判に付することを請求するものです(刑事訴訟法262条)。裁判所が審判に付する決定をした場合、その事件について公訴の提起(起訴)がされたものとみなされるため(刑事訴訟法267条)、準起訴手続とも呼ばれることがあります。

公務員が一定の犯罪(公務員職権濫用罪や特別公務員暴行陵虐罪等)を犯した場合に、その犯罪についての起訴・不起訴の判断を検察官のみにさせるのは妥当ではないという理由からこのような制度が設けられています。

 

このように、時折、捜査機関による不当・違法な取調べが問題になることがあります。上記のケースは極めて例外的なものだと思われるかもしれません。しかし、残念ながら、このような取調べは必ずしも例外的なものではありません。特に黙秘権を行使している場合に、取調べにおいて殊更に不安を覚えさせる言動がされたり、罵倒するなど人の尊厳を著しく害するような言動がされることは珍しくありません。

弁護人は、そのような場合に備えた取調べ対応を助言する必要があります。実際に不当・違法な取調べがされた場合には、記録化したり、書面をもって抗議したり、警察法79条に基づく苦情申出制度を活用するなど、厳正に対処する必要があります。

 

とりわけ、憲法38条1項が保障している黙秘権を行使している被疑者に対して、不当・違法な取調べがされているにもかかわらず、漫然と被疑者にその取調べを受忍させることはあってはなりません。弊所では、今後も依頼者の権利を守るべく、不当・違法な取調べに対しては厳正に対処していきます。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所

弁護士 田中翔