記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所
弁護士 大橋 いく乃

早稲田大学大学院法務研究科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、弁護士法人ルミナス法律事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局、治療的司法研究会事務局等を務める。無罪判決、再度の執行猶予判決等を獲得。精神障害を有する方の刑事弁護に注力しており、医療・福祉の専門家と連携した弁護活動に積極的に取り組んでいる。

昨年の年末あたりから、警察官や学校長といった社会的立場のある方の盗撮の報道を目にします。

報道ベースでしかありませんが、いずれの事件も「盗撮が癖になっていた」「若いころから繰り返していた」、という話をしているようです。もちろん、この報道にどこまで信憑性があるかは分かりません。しかし、実際にご相談をお受けする際にも、同様に、検挙されたのは初めてだけれども、実は盗撮行為は初めてではなく、繰り返してしまっている、というお話をされる方が多くいらっしゃいます。

 

このコラムでは、盗撮はどのような規則により、規定されているのか、罰則の内容について解説します。

そのうえで、盗撮行為をしてしまった場合に、何をするべきか、繰り返さないためにどのような取り組みがあり得るか、ご説明いたします。

 

 

盗撮の規定ぶりと罰則

規定ぶり

盗撮は、主として、各都道府県で制定されているいわゆる迷惑防止条例によって規定されています。そのため、条例の規定ぶりは各都道府県ごとに少しずつ異なりますが、東京、埼玉、神奈川、千葉の制定する条例では、いずれも公共の場所や浴場、トイレ等における盗撮行為を禁ずる規定となっています。

 

東京都

第5条

第2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

 

埼玉県

第2条の2

1項 何人も、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

第1号 次に掲げる場所又は乗物にいる人の通常衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)で覆われている下着又は身体を写真機、ビデオカメラその他の機器(衣服等を透かして見ることができるものを含む。以下この号において「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。

イ 住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所又は公共の乗物(イに該当するものを除く。)

ハ 学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イ又はロに該当するものを除く。)

 

神奈川県

第3条

1項 何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

第2号 …人の下着等を見、若しくはその映像を記録する目的で写真機その他これに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置し、若しくは人に向けること。

2項 何人も、…正当な理由がないのに、衣服等の全部若しくは一部を着けないで当該場所(住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所)にいる人の姿態を見、若しくはその映像を記録する目的で、写真機等を設置し、若しくは人に向けてはならない。

 

千葉県

第3条の2

1項 何人も、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号に掲げるものをしてはならない。

第1号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器(衣服を透かした状態を撮影することができるものを含む。以下「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置すること。

イ 浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所及び住居

ロ 公共の場所(イの場所を除く。)又は公共の乗物

ハ 学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りすることができる場所(イ及びロの場所を除く。)又はタクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用することができる乗物(ロの乗物を除く。)

 

 

罰則

盗撮の罰則については、近年まで上記4都県でもばらつきがあり、現在も異なる罰則を置く他の道府県はあります。(北海道など)

もっとも、少なくとも上記4都県の迷惑防止条例には、盗撮行為の罰則として、

 

常習性がない場合

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

 

常習性がある場合

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

 

と規定されています。

 

最初は、罰金刑などの軽微な刑であっても、回数を重ねると、常習性がある場合の条文が適用され、実刑判決を受けることもあります。

 

 

盗撮をしてしまったら

示談交渉

盗撮は、被害者のいる犯罪です。そのため、何よりも、被害者の方に謝罪し、示談の活動をすることが重要です。被害者の方は、やはりご本人と直接お話することには抵抗があることが通常ですので、弁護人を介して、適切に謝罪の気持ちと現在の反省状況などを伝えることで、被害者の方が抱えるご不安を少しでも軽くしていくことが必要となります。

 

再犯防止のための活動

また、盗撮は繰り返してしまっている方が多い犯罪です。繰り返してしまっていたことが、性依存症に渡るものである場合、二度と盗撮を繰り返さないためには、心の病気として、専門医療機関における治療が必要になります。盗撮を繰り返してしまっている方の中には、上述のような警察官や教諭のように、社会的立場がある方もいらっしゃいます。社会的な立場があるにも関わらず、それを失うリスクを冒してまで、盗撮という違法行為を繰り返してしまうのは、やはり、どこか自らの意思では止められない部分があるのではないかと思います。

当事務所では、ご希望があれば、性依存症の治療に関する専門家と連携をとって、弁護活動を行います。繰り返してきた盗撮をやめることができるのか(再犯防止が現実的に可能なのか)という点は、検察官や裁判官が処分を判断するにあたっても、重要な考慮要素となりますので、治療の取り組み状況に関する具体的な主張立証をしていきます。

 

当事務所では、上記のような弁護活動をしたうえで、不起訴処分を獲得した実績が多数あります。

盗撮に関するご相談は、是非当事務所までご連絡ください。

 

 

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弁護士 大橋いく乃