記事を監修した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 埼玉事務所 所長
弁護士 田中 翔

慶應義塾大学法科大学院卒業。最高裁判所司法研修所修了後、公設事務所での勤務を経て、現在、弁護士法人ルミナス法律事務所埼玉事務所所長。日弁連刑事弁護センター幹事、埼玉弁護士会裁判員制度委員会委員、慶應義塾大学助教等を務めるほか、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師も多数務めている。冤罪弁護に注力し、無罪判決2件獲得。もし世界中が敵になっても、被疑者・被告人とされてしまった依頼者の味方として最後まで全力を尽くします。

目次

1.監督者制度とは
2.監督者制度の導入による影響
3.おわりに

 

 

監督者制度とは

今年5月から、刑事訴訟法の改正によって新設された「監督者制度」と呼ばれる制度が導入されています。監督者制度とは、保釈を許可したり、勾留の執行停止をする際に、適当と認める者を監督者に選任して、被告人の逃亡を防止し、公判期日への出頭を確保する制度です。そして、実際にこれを適用して保釈が許可されたという報道も既にされています。

これまでも、保釈請求等の際に、被告人の親族等を「身元引受人」として、保釈中の逃亡防止の監督や公判への出頭確保を誓約することは広く実践されてきましたが、被告人が逃亡してしまった場合であっても、法律上の制裁が生じるものではありませんでした。

しかし、今回導入された監督者制度は、監督者には法律上一定の義務を課され、監督者保証金の没収という一定の制裁が予定されていることが大きく異なります。監督者は、選任されるにあたって、監督保証金を納めます(刑事訴訟法(以下法名省略)第98条の5第1項)。この監督保証金は、無事に被告人が公判に出席し、裁判が終わった場合には返金されますが、被告人が逃亡するなどした場合には没取されることがあります(第98条の8第2号、98条の11)。

 

 

監督者制度の導入による影響

この監督者制度の導入によって、これまでは保釈が認められなかったような事案でも、保釈が認められる可能性が出てきました。実際に、報道によれば、大阪高等裁判所は、第一審で無罪を主張したものの懲役12年の実刑判決が下された事案において、監督者制度を適用して保釈許可決定をしたとされています。現状の運用では、有罪になった場合に長期の懲役刑の実刑が想定される否認事件においては、保釈が認められる可能性は低いと言わざるを得ないため、監督者制度の適用によって保釈が実現したという見方もできます。

このように、従来であれば「身元引受人」が存在したとしても保釈許可決定を得ることが困難であった事案において、監督者の選任が逃亡のおそれを低下させる事情として考慮され、監督者制度の適用により保釈が許可されることがあり得るといえます。

 

 

おわりに

監督者制度はまだ始まったばかりですが、今後適用事例は増えていくと思われます。我々弁護人も、これまで保釈が困難であった事案においては、この制度の適用を視野に入れていくことが求められます。もっとも、これまで「身元引受人」の存在で足りていたような事案において、安易に監督者が選任されることは、身元引受人に過度な負担を強いることになりかねず、保釈請求をためらうことに繋がりかねません。弁護人としては、安易に監督者制度が適用されないよう、今後の運用に注視しながら、この制度を今後の弁護活動に役立てることができるように適切に主張していく必要があると思います。

 

 

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弁護士 田中翔