記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所
弁護士 大橋 いく乃

早稲田大学大学院法務研究科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、弁護士法人ルミナス法律事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局、治療的司法研究会事務局等を務める。無罪判決、再度の執行猶予判決等を獲得。精神障害を有する方の刑事弁護に注力しており、医療・福祉の専門家と連携した弁護活動に積極的に取り組んでいる。

目次

1. はじめに
2. 改正の4つのポイント
①接待飲食営業に関する遵守事項・禁止行為の追加
②性風俗店によるいわゆるスカウトバックの禁止
③無許可営業等に対する罰則の強化
④欠格事由の追加

3. おわりに

 

 

はじめに

ここ数年、ホストクラブ等で多額の売掛金債務を抱えた女性客が、店側から借金の返済のために売春や性風俗店で勤務することを強要されるという事件がよくニュースでも取り上げられ、社会問題となっています。

それを受けて、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる「風営法」)の一部が改正され、施行されました。

今回の改正のポイントについて解説していきます。

 

 

改正の4つのポイント

今回の改正では、大きく4つの部分について変更がありましたので、以下見ていきます。

 

①接待飲食営業に関する遵守事項・禁止行為の追加

まず、接待飲食営業を営む風俗営業者が遵守すべき事項として、次の規定が追加されました。

 

第18条の3

第二条第一項第一号の営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

一  第十七条に規定する料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること。

二  客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同 様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによつて遊興又は飲食をさせること。

 イ  当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。

 ロ  当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。

三  客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示(第二十二条の二第一号において「注文等」という。)をする前に遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、当該客を困惑させ、それによつて当該遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は当該飲食をさせること。

 

第1号は、料金に関して虚偽の説明をしてはならない旨を定めています。

 

第2号は、客が接客従業者に対して恋愛感情等を抱いていることを利用して、飲食の注文等をさせるなどの行為をしてはならないと定めています。いわゆる色恋営業の禁止です。

例えば、接客従業者が、客が自分に恋愛感情を持っていることを知って、それを利用して、「あなたがシャンパンを注文してくれないともう会えなくなってしまう。」、「あなたがもっと注文してくれないと私は降格になってしまう。」などと申し向けて、注文をさせる行為がこれに当たります。

 

第3号は、客が注文していない飲食やサービス等を提供して料金の支払を要求する行為などをしてはならないと定めています。例えば、客が注文する前にシャンパン等を開栓し、注文に応じさせるといったいわゆる「早開け」や客が注文する前にシャンパンコールをし、それに応じさせることなどは禁止されます。

 

これらの規定は遵守事項であるため、違反した場合の刑事罰はありませんが、行政処分の対象となることがあります(もっとも、行為態様が悪質な場合には、別途詐欺罪などで刑事責任を問われる場合があります)。

 

次に、接待飲食営業を営む者に関する禁止行為として、以下の規定が追加されました。

 

第22条の2

第二条第一項第一号の営業を営む者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済(次号において「料金の支払等」という。)をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。

二 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために当該客が次に掲げる行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること。

 イ 売春防止法その他の法令に違反する行為をすること。

 ロ 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為等(性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下ロにおいて同じ。)を触り、若しくは当該他人に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること。

 ハ 第二条第六項第一号若しくは第二号又は第七項第一号の営業において異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること。

 ニ 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号)第二条第三項に規定する性行為映像制作物への出演をすること。

 ホ 外国において売春をすること。

 

第1号は、客に注文や料金の支払いなどをさせる目的で威迫することを禁止行為として定めています。

 

第2号は、客に対して威迫・誘惑をして、料金の支払いのためのお金を稼がせる目的で、売春(海外売春も含みます)、性風俗店での勤務、アダルトビデオへの出演等を要求する行為を禁止行為として定めています。これにより、これまで売春防止法や職業安定法などで規制されていた売春等の斡旋、性風俗店への紹介行為だけでなく、料金を支払わせることを目的として売春等を要求する行為自体が禁止されました。

 

これらの規定は禁止行為であり、違反した場合には刑事罰(6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金またはその両方)の対象となります。(第53条2号)

 

②性風俗店によるいわゆるスカウトバックの禁止

ホストクラブ等で多額の売掛金を抱えた女性客に対して、ホストクラブの従業員やその依頼を受けたスカウト業者が、女性客が売掛金返済のための資金を捻出するための勤務先として風俗店を紹介し、風俗店から紹介料を受け取るという構造が問題視されていました。  

それを受けて、以下の規定が追加されました。

 

第28条13項

第二条第六項第一号又は第二号の営業を営む者は、営業所で異性の客に接触する役務を提供する業務に従事しようとする者の紹介を受けた場合において、当該紹介をした者又は第三者に対し、当該紹介の対価として金銭その他の財産上の利益を提供し、又は第三者をして提供させてはならない。

 

この規定は、いわゆるスカウトバック(性風俗店から紹介者への対価の支払い)を禁じたものです。この規定に違反した場合には、刑事罰(6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金またはその両方)の対象となります。(第53条7号)

 

③無許可営業等に対する罰則の強化

従前、風俗営業の無許可営業に対しては、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方を科すこととされておりましたが、その罰則が強化され、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科されることになりました(第49条1号)。

また、それに対する法人への罰則も、200万円以下の罰金から3億円以下の罰金に引き上げられました(第57条1項1号)

 

④欠格事由の追加

以下の者が風俗営業の許可を受けられない者として追加され、欠格条項が拡大されました。

・親会社、子会社などグループ会社等が風俗営業許可を取り消されてから5年を経過していない法人(第4条1項7号)

・警察による立ち入り調査後に許可証の返納をした者で返納の日から5年を経過していない者(第4条1項8号ロ)

・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者(第4条1項13号)

 

 

おわりに

以上のとおり、風営法の規制が厳しくなり、あらたに刑事罰の対象となる行為が追加されました。それに伴って、捜査機関による取り締まりも強化されることが予想されます。弊所も刑事事件専門の弁護士事務所として、特に刑事手続の部分について、今後の動向を注視していきたいと思います。

万が一、風営法違反で警察や検察の捜査の対象になってしまった場合には、弊所までご相談ください。