記事を執筆した弁護士

弁護士法人ルミナス法律事務所 東京事務所
弁護士 大橋 いく乃

早稲田大学大学院法務研究科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、弁護士法人ルミナス法律事務所に加入し、多数の刑事事件・少年事件を担当。第一東京弁護士会刑事弁護委員会・裁判員裁判部会委員、刑事弁護フォーラム事務局、治療的司法研究会事務局等を務める。無罪判決、再度の執行猶予判決等を獲得。精神障害を有する方の刑事弁護に注力しており、医療・福祉の専門家と連携した弁護活動に積極的に取り組んでいる。

目次

1.はじめに
2.例1:初回接見
3.例2:受任後
4.例3:他職種との連携
5.例4:示談交渉
6.おわりに

 

 

はじめに

「家族が事件を起こしてしまった。」そのような一報を受けて、ご依頼を受けるケースは多くあります。お子さん、ご主人、奥様、お母様、お父様などなど、様々な立場の方から、ご相談のご連絡をいただきます。ご本人が逮捕されてしまったような場合には、ご家族も、ご本人の様子が分からない状態で、突然の逮捕という非日常の出来事に大変なご不安をかかえていらっしゃいます。また、手続きが進んでからも、ご家族の処分がどうなっていくのか、身体拘束はいつまで続くのか…ご家族のご心配は尽きません。

 

当事務所では、そのようなご家族のお気持ちに寄り添い、弁護活動を行うことを心がけております。

以下では、場面に分けて、ご家族との関係で心掛けていることについて、ご説明します。

 

 

例1:初回接見

たとえば、ご家族が逮捕されてしまったような場合、可能な限り早期に、対応可能な弁護士がかけつけて、ご本人にお会いします。ご家族は基本的に、警察から連絡を受けても、ご本人を逮捕したこと、罪名程度しか教えてもらうことができません。さらには、「まだ家族が面会することはできない」などと言われてしまい、具体的にどのような事件で逮捕されてしまったのか、ご本人は事件についてどう言っているのか、ご本人の様子や健康面は大丈夫なのか、今後どうすればいいのかと、非常に心配されています。当事務所では、そのようなご不安を少しでも軽減できるよう、ご本人から了解を得たうえで、ご本人との接見後速やかにご家族にご報告のご連絡をします。事件の内容や今後の刑事手続きの進み方や見込み、対応方針はもちろん、ご本人がどのような様子であったか、健康状態など、ご家族が心配されているであろう部分について、お伝えするようにしています。

 

 

例2:受任後

また、受任後は、ご家族と密に連絡を取り合い、ご家族がそのときに不安に思っていることを少しでも解消できるよう、お話をしています。社会復帰後の環境を調整する場合などは、ご本人にとって何がベストなのか、一概にいえないこともあります。ご本人とご家族の意向が完全に一致しないような場合もあります。そのようなときには、ご本人・ご家族と一緒に悩みながら、ご本人にとってのベストを模索しています。

 

 

例3:他職種との連携

ご本人やご家族のご希望がある場合には、医師、心理士、社会福祉士・精神保健福祉士といった他職種の専門家と連携することもあります。たとえば、精神障害等の影響で事件を起こしてしまったような事案や同種の犯罪行為を繰り返してしまっているような事案(万引きや痴漢・盗撮といった性犯罪等)では、治療や再犯防止プログラムの受講といった医療的支援を受けることも可能です。精神障害等ご本人が生きづらさを抱えているようなケースでは、福祉的支援を含む、社会復帰後の生活に関する計画(いわゆる「更生支援計画」を立てることも考えられます。ご本人の身体拘束が解けないケースでも、事案によっては、社会福祉士・精神保健福祉士の先生にご本人が留置されている刑事施設(警察署や拘置所)に足を運んでもらうこともできます。

犯罪行為を繰り返してしまっている方のご家族は、刑事手続きへの対応を幾度も重ねてきたご経験があるがゆえに、「もう家族だけではどうすればいいのか分からない、でも家族なのだから自分たちがどうにかしなければ…」といった思いをお持ちのこともあります。しかし、ご家族だけで抱え込む必要はありません。刑事手続きの中で、上記のような専門職の方々の力を借りながら、可能な限り、ご本人がなぜ行為を繰り返してしまうのか究明し、福祉や医療の支援を受けることで、ご家族に負担が偏らないような支援体制を整えていければと考えています。

 

 

例4:示談交渉

さらに、示談交渉の場面においても、ご家族との連携が生きる場合があります。ご家族は、ご本人が事件を起こし、被害者の方にご迷惑をおかけしてしまったことに対し、強い謝罪の気持ちをお持ちであることが多いです。そういったご家族のお気持ちを被害者の方にお伝えし、事件後の監督状況を含めてお話することで、被害者の方のご不安の軽減に繋がることもあります。ご家族のお気持ちを正確に、丁寧にお伝えするためには、普段からご家族と連絡を密に取り合うことが必要不可欠だと考えています。

 

 

おわりに

大切なご家族が事件を起こしてしまったとき、動揺しない方はいらっしゃいません。しかし刑事手続きの最中にいるご家族のことをさらけ出して相談できる相手は、多くないかもしれません。

当事務所では、そんなときに、ご家族のお話にも真摯に耳を傾けることを心がけています。そのように、ご家族とコミュニケーションを取り合い、弁護活動を進めることが、ひいてはスムーズな環境調整等、ご本人の利益に資すると考えているからです。

 

ご家族が刑事手続きに巻き込まれてしまった、国選の弁護士がついているがコミュニケーションが取りづらく不安、といった場合には、是非一度ご相談ください。

 

 

弁護士法人ルミナス法律事務所

弁護士 大橋いく乃